the Urban Enviornment Design Seminar, Melcatello
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ウルビ−ノの
都市計画と歴史的地区の保存

大阪産業大学工学部

榊原 和彦

 
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写真1 ウルビノ歴史地区の風景
改行マークマルケ州の宝石と称えられ、 イタリア・ルネサンスの生きた記念碑であるウルビ−ノ。 この町の建設にはレオナルド・ダ・ビンチも加わったと言われる。 ウルビ−ノの街を案内して下さったパオロ・スパーダ氏の解説によると、 面積220km2、 人口15,000人のこの地域で、 1960年代当時、 住宅のスプロールによって街の元のかたちが壊されていく状況にどう対処するかが課題であったとのこと。 そのためにジャン・カルノ・デカルデによって1963年に、 ウルビ−ノ都市基本計画がつくられたという。 開発は、 ウルビ−ノ市街地(歴史地区)を中心とするのではなく、 集落にも人口をはりつけるものとし、 歴史的経緯と環境条件にもとづいて住宅配置をしている。 ウルビ−ノ市街地の形態を取り戻すために、 1400年代の城壁の代わりに植物で囲いをつくることが考えられている。

改行マーク交通に関しては鉄道の計画もあるが、 やはり、 自動車をどう処理するかが第一の課題で、 駐車場を、 景観を壊さないように歴史的中心地区からできるだけ離し、 街の中ではエレベータ、 エスカレータなどを使うことを考えているとのこと。

改行マーク歴史地区の保存に関しては、 “素材”が大きな問題になっているようである。

改行マーク近年、 建物ファサードをモルタル塗りにするのが流行っているそうで、 元々そうであるところはよいにしても、 今までの雰囲気を壊してしまうのは問題。 それに、 新しく塗られるものでは、 モルタルの作り方が昔とは異なるので同じ色が出ないらしい。 ドゥカーレ宮殿にしても、 1600年代の設計当時は、 煉瓦ではなくモルタル塗りが意図されていたそうで、 修復の際は、 設計意図に忠実にモルタル塗りにするか、 親しまれてきた煉瓦にするかが大問題になり、 結局は、 長く続いてきた状態を大切にすることに決まったという。 また、 道路は石か煉瓦だが、 石は安価な北イタリア産のもので、 最近になって使われるようになってきた石なので問題となっている由。 いずれにしても“素材”の問題は、 今イタリアで大論争になっているとのこと。

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写真2 僧院の修復・再利用
改行マーク建物の保存も、 ウルビノの歴史地区をどう発展させていくかを考えて行っているとのことで、 元は僧院であった建物をウルビノ大学の施設に造り替えている、 工事中のところを見せていただいた。 わが国で、 煉瓦や石造りの工場、 倉庫などをレストラン、 観光施設などに改造しているのと同工異曲のようであるが内実はまるで異なると感じられる。 もっと骨太の確かさがある。 歴史的経緯と価値の確かな把握と街の将来のあり方を見据えた上でのものだからだろう。

 

 

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