その場合、 公団はどういう立場かというと、 条件を提示しながら合意形成をすすめる作業をしたということです。 アーティスト側からはコンセプトやデザインの提案をしていただいて、 造園コンサルタント側は団地全体の環境の中での位置づけや技術的なチェックをし、 そうやってお互いが提案をしていく形で進めてきました。
屋外計画が既に進んでいたこともあって、 アーティストの方々には動線計画や植栽計画などの個々の設計条件を提示しています。 たとえば植栽計画にも芦屋市の基準があり、 空地部分の30%の緑地の確保と、 5m2に3本の樹木を植え、 そのうち1本は高木であると決められています。 そういった条件の提示です。 その中から田甫さんの「だんだん畑」の提案が出てきまして、 実現するためにはどのような素材を使ってどういうデザインにするかなどの技術的なチェックをさらにかけていく必要が出てきました。 それについては、 田甫さんと造園コンサルタントがやりとりしながら、 素材や形状を決めていきました。
その後、 施工になりますが、 今回はアーティストの作品を普通の造園業者が作るということになりましたので、 作品の理解ということから作業を始めることになります。 これも、 コラボレーションの一つだと思いますが、 お互いの協力やアイデアを出し合う形で進めています。 だんだん畑の石積みにしても、 一回試し積みをした後、 アイデアを出し合って最終的な形を作っています。 うまく進んでいると思います。
改めて考えてみますと、 コラボレーションでは、 最初に目指すものが理解されていればどんどんうまく回転していくのですが、 理解が不充分な場合、 現場に行ってもいろんなひっかかりが出てきます。 本来なら最初に時間を十分とって、 皆の理解を深めてから進めていければ一番良かったのですが。 何せこの公営住宅は98年3月9日には県、 市の検査があって引継をしていくという、 非常に厳しいスケジュールで進めてきた状況です。 その制約の中でみんなができるだけ良いものをつくっていこうとした努力で出来上がったものだと考えています。
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