震災復興景観の現状とめざすべき方向
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パネリストから


日常的な雑談ができる場が
コミュニティのベースとなる

上山:
改行マーク私の職場では地域の人と話をする場面が非常に多いので、 先ほど佐々木さんが言われた「生活空間」の問題、 空間をどのように扱っていくかという話し合いをすることが多々あり、 人と空間がどう関係づけられるのかが非常に重要だと考えています。

改行マーク今日の報告の中で、 新在家や野田北部の話を少ししましたが、 あの地域は震災前からまちづくりに取り組んでいたところであり、 そういう土壌があったからこそ震災後もまちづくりの中に景観というキーワードを織り込んで活動できた面があると思います。

改行マーク景観はそれだけ時間がかかる問題ですし、 地域の持つコミュニティを生かしながら個性を発揮すると一口で言っても、 長い年月をかけて彼らが積み上げてきた結果として出てきていると考えています。

改行マークそういう状況で、 私の事務所では前の通りを「きんもくせい通り」と勝手に名付けて活動しています。 震災前はそうでもなかったのですが、 震災後はほとんど毎日、 通りに住む人が表に出てきて雑談をして、 我々事務所の人間もそれに加わっています。 その雑談の中から「ここをどうしようか」という話になり、 生垣の話へと進んだのです。 普段からのたわいもない関係から地域の話につながっていく部分が重要だと思っています。

改行マークまた、 そういうことを考えてくれる人を見つけたいと思いながら話をしています。 特に目立つハードの動きがない中では「通りコミュニティ」が活動のベースになっているようです。

改行マークマンションの問題については、 もともと低層だった町中にマンションが出現する場合、 新住民と旧住民の交流が景観以前に重要な問題ではないかと思っています。


淡路島でプレハブより在来が支持される理由

横山:
改行マーク駐車場の問題で言えば、 漁村の場合は前面に駐車場をおける敷地がありませんから、 埋立て地等の共同化の方向で活用されるだろうと思います。 むしろ農村部の方が、 長屋門の脇でのガレージ化が進んでいるようですが、 敷地が広いせいか今のところ景観に目立った影響を与えるには至っていません。

改行マークただ、 郊外の区画整理された新興住宅地では、 阪神間で見られる住宅地とほとんど同じで、 地形を生かした造成もされていません。 何が問題かというと、 プレハブ住宅でも屋根は瓦を載せていますから屋根部分の景観は変わらないのですが、 カーポート部分はコンクリートですから年月を経てもそのままで、 年輪を感じさせないことです。

改行マークところで淡路島の場合は、 コミュニティがかなり強く、 人々がみな顔見知りですから、 新しい家を建てるとすぐその家に行って住み心地を聞いてみるのです。 そういう情報が行き渡るものですから、 新しい家はプレハブより在来型が増えています。

改行マークというのも、 西浦では天井に土を入れる「土天井」という断熱工法で強い西日を伝統的に遮っており、 その重みが屋根が落ちる要因にもなったのですが、 先にプレハブを建てた人が「どうもプレハブの家は暑い」と言ったようで、 プレハブにしようかと考えていた人達が思い直して在来工法にしているようです。 それに、 地元工務店と顔見知りだということもあります。

改行マークともあれ、 淡路島の人達は展示場やパンフレットで家を判断するのではなく、 自分の足でこまめに情報収集してから決定しています。 しかも、 親族が死んだ年には建てないなど代々受け継がれてきた伝統や家相の考え方が根強く、 「自分の家は一生のうちにこの期間に建てよう」と考えて暮らしていますから、 阪神間での家を購入する建て方とはだいぶ違うようです。


地域での共有化の事例
−人々に任せる伝統を生かせないか

横山:
改行マークまた、 地域での共有化の問題については非常に難しいのですが、 淡路島で面白いと思った事例を紹介します。

改行マーク昔は路地に家を建てるとき、 路地いっぱいに家を建ててそれから自由に軒を出していたということです。 自由に軒を出していたにもかかわらず、 無茶なことはしていないのです。 隣の家の事も考えて自分の家の軒先を押さえたり、 出入口を設ける等、 間取りを考えて建てていますので、 あのように面白い路地空間ができたわけです。 ですから、 画一的に2mのセットバックだけを言うよりも、 1mぐらいは自由にして「人々にまかせる空間」があってもいいのではないかと思うのです。 あまりにも「2mセットバック」を言い過ぎると、 どうしても欲張ってぎりぎりまで建てて線をそろえてしまうので、 「ファジーな誘導」を働きかけていく知恵が必要ではないかと考えています。

改行マークそれからマンション化についてですが、 淡路島でもマンションが少し建っています。 村はずれの幹線道路沿いにいくつか建っていますが、 いずれも低層(3〜4階)で、 若夫婦か単身者向きに建てられているようです。 数も少なく景観的にはそれほど問題ではないと思います。


行政が地域のよさを認識する必要がある

横山:
改行マーク地域景観を共有化するという問題を考えると、 行政側が土木的な部分で地域らしさを出すよう頑張らないとしんどいのではないかと考えます。 大きな方向では、 リゾート的にヨーロッパ調やエーゲ海調を持ってくるのか、 あるいは反対に集落的なものを重視するのかをはっきりしないと、 スライドで紹介したような自然公園のたたずまいになりかねないところがあります。

改行マーク工務店の人に聞くと、 絶対プレハブは建てられないという領域もあるそうです。 プレハブを建てると「近所の人に恥ずかしい」という感覚の地域がはっきりありますので、 そういうゾーニング図を作ればある程度の棲み分けができるのではと思うのですが。

改行マークそうでないと、 何となく漠然と近代化に向かってしまうのではないでしょうか。

改行マーク東浦と西浦では、 緑条例の開発指向の土地利用規制の割合と、 保全型の規制の割合が違いますから、 それを生かしながら「在来型でないと建てられないゾーン」「そうでないゾーン」を色分けしながらやっていく方向があると思います。

改行マークそれから淡路島のよさをできるだけ引き出すような方向でリードしていかないとダメだと思います。 行政側の景観担当は、 淡路島の場合都市計画や企画課になり、 専門担当者がいませんから、 話を聞いていると漁村などでも「全部同じ」という認識がかなり強いようです。 その当りの啓発普及等、 もう一度いいものを認識していく作業が必要だと思っています。


「途中経過」を楽しむまちづくりの提案

堀口:
改行マークまずプレハブ住宅に関してですが、 プレハブメーカーのヒアリングに参加したとき、 メーカーが艶消しのプレハブテクスチャーを開発しようとしているという話を聞きました。 つまり今のプレハブはテカテカしているから、 艶消しの素材を使おうとしているんだと思いました。

改行マークプレハブがすごいのは、 実際は2割ぐらいしか作っていないのに、 それが7割ぐらい作っているように見える「デザインの影響力」です。 これはすごい力だと思います。 ですからプレハブでいい家が作れれば、 それはどんどん「いい」と宣伝してやって、 それが戸建のデザインの底上げにつながるのであれば、 それはそれでいいかと考えています。

改行マークしかし、 その方法ではそれぞれの地区、 通り、 界隈で、 本当にそれぞれの持つ味わいや「らしさ」は出てこないから、 そこでどう考えるのかという話になります。 それは、 先ほど佐々木さんがおっしゃった「専門家が強制した」あてがいぶちの住宅ではなく、 おそらく居住者が時間をかけて変えていくのではないかと思っています。

改行マークですから、 復興の途中でまだ出来上がってない通りも、 それなりに途中経過を楽しみながらいいものにしていけばいいのではないか。

改行マーク被災地ではない普通の街にも、 時間をかけて最初の計画とは違うものをつくっていくプロセスがあってもいいと思います。 もともと街というのは時間をかけてできていくものですから、 復興のプロセスで強制的に与えられたものであっても、 住んでいる人が「途中を楽しむ」という気分で改善していくのであれば、 いい話だと思います。


都市でも集約型駐車場はできないか

堀口:
改行マーク難しいのは、 駐車場の扱いについてです。 そもそも歴史的な環境に駐車場があるのがイカンというご意見もあるでしょう。 淡路島の例を紹介すると、 もともとの古い集落は道路が集落の中に入れない構造になっていますから、 車を集落の手前で止めて歩くのです。 ですからそういうところでは、 駐車場は集落の手前にあります(もっともそこは震災でたまたま空き地になっただけなのかもしれませんが)。 集落の中には車を止められる空間がありませんから、 集落の人は多分道路に近い場所に車を止めて自分の家に歩いていくのでしょう。 これはいい方法だと思いました。

改行マーク阪神間より公共交通機関が少ない淡路島の方が、 生活していく上で車は絶対必要なはずです。 しかし、 この方法が成立しているのですから、 都会でもそういう集約型の駐車場があって、 自分の家には歩いていくという方法があってもいいのではと思いました。 それが、 抜本的な解決になるかどうかは分かりませんが、 そういう形で景観と住まい方がリンクすれば、 駐車場の景観問題も解決する方法があると思います。

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