まず西さん。 阪神間では住まい情報は淡路のように誰かに聞けばわかるという具合にはいかないのですが、 そういう情報を誰がどのように教えるかは大きな悩みです。 どんなメディアを使えばいいのか、 ヒントがあれば教えて下さい。
それと佐々木さん。 暮らしの風景については、 田舎や密集市街地では考えやすいし、 我々はそれを認識する力もあるのですが、 集合住宅で暮らしの風景はどこに現れてくるのでしょうか。 廊下に鉢植えがあると「暮らしの風景」とよく言われますが、 僕はそれは集合住宅的だとは思いません。 ベランダに洗濯物がずらっと干してある風景の方がもっと生活感があふれていると思います。
阪神間は広いですから、 マスコミに取り上げられるよう我々も何か仕掛けなくてはと思うのですが、 やはり先進事例をいくつか作っておくことが情報戦略としては早いかと考えています。
ニュータウンで一番悪い事例は、 総2階建でまるで陰影のない建物だったり、 垂直擁壁で全然緑のない家ですが、 そういう家がけっこうあってショックを受けたりしています。
質問の答えに直接の関係はないのですが、 阪神間のアイデンティティは多分水上勉さんが書かれたように、 陰影が深い家や坂道が多いわりにコンクリートが目立たない場所だろうと思います。 緑と石垣が多いことが阪神間の特徴だと思うのですが、 今はまるで違う街ができていると思います。 プレハブのテクスチャー以前の問題で、 総2階建で壁が厚く立ち上がる風景ではどうしようもない。 ですから阪神間でモデル的な通りがいくつかできてきたら、 景観への影響もかなり違うのではないかという気はします。
一つ目は「大地への融合」です。 大地性を足下にいかに作るか。 これは大変大きなテーマでした。
二つ目はオープンスペースの設計を、 「都市活動(アクティビティ)との結合」ととらえたことです。 東部新都心の1号棟、 12号棟、 13号棟の囲い込みの空間の中で、 南面の住棟にはどんどん布団や洗濯物が干されているのですが、 北面の住棟の足下は常に陰ができている。 そこに縁側のような空間があればいいなと思ったのです。
お年寄りが多い団地ですから、 皆さんが下に下りたとき、 子供達が目の前で遊んでいる風景を見ながら座れる空間です。 暑いときは涼しい場になるよう、 巨大な縁側を作りました。 夜も足下はライトアップしています。 その軸線上に子供達の様々な遊び場所が見えるようにと作っています。 そういうアクティブな活動を誘発する空間をテーマとしています。
3つ目のテーマは、 「ヴィラの風景」です。 私たちはまちづくりで「景観」をよく口にしますが、 景観の持っている特徴をもう少し考えようと持ってきたテーマです。 ヴィラとはイタリアの別荘地のことで、 建築と風景が本当にうまく混合した軸線構成のあり方を見直したいと思いました。
まず、 六甲山と海という主軸線と、 窓の出方や海の見え方という副軸線を複合的に混在させることによって、 かつてのヴィラの風景がもっていた良さを、 建築と風景とのつながりの中で考えてみたいと思っています。
4つ目の「エッジ空間」についてです。 単にエッジ空間にしていくのではなく、 パブリックとプライベートが融合できる空間にしていこうというのがテーマです。 私たちはオープンスペースを常にパブリックな公共空間という見方をしていますが、 海辺の方は「一人になりたい空間」にしています。 庭のない集合住宅に住む人が、 庭先を自分のプライベートな空間にしていけるようにと考えました。
あと様々なテーマがありますが、 最終的に集合住宅は拡張する庭の機能をもっと足下に入れるべきだろうとおもっています。 東部新都心の例が成功したかどうかは分かりません。 これは2年先、 5年先、 さらに10年後と長い時間の中で検証されていくことです。 そういう試みは私なりに努力したつもりです。
戸建住宅の駐車場の検討はしなかったのですが、 今日の報告の写真を見て駐車場もとても面白いと思いました。
では、 これらのプロジェクトの発注元である兵庫県の課長さんが今日来ておられますので、 復興景観について今年度はどう進めることになるのかなどをうかがいたいと思います。
坂井:
当初はマスタープランを策定しようと議論していたのですが、 途中色々な話が出てきて、 結局「マスタープログラム」という名称でまとめています。
先ほど堀口さんが「4つの柱」として説明して下さいましたが、 特に「景観づくり」は住民主体で取り組むべきことであり、 今回の震災で被害を受けた街を修復しようとするところや、 そのまま景観として残しておこうとするところなど、 いろいろありますので、 今年度はそれらの案を公募する計画を進めています。 6月にはスタートする予定で、 現在要綱を検討しているところです。
マスタープログラムについても、 今年度はフォーラム等を開催して県民の方々と議論を深めていきたいと考えています。 今年度の事業目標としてはそういうところです。
会場に聞く
都会での住まい情報の発信方法
鳴海:
−暮らしの風景とは何か
では、 逆にこちらからみなさんにご意見をうかがいたいと思います。
阪神のアイデンティティを大事にした
西:
モデル的な家を造ってみる
難しい質問です。 例えばニュータウンの場合、 何千人と人が住みそれぞれの家を勝手に建てていくことになるので、 モデル的な家をどこかで建ててみて、 皆さんがそれをいいと思ったら、 それ風の家を建ててくれるかなと考えるぐらいですね。
暮らしの風景−東部新都心での試み
佐々木:
東部新都心で集合住宅を設計したとき、 最初は2つぐらいをキーワードに設計しようとしたのですが、 もう少しユニバーサルな考え方でつないでいきたいと思い、 6つぐらいのテーマを考えました。
兵庫県の今後の取り組み予定
鳴海:
西さんのお話で総2階建がショックだったということですが、 これは震災後に「総2階建が一番安全だった」という映像が大量に流れたことも影響しているのではないでしょうか。 そういう影響はすぐ広がってしまうので、 困ったことだと思っています。
本来なら私が報告しなければならないところなのですが、 今日はみなさんが報告して下さいました。 ありがとうございました。
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