図2 Z.A.Cの対象地域(パリ) |
ヨーロッパの場合には、 産業革命とともに生産機能が早くから都市の中に入ってきています。 それに対応して、 設備が不十分な非常に狭小な住戸が労働者の住宅として供給されました。 その労働者住宅が老朽化して物的な環境が悪くなり、 インナーエリアの人口が減っていくという流れが一つあります。 もう一つは、 そういった老朽化した住宅に外国人が入っていくという流れがあり、 それによって、 また人口が戻ってきているということがあります。
すなわちインナーエリアでは物的環境の荒廃や中小企業や手工業といった既存の産業の衰退があり、 一方で外国人居住がコミュニティそのものを変化させています。 そういった中で、 物的な環境の改善を進めていかなければなりません。 ですから、 単に住宅の改善だけにとどまらない、 社会問題、 コミュニティの問題があわせて議論されなければならないという状況になっています。
そのような中で、 当初60年代はクリアランス型の再開発をやって、 オープンスペースをとって高層化し、 住戸数は減らさないという方向で環境改善が進められてきたわけですが、 1970年ぐらいから方向が変わってきています。 そういったクリアランス型の改善への反発、 反省の中で、 もう少し既存の街区構成を残しながら、 修復できる建物は保全しながら、 設備の更新とか、 狭い2つの部屋を広い1つの部屋にするといった住宅の近代化を進めていくという方向に変わってきています。