アマンディエ地区の状況
アマンディエ地区の住宅と環境
これからお話しさせていただきますパリのアマンディエという地区は、 この図2の右端の中程の点線で囲まれた地区です。 ここは、 かなり早い時期から再開発が必要とされ、 色々な調査が進められていました。 ここもやはり、 外国人居住者が非常に多くなってきていました。
図3 アマンディエ地区の老朽住宅(1960年頃) |
図4 アマンディエ地区の環境 |
一方で、 図4(a)のような中庭があったり、 地形に起伏がありちょっと丘に登っていくようなところで、 そういった地形に沿った町並みや、 写真(b)のような路地が街区の中を抜けているなど、 ヒューマンスケールの生活環境としてなじんだ空間ができていました。
最初は、 スクラップアンドビルドを目指し、 老朽住宅については、 公共が買収し始めていたわけです。 しかし70年代に入る頃に、 スクラップアンドビルドではなく、 修復保全型のプランを考えていこうという議論が出て、 大きく内容が変わりました。
図5 アマンディエ地区Z.A.C.(1977年) |
Z. A. Cがなぜ協議型かというと、 土地利用や建物用途を巡って公共と、 開発者である民間の協議が行われていることからきています。 アマンディエの場合は、 公共、 あるいは第三セクターが土地を買って、 その土地を民間が開発する条件を協議するという形です。
例えば、 セーヌ河岸のヤード跡地に国立図書館ができた大きな開発がありますが、 そこでは民間開発をベースにしています。 先ほど見ていただいたように、 パリの用途地域は住居中心ですから、 オフィス主体の建物は、 大規模なものが建てられません。 こういったZ. A. C。 の地区では、 地区全体の住戸数、 低所得者層用の住宅が何戸とか、 地区全体のオフィスの床面積とか、 商業の床面積とか、 工場の床面積とかを決めます。 この枠組の中で住宅と、 オフィスの容積のやりとりをしながらやれば、 床負担力の高い用途の開発が民間デベロッパーにとってはメリットになります。
ベースの用途別容積指定は残っていますが、 敷地単位の用途別容積を開発地区全体の中で調整しながら誘導しています。
このアマンディエの場合には、 1977年の計画の時に、 できるだけ職人活動ができるような、 用途混在型の改善をしていくということを決めたということが、 大きな特徴だと思います。 それから、 全部を建て替えるのではなく、 使える建物はできるだけ使っていくことにしています。 けれども、 かなり老朽化していますので、 必ずしも全部が全部、 使える状況ではないわけです。 その場合、 建て替える場合と修復する場合でどちらがコストがかかるかを調査し、 修復が建て替えの80%以上のコストになったら建て替えるといったルールを作っています。
この地区は、 街区の周りにまず住宅が建って、 その真ん中に作業スペースが作られ、 さらにそこに住宅が埋まっていったという過程を経てきています。 その結果、 ほとんどオープンスペースがないところでしたので、 地区の真ん中に大きな公園を作るのが、 目玉になっていました。 その公園に対して、 公園にアクセスするような道(プロムナード)が計画されていて、 これに加えて街区の中の小さな広場をつなぎながら、 歩行者のネットワークを作っていくということを決めています。
地図上の赤い点線は、 敷地内を通り抜けができるようにしてくださいということです。 それに併せて、 学校とか、 保育所とか、 高齢者用の施設とか、 そういった公共のサービスも見直したというものです。
ではここで、 どんな街かということをスライドで見ていただこうかと思います。