路地から見たまちづくりの作法
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リレートーク3

イスラムの路地
光りと影の路地

現代計画研究所

江川直樹

 

改行マーク私はもともと国の内外を問わず、 路地が好きな人間です。 なぜ路地が好きなのかを考えながら、 私の仕事である建築や都市デザインに路地が生かせないかと考えていますが、 今日は強烈な色合いが印象的な外国の路地を紹介します。


モロッコの路地

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図1 モロッコのフェズ・エル・バリ
改行マーク最初はイスラム世界であるモロッコの路地です。 地図1がモロッコのフェズ・エル・バリという街の旧市街地(メディナ)です。 1グリッドが500mです。 9世紀に出来た街で、 ここは世界最大の巨大迷路都市と言われています。 もちろん新市街地もありますが、 新市街地と旧市街地の対比が面白いところです。 旧市街地は、 ユネスコが動態保存(住みながら残していくこと)を支援しています。

 

画像egal001 改行マーク路地の話の前に、 街を取り巻く砂漠の写真をお見せしましょう。 このような砂漠のあちこちに、 カスバのような街が点在しています。

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画像egal002 改行マークこれはイスラムの典型的な街です。 日差しが強烈なところですから、 左のように大きな木陰で人々が休息をとる光景をよく見かけます。 街はかなり古びており、 街に一歩入ると迷路のような空間になっています。

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画像egal003 改行マーク平地のカスバです。 何もないところに砦のような迷路都市を造っています。

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画像egal004 改行マークその内部通路です。 建物は日干しレンガと木造ですが、 天井のあるなしで光りと影のメリハリがとてもきつくなっています。 左に見える真ん中の溝は排水路です。 基本的に1階に家畜、 2階に人間が住むようになっています。

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画像egal005 改行マーク壁の連続で空間がつながっていきます。 光りと影のつながりがとても美しく、 歩いているうちに突然視界が開けたりしてメリハリのある構造になっています。

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画像egar007 改行マーク光りに誘われて歩いていくという感じです。

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画像egal009 改行マークこの写真ではかなり人が歩いていますが、 とても車が入れそうにありません。 左は旧市街を丘の上から撮影したものです。

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画像egal010 改行マーク車が入れないので、 メインの交通機関はロバです。 ロバがぎりぎり通れる広さです。 家の開口部は直接路地に面しています。

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画像egal011 改行マークこのようにちゃんと開け閉めできる扉がついています。

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画像egal012 改行マーク路地から路地へと袋地状につながっていて、 どこまで行けば行き止まりになるのか分からないし、 地図を持っていても役に立ちません。 ただし、 1週間もいると自分でも歩けるようになります。

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画像egal013 改行マーク建物と建物の間には隙間がありますが、 後で隙間ができたのではなく、 先に隙間を作っているのではないかと思えるほどです。

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画像egal014 改行マーク路地を抜けていくと、 突然小さな広場に出ます。 ある一角が市場(スーク)になっているのですが、 商店と人がすごい密度で出現するのです。

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画像egal015 改行マーク路地に面した扉の中のコートヤード型の広場に向かって仕事をしている風景です。

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画像egal016 改行マーク広場に近い路地では、 だんだんと人の数が増えています。

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画像egal017 改行マークこのように、 細い路地と広場の繰り返しで街ができています。

改行マーク広場では市が開かれています。

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画像egal019 改行マークその市場(スーク)は、 路地の中にも伸びていきます。

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画像egal020 改行マーク商店の上にはヨシズがかけられていて、 それを通ってくる光りがまた気持ちいいのです。 光りと影のまんだら模様でできている商店街です。

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画像egal022 改行マーク商店の路地を抜けて大きな広場に出てきます。 夕暮れになると山のように人が出てきます。 このように細い路地と広場、 天井のあるところとないところのメリハリがはっきりしています。

改行マーク大崎さんの話にもありましたように、 路地は細く、 不整形な心地よさがありますから、 それを今の都市計画に生かせないかといつも考えています。

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西アジア(ウズベキスタン・イエメン)の路地

画像egal023 改行マークこれはウズベキスタンの風景です。 西アジアの路地の例です。 光りと影を映す壁がとてもきれいで、 この先に何があるのだろうと誘い込まれる魅力があります。

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画像egal024 改行マーク路地は細く、 湾曲している道が特徴です。 シークエンスが変わるところがいいですね。

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画像egar025 改行マークここの路地も、 先ほどのカスバの街と非常によく似た空間です。

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画像egal027 改行マークこれはイエメンです。 イエメンは山岳都市ですから、 山の方に街を作りました。 路地はすき間の階段状に作られています。

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画像egal028 改行マーク建物と建物がくっついて一体となっているところもあって、 このようにゲート的なすき間と言えるような空間構造も作っています。

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画像egal030 改行マーク人がいる時といない時の写真です。 人がいない時はとても静かな路地ですが、 人がいる時は自分もそこへ身を置きたい,参加したくなる親しみやすさのある空間になります。

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画像egar031 改行マークイスラム世界の街は光と影がはっきりしているのが特徴です。 日本の路地のようにしっとりとした濃やかな表情とは対照的です。

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画像egal033 改行マークおそらくその街の気候や建物の素材でその街らしさが出来上がっていくのだろうと思います。

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画像egal034 改行マークこのようにイスラムの路地には、 必ず広い広場がセットになっています。

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画像egal036 改行マークイエメンの道路です。 路地ではありませんが、 不整形に連続している道の魅力が感じられます。

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新しい計画に路地の魅力を取り入れる

改行マーク世界の古い街の路地を紹介しましたが、 こういった魅力を現代のまちづくりにも生かせないかと試みた事例をこれから見ていただきたいと思います。

画像egal037 改行マーク兵庫県三田市、 ウッディタウンでの計画です。 ここでは一般的なグリッドパターンの道路計画と違って、 不整形の面白さを目指しました。 4.5mの道路、 小さな広場、 細い路地を組み合わせています。

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画像egal038 改行マーク実際の道の様子です。 道自身は平行ですが、 区域の道路計画としてはくねくねと曲がりながら連続するようになっています。 道自身を不整形にすることは、 この時点では難しく、 同じ幅員になっていますが、 広場は三角のものもあります。

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画像egal039 改行マーク右は細い路地をつくって例です。 ここでは、 道と擁壁を同素材で作って連続性を出し、 空間性を高めています。 左はアイストップや当て曲げを作った道の例で、 路地の風景と通じるものがあると思います。

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画像egal040 改行マーク光と影を感じる道です。

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画像egal041 改行マーク御坊市の島団地再生の仕事では、 もっと道空間に生活がダイレクトに表出したような街を作ろうと計画しました。 そのためには、 地べた以外でも路地の持っている魅力をつくり出すようにしたいと思い、 立体型の路地を考えてみました。 これは10年間で240戸の公営住宅を建替えるプロジェクトですが、 住民と話し合いながら進めるワークショップ型で行っており、 まだ、 ようやく1期分の15戸が完成した段階です。

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画像egal042 改行マーク従来の公営住宅と違い、 南側に廊下を通しています。

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画像egal043 改行マーク集合住宅につきものの鉄の扉ではなく、 下町長屋のような開口部もあります。 これも3階の立体路地の風景です。

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画像egar044 改行マーク廊下自体も不整形にしてみました。 南廊下は計画時に論議をよんだのですが、 住み始めるとなかなか好評を得たところです。 プライバシーか面倒見の良いコミュニティかという選択なのですが、 ここでは普通のマンションでは得られない新しい価値が出てきているようです。

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画像egal044 3階の廊下ですが、 子供達はまるで地べたの路地のように座り込んで遊んでいます。

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画像egar046 改行マーク夜の風景です。 向かいを意識できる光りのもれ方になっています。

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改行マーク以上です。 ありがとうございました。

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