これは、 今、 どこにでもある話で、 尾道に限った話ではないのですが、 そういう問題を解決するのに、 尾道の路地がいったい何なのか、 こういう環境がなんなのかということを考えないと、 路地だけという話ではあまり意味がないと思います。
色々なところで言われていることですが、 これからの街では、 住んでいる人と訪れる人が、 ともにお互いの気持ちよさのために街の魅力をより高めていく、 そういう構造が考えられなければならないでしょう。 今後は高度経済成長社会だとか工業化社会とは違う世の中になるわけですから、 そういう視点が大切なのではないかと思っています。
例えばパリの場合には、 住んでいる人より多いぐらい海外からの観光客が来て、 地域にお金を落としながら、 街の魅力を高めるために支援してくれています。 ところが大阪だと、 外国の観光客は人口の3%ぐらいしかいないらしいのです。 これは大阪にとっての問題ですが、 尾道も同じように考えてみれば、 この路地という空間は、 尾道が持っている大きな魅力ではないかと思います。
一方、 平地の方は、 これは非常に怖いと思います。 やろうと思えば、 近代の理屈でバッといけてしまうところがあります。 だから、 魅力を本当に捨ててしまうのではないか、 捨て去りやすいのではないか、 それが問題だと思います。
尾道のような形態の街は日本中にたくさんあるわけですから、 尾道特区型の手法というものを都市計画として、 真剣に考えていかなければならない時代になっていると思います。 道路を広げて耐火構造にして、 不燃性を高めるというスクラップ&ビルドではなく、 サスティナブル型の手法を国全体としても考えなければならないと思います。
先ほどのモロッコの例でも、 保存といいながらも、 観光客を連れてきています。 自分たち自身の民族の伝統性だとか、 アイデンティティだとか、 歴史性だとかを考えて、 誇りを持ちながらも、 観光客にお金を落としてもらい、 支援してもらいながら街を、 生活を維持しています。 独自性は内容としてあればいいわけで、 尾道も積極的にいろんな人たちと議論を重ねながら、 国等に要請していく必要があると思います。
もう一つの課題は、 山手のまちのこれからについてです。
商店街も一緒だと思いますが、 たぶん世代交代がうまくいっていないのだろうと思います。 たまたまお年寄りが残ってしまって、 大変だけども他に行きようがないからそこに残っています。 いずれそこが空いていくのでしょうが、 そうした所に住むお年寄りについて、 まち全体でどうやったら支えられるのかを考えていかなければなりません。
一方、 車がなくても、 階段でも、 あそこに住みたいという若い人もいると思います。 そういう人が、 うまくみんなの合意のもとに、 そこに住みながら、 街の魅力を残し、 あるいはよりブラッシュアップしながら支えていく。 そういう街の構造を考えていくことが重要だと思います。
尾道方式の都市計画の必要性
江川直樹
住む人と訪れる人がともに気持ちがいい街を
昨晩のことですが、 この近くのバーで今日のメンバーのみなさんとしゃべっていましたら、 別のお客さんが「あなた達はよそからきて路地がきれいだとか言うけれども、 実際は大変なんだ」「尾道の今の一番の問題は、 人口が減って、 商売が成り立たなくなっていることだ」とおっしゃいました。 今日、 お見えになっていらっしゃいますが・・・。
サスティナブル型の手法を
山の路地と平地の路地があるわけですが、 山の路地は近代都市計画でいくら「ああしろ」「こうしろ」といってもやりようがないところがありますから、 それなりに残っていくと思います。 建築の確認申請の話にしても、 従来の建て方では無理ですから、 修復、 改造を繰り返しながらやっていくという尾道方式みたいなものを、 工夫しながらやっていくところがあると思います。 それはそれでもっとブラッシュアップしていく必要もあるでしょう。
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