路地から見たまちづくりの作法
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イタリアの街と尾道の住みやすさを比べる

井口勝文

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イタリアの路地と尾道の路地
改行マーク資料1ではイタリアと尾道を4つの視点で比較してみました。

改行マーク一番目は、 人とのつながりです。 コミュニケーション、 コミュニティがどのように親密であるか、 あるいはそのまちをどのくらい誇りに思っているのかということです。 二番目に、 便利さ、 不便さをあげました。 三番目は、 不動産価値としはどうであるか、 あるいは公共投資がどのように行われているのかということです。 四番目に、 美しいかどうかという視点で見てみました。 右側は、 イタリアについて私なりに判断して書いています。 尾道については、 資料を作った時には分からないことが多く、 ずいぶん空白が多くなっています。

改行マーク特にイタリアのところで二重丸とバツがついているところについて、 尾道と比較しながら見てみたいと思います。

改行マーク最初の人とのつながりについてですが、 集落の一員であることに誇り、 あるいは優越感を感じているということについては、 イタリアは二重丸ですが、 尾道も二重丸だと思います。 これは、 日本では貴重な街だと思います。

改行マーク次の、 生活が不便かどうかです。 その点では、 尾道は確かに不便だと思います。 家に駐車場を設けられるかということはイタリアはバツですが、 もちろん尾道もバツです。 さらに、 家に車が寄りつけるのかどうかは、 イタリアは丸ですが尾道はバツです。 だから、 イタリアよりもずっと不便なんですが、 それにも関わらず住んでいます。 というのはこの街が私は好きだし、 街を誇りに思うからだということだと思います。

改行マークこういうことが言えるのは、 今では京都の一部とかに限られていて、 だいたい自分の住んでいる街を誇りにしている日本人は少ないと思います。 だから尾道は街への誇りという点ではイタリアの街に非常に近い。 それは、 歩いてみてつくづく感じました。 自分の街を誇りに思わないと、 街というのは絶対によくならないし美しくならないという意味で、 日本にはまれな可能性のある街だと思いました。

改行マーク車の問題については、 中心市街地との問題に密接な関係があります。 せめてイタリア並みに家に寄りつけることができればまだ凌げるかもしれませんが、 寄りつけもしないというのは、 これは現代の生活ではほとんど致命的といってもいいぐらい不便な街だろうと思います。 でもこれは、 尾道の場合にはしょうがありません。 しょうがないと思った上で、 どうするのかということになります。 これについては後程申し上げます。

改行マーク次の不動産価値としてイタリアと比べてみると、 公共投資の対象となっているのかどうかが大きいと思います。 イタリアの街では、 目に見えるところではまず、 広場、 道路、 路地のペイブメントをちゃんとする。 それから、 建物の外壁を補修する場合は補助金を出す。 目に見えるところでは、 この二つが非常に大きな公共投資です。

改行マーク尾道の公共投資については、 先ほど寺本さんがおっしゃったように千光寺や志賀直哉旧居のあたりでずいぶんされています。 確かにあのタイルはいただけないと思いました。 しかし、 天満宮あたりで排水路の底に黒い玉石が全部敷かれているのは、 歴史的に何かあるのかどうか分かりませんが、 ないとしても尾道の街に非常に合っていると思いました。 それから、 昔から使われている御影石の石垣、 丘の上から見るとみんな黒い屋根瓦が使われていたりするのも、 一つの美意識を持って作られている街だと思います。

改行マークこういったことは、 尾道の街並みを美しくすることの一つの手がかりです。 そのあたりを、 「街のお化粧」という言葉で考えていただければと思います。 そういった公共投資がきっかけになって、 せっかく美人に生まれても「お肌の曲がり角だからお化粧した方がいいのよ」という呼びかけになって、 どんどん街が美しくなっていくと思います。

改行マークこのような公共投資がきっかけになって市民が街を美しくしたいと思い始める例は、 私自身日本でも経験したことがありますし、 イタリアでもそれが1970年代後半から続いている都市政策の一つなんです。 ぜひ、 そういうことをやっていただきたい。 また、 それをちゃんと支持できるだけの住民がいると確信しています。

改行マークところで自動車の話ですが、 不便な反面、 自動車を持たないこともこの街の強みになっていると申し上げたいと思います。 致命的なことだと先ほど言いましたが、 逆に考えると、 車の生活をしていないから郊外のショップセンターに出て行かない。 だから中心市街地の商店街にまだまだ活気があると言えます。 確かに、 「どんどん閉店していっているんです」とおっしゃられますが、 他の街と比べると、 ずっと商店街に活気があります。 人口が減っているから、 さらに活気を持たせることは難しいかもしれません。 しかし、 10万人のうち何万人かがごく近い領域に住んでいて、 しかもその人たちは車を持たないんだということは、 中心市街地がちゃんと生きていくベースになります。 尾道の街がこのまま続けてやっていけたら、 日本では非常に珍しい、 貴重なチャレンジになるのではないかと思います。

改行マークぜひ、 そういうまちづくりをしていただきたいと思います。

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