秩序とカオスの接点
上野泰
尾道に対して具体的に提言することは、 難しいことだ思います。 それは日本の街全部が抱えている問題と同質で、 地方への回帰というベクトルと大都市への集中というベクトルが、 今後どういう形で動いていくのかについて、 まだ読み切れない部分があるからです。
ただ、 少なくとも言えるのは、 20世紀になってからずっとやってきたことやシステムが急速に制度疲労を起こしており、 これから大きく変わっていくのではないかということです。 ですから、 今までのシステムの中では非常に不便だけれども、 そのシステム自体が変わっていくことによって、 ハンディキャップがなくなっていくかもしれないというふうに少し楽観的に考えておかないと、 なかなか展望が開けてこないと思います。
私の先ほどの話と関連してお話しさせていただくと、 活力のある都市とはカオスと硬直のエッジのようなところにある街だと思います。
何でもありということも活性化につながっていきますが、 それが無秩序になって、 その無秩序さがあるリスクを発生させる状況になると、 やはりリスキーな街だと敬遠されて活力が失われていくことになります。 逆に、 非常に規制が強くて、 リスクはないけれども、 あれはやってはいけない、 これもやってはいけないという規制の多いところでも、 やはりだんだん活力がなくなっていきます。
どうやったら秩序とカオスの接点にもっていけるのかというところが、 街を作っていくときの重要なポイントです。 そういう意味で、 尾道のように歴史的な資産を持っている街では、 何でもありという方向で進めていくと今まで尾道が積み重ねてきた空間的な秩序、 あるいは人々の価値観、 気質みたいなものを崩壊させかねないと思うのです。 非常に難しい問題にぶつかっているのだと思います。
その一つのカギが、 先ほど江川さんも少しふれられていましたが、 尾道方式です。 全国統一の物差しで考えるのではなくて、 尾道で全国統一の色々な制度の抜け道を考えて、 公的な金を入れながらきわめてローカルなやり方をやっていくことが必要ではないかと感じています。
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