路地から見たまちづくりの作法
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会場から

西

改行マークどうもありがとうございました。 上野さんが提起された部分からの発想という考え方は、 大変大きなテーマだと思います。 イタリアやイスラムなどに比べて、 空間の多様性とか、 路地のあり様は、 尾道の方が圧倒的に多様です。 広さ、 素材感など、 多種多様です。 としますと、 住んでいる人との関係性、 部分からの発想ということになると、 外国よりももっと難しいのではないかと思いました。 しかもそれを公共がやろうとすれば、 ますます難しくなってきます。 難しいのですが、 街を愛している人がたくさんいるということは、 逆に可能性もたくさんあるということです。

改行マーク今、 上野さんが尾道方式とおっしゃられましたが、 もし尾道でそういった手法が開発されれば、 他の街にも適用可能ではないかと思いますし、 そういう可能性も難しいとはいえあると思います。

改行マークでは、 今日は東京とか、 四国からも来ていただいていますので、 会場の方からもご発言をお願いします。


尾道の街は国道2号線によって分断されている

中村伸之
改行マークランドデザインの中村と申します。

改行マーク尾道について、 感じたことについて発言させていただきます。

改行マーク地図を見ていると、 街の真ん中に国道2号線が走っていることが気になるのですが、 みなさんは昔からあるのであまり気にならないのでしょうか。 どうも、 国道みたいな線が、 浜と山を分断しているというのは、 致命的なことではないかという気がします。

改行マーク森重さんから「尾道は浜と山とが複合した文化があって、 それが西へ東へとのびていった」というお話がありましたが、 海側と山側というユニットが有機的に結びついてはじめて街になって、 それが横にのびていくという歴史的な経緯があるわけです。 しかし、 それが国道2号線によって分断され、 山手の方を窒息させているのではないかという気がします。

改行マーク駅を降りて商店街の方に行くのに信号で何分も待たなければならないとか、 あるいは国道2号沿いの街並みは全然きれいではないし、 今日も国道2号のことは全然話題に上りませんでした。 それから、 今日の山手見学ツアーの帰り道ですが、 2号線に歩道橋があって、 それを渡らなければならなかったのですが、 暑いしめんどくさいので、 車の途切れ具合を見て走って渡りました。 住んでいる方は非常にフレンドリーでうれしいのですが、 あの国道だけは無礼だと思います。

改行マーク最近四国へつながる橋ができましたが、 四国から広島へ抜ける通過交通が増えるのではないかという心配もありますし、 駅前の再開発も商店街とは道を隔てて反対側でやっています。 駅前で事足りるのであれば、 商店街には行かないということもあり得ます。

改行マーク先ほど大崎さんがおっしゃられたように、 道を選ぶ自由、 選択制が、 国道があるおかげでだいぶ失われていて、 浜は浜だけ、 山は山だけで、 横のつながりだけで北と南は関係なくなっています。 それを何とかしようと思えば、 道をどこかに移すか埋めるしかないのではと思います。

改行マーク例えば、 国道がなくなった跡地を緑の空間にして、 山から流れてくる川を横に流して水のある緑にするとかすれば、 山手の路地も生き生きとするのではないかという気がしました。


山陽本線敷設のいきさつ

森重彰文
西

改行マーク街の構造に関する質問ですので、 市の方としてはどのように考えているのかというコメントをしていただければと思います。

森重

改行マークそういうことについてコメントする立場ではありませんので、 歴史的な経緯についてお話させていただきます。

改行マーク国道は、 国有鉄道の周囲何mは強制撤去させるということによってできあがった道路です。 それまでは民家が密集していたのです。

改行マーク100年ほど前に、 山陽鉄道をここを通そうという話になりました。 その時、 路線案は5案あり、 現在の新幹線が通っているあたりも案の一つとしてありました。 当時の町長選で、 今の山陽本線ルートの賛成派と反対派が投石騒ぎまでやって選挙をやったのですが、 反対派が勝ったんです。 ところが、 選挙が終わったその日に県庁に反対派が推した町長が呼ばれまして、 急遽今のルートに決まったという、 歴史的ないきさつがあります。

改行マークただ、 鉄道がここに通っていなければ、 この100年間でたぶん尾道の街はなくなっていたのではないかと思います。 結果として、 鉄道についてはしょうがないかなと思います。

改行マーク山の手からの道路が、 鉄道のところでガードになっているところは、 昔はすべて水路だったところで、 以前はお寺さんに行くのは踏みきりで渡っていました。 人間は多少の盛り上がりの部分は自力で超えなさい、 水はしょうがないから通してあげます、 というのが当時の鉄道の敷設の仕方でした。

改行マーク尾道は新幹線の駅を自前で作りましたから、 その時に自前で作るのなら、 せめてここを高架にして、 自由に通行できるようにしたらどうかというような案を出した市民の方もいらっしゃいましたが、 今のところ全然議論されていないのが現状です。


尾道は観光で食っていけない

地元の人
改行マーク今日は尾道の人はあまり来ていないようですから、 地元の者としてちょっとお聞きいただきたいと思います。 尾道の交流人口というのは年間200万人ぐらいです。 工業は1,800億ぐらいの生産高で、 商業は4,000億ぐらいだと思いますが、 交流人口で生きていく街になるのかどうかというのは、 尾道がこのどちらに行くのかということだと思います。

改行マークみなさんおっしゃられているのは観光ですが、 路地に住んでいる人は、 観光では食べていませんので難しさがあります。 尾道の生き方として、 どのような街になる方がいいのか、 ちょっとおうかがいしたいと思います。


観光ポテンシャルある尾道

江川直樹
改行マークよその人が尾道が好きだと言って来るわけですから、 それはそれでいいのではないかと思います。 先ほど井口さんもおっしゃられていましたが、 他の街にはない魅力があるわけです。 それをあえて、 他の街にはない魅力なんて自分たちには関係ないのだという話にしてしまうのか、 それとも他の街にはない魅力を有効にして、 自分たちも住みやすい街にしようと思うのかだと思います。 世の中は尾道に期待をしているわけです。 しょっちゅう来ている人もいるわけで、 そういう気持ちというのは非常に大切なことなのではないかと思います。


ホスピタリティが宝

井口勝文
改行マークとにかく、 尾道の人のホスピタリティは日本一ではないかと思います。 ホスピタリティさえあれば、 観光地として絶対に成功します。 今はインターナショナル、 グローバルな観光の時代ですから、 外人を呼べるような観光をちゃんとやらなければならないという議論が盛んに言われています。 そういうレベルの話には私の言うホスピタリティだけではちょっとついていけない部分はありますが、 少なくとも日本人を相手にした観光地としては、 ホスピタリティだけでやっていけるのではないかと実感しました。 それだけは是非申し上げたいと思いました。

西

改行マーク例えば、 倉敷に行くと5時になると人通りが途絶えてしまいます。 人は確かにたくさんくるのですが、 倉敷の場合、 平均滞在時間2時間だと聞いています。 尾道に来る人と倉敷に来る人というのは、 たぶん違う種類の人ではないかと思います。 尾道は倉敷とは違う道を歩んで欲しいという期待をしています。


倉敷と尾道

倉敷の人
改行マーク倉敷から参りました。 今の話にちゃんと反論しておかなければならないと思いまして、 言わせていただきます。 今、 倉敷と尾道が違うという話がありましたが、 ご存じでしょうか、 ほとんどの旅行ガイドブックは、 「倉敷・尾道」というセットになっています。 ですから、 尾道と倉敷に来る人は、 ほとんど同じ人ではないかと思います。

改行マークただ、 倉敷は生活のにおいがなくなっているのも確かで、 ほとんどがおみやげ物屋さんになっています。 建物の質は相当いいものがありますが、 生活のにおいがなくなった街になっていますし、 特に最近は美しさだけで売ろうとしている部分が出てきています。 それに比べて尾道は、 人と接する部分があるのではないかと思いました。 ただ、 駅前の再開発ができてしまうと、 だいぶ変わってしまうだろうという気もします。

改行マークそういった違いが倉敷と尾道にはあるのですが、 来ている人はどうも同じなのではないかという気がしています。 どうして倉敷・尾道というセットになっているのか分かりませんが、 同じ質の人たちが来て、 それぞれが選択をして、 その後もまたリピーターになって来ているのかなと思います。

改行マークただ、 一つ倉敷のいいところを言いますと、 早朝と夜中の街です。 昼間くる人は、 単なるミーハーだと思います。

西

改行マーク失礼しました。


対岸からの発想

広島の人
改行マーク広島から来たものですが、 母の郷が尾道ですから、 私の体半分は尾道です。

改行マーク今日の問題は、 旧市街ということだったのですが、 景観的な美ということに関して言いますと、 むしろ向島から眺めた方が景色がいいのです。 ですから、 対岸との間に行き交う渡船も忘れてはならないものです。

改行マーク向こうの岡島のホテルに泊まったことがあるのですが、 あそこからの夜のハーバービューは最高です。 今日は尾道側からしか尾道水道を見ていませんが、 反対側からも見るべきで、 そういった点もプラスしていただいたらいいのではないかという感想を持っています。

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