それでは、 自己発生的な街にどのような原理が働いているのかを考えてみようと思います。 仮説として、 一つ考えているのは、 早い者勝ちのルールです。 これは、 生物の発生の原理として言われたりしています。 例えば、 これは蝶の燐粉ですが、 こういう不整形でランダムなものがどのようにできるのかを見てみると、 それぞれの細胞の成長速度にばらつきがあって、 そのばらつきがあるものに対して早い者勝ちのルールを入れると、 こういった不整形なパターンが作り出されるということをコンピューターでシミュレートしたものです。
自己生成的な街がなぜ不整形になりがちかということを考えてみると、 一つはこういった早い者勝ちのルールがあるのではないかと思います。 人間社会の場合には強いもの勝ちということもありますが、 基本的には早い者勝ちということが考えられます。
その結果、 初期的な条件に対して非常に敏感になってきます。 初期的にどういうふうな形になったのか、 あるいは、 初期にどういうものがあったのかということが、 あとあとの街の構造を決定づけていくということがいえるかと思います。
右側のスライドは、 先ほどの東京都の稲城市の図です。 所々に白く残っているところがナシ畑で、 そういうところが市街化していきますから、 あちこちでばらばらな方向を向いた建物が建てられつつあります。 こういうところでは、 ナシ畑が街の骨格を作っていったり、 あるいは水路があったりすると、 街の構造を決めていったりします。 このように、 早い者勝ちというか、 先にあったものが次の構造を規定していくというような傾向が見られると言えます。
(写真左出典:種村正美(文部省統計数理研究所、 日本経済新聞、 96.2.24朝刊、 右:「ゼンリン住宅地図、 東京都48、 稲城市」1998、 ゼンリン)