the Urban Enviornment Design Seminar, Yogyakarta
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住宅文化に関する研究的関心の所在

改行マーク次に日本の住文化についてお話ししたいと思います。


継承される家

改行マーク日本の伝統的な社会では、 「家」が社会的な単位として重要な役割を果たしていました。 この「家」というのは、 住宅のことではなく、 継続していく家族の系譜のことです。 この「家」を重視する考え方は、 農業地域においては、 いまだに根強く残っています。 つまり、 「家」は農地とともに永続すべきものなのです。

改行マーク大都市の成長期に地方から移住してきた若者たちの多くは単身で移住し、 核家族を形成し、 そして今老齢期を迎えています。 彼らが育った地方においては、 「家」がまだ大きな力を持っています。 彼らはその「家」から脱出してきたのです。 しかし、 大都市で老齢期を迎えつつある彼らの多くは、 自らは経験しなかった親と子の同居を望み、 自らは残してもらえなかった家を子に残そうとしていると言うことができるでしょう。

改行マーク一戸建ての住宅と言っても永続的な一つの「家」によって所有され続けることは現実にはまれです。 特に大都市地域ではそうです。 その継承の実体を明らかにする必要があると思います。 そこでは個人所有された一戸建ての継承のシステムと、 それに対する人々の考え方を探らなければなりません。

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茶道の家元の家のプラン
改行マークこのプランは千里ニュータウンにある茶道の家元の家です。 元々はプランの白い部分だけの小さな家だったのですが、 ハッチの部分が増築されています。 この家の主人は茶道の家元である高齢の女性です。 彼女はこの家で茶道を教えており、 その関係で多くの部屋を増築した結果、 とても大きな家になりました。

改行マーク二つめの事例の家には娘さんがいました。 親は娘さんが結婚し、 夫婦で2階に住んでくれることを望んでいました。 そのため2階に大きなベッドルームを増築し、 娘さんの夫のために書斎をつくり、 1階にはリビングルームもつくりました。

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増築された家のプラン
改行マークしかし娘さん夫婦は仕事の関係で東京に行ってしまいました。 また夫も、 大切な仕事があり東京に行ってしまいました。 だから今では年老いた奥さんが独りで住み、 ダイニングルームと台所だけを使っています。

改行マークこうした家の物語は私たちに何を教えているのかを考えなければなりません。

改行マークそれはともかく、 この例もそうですが、 一戸建ての住宅は増改築など、 手を加えやすい住宅です。 家族のライフステージに合わせて、 どのような機能や形態が求められているのか、 また、 どのような空間要素が重視され、 望ましい住宅像が追求されているのか。 それを明らかにすることによって、 住宅が持っている世代間の文化伝達の媒体としての役割が明らかにできると思います。


庭と垣根

改行マーク庶民住宅の庭についてみると、 農家では母屋の前方の空き地を〈カド〉と呼び、 〈ニワ〉というのは母屋内の土間のことです。 しかし今は、 ニワは庭(garden)のことです。

改行マーク伝統的な都市住宅である町家には、 洗練された中庭である〈前栽〉があり、 〈トオリニワ〉という土間の屋内通路がありました。 現代の一戸建て住宅は、 これらの影響を受けながらも、 全く新しい文化として生まれたと言ってよいと思います。 そして私的な庭の緑は、 地域の緑のネットワークを形成する上で、 重要な役割を担っているのです。

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生け垣で囲まれた農家
生け垣で囲まれた現代風の住宅
生け垣で囲まれた現代風の住宅
 

改行マーク日本の一戸建て住宅は、 多くの場合、 生け垣で囲まれています。 この生け垣は、 武士の屋敷に用いられることもありましたが、 農家の垣として一般的なものでした。 防風機能をも兼ねているため高いものが多くありました。 高取正男によると、 垣の内は、 神社が鎮守の森によって守られているように、 「青葉の霊力」によって守られていることを意味しているといいます。

改行マークまた、 この生け垣はパブリックな空間である道路に、 重要な緑の環境を提供しています。

改行マークウチ・ソト関係を表示する境界は、 日本では多くの場合、 強く分かつものではなくシンボル的な性質を持ったものです。 たとえば、 「敷居が高い」という表現があるように、 床の高低によって境界が設定されることもあります。 住まいの内外にはこうした結界が多数見られ、 伊藤ていじはその結界性を支えているのは「心のけじめ」であるとしています。


玄関の存在と床座の伝統の変化

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一戸建ての玄関
改行マーク日本の住宅では玄関が重視されています。 玄関は住宅の顔です。 また玄関を入って、 靴を脱いで家の中に入ることはよく知られていることです。

改行マークこれは武家屋敷の伝統を汲むものとされ、 今日の集合住宅の入り口にも、 一種の玄関性の残存をうかがうことができます。

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集合住宅の玄関
改行マークこれは集合住宅の玄関です。 私の家です。

改行マーク日本では床座が伝統ですが、 居間や食事室に椅子座が導入され、 一つの住宅の中で、 床座と椅子座が併存しています。 ここでもJapan meet West Through chairということができるでしょう。

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日本人はどこで部屋のくつろいでいるか
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日本の家庭内の景観
改行マークまた、 ある調査によると、 椅子とテーブルのある部屋でも、 居住者はくつろぐ場合は床に座ることが多く、 一つの部屋で床座と椅子座が混在する傾向にあるということです。

改行マークこの図は部屋の中にビデオを据え付けて家の人たちがどこにいたかを調べ、 プロットしたものです。 図ではほとんどの場合こたつでくつろいでいて、 ソファやダイニングテーブルは利用されていないことが分かります。 みんなこたつに集まってテレビを見ているのです。 床に座る方がくつろげるということです。

改行マークその結果、 椅子座と床座の二つの視点に基づいて家具調度が配置されるために、 室内景観に混乱が生じています。 図は日本の家庭の典型的なインテリア景観です。

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