ところが、 あらゆる市民を対象にした商品開発をしろと言われると、 マーケットが非常に広くなるわけですから、 デザイナーは頑張るわけです。 よりよい商品の開発を目指すわけです。
その結果、 何らかの障害を持って、 それを買おうとしている人たちにとっては、 高品質で、 高デザインで、 しかも安価な商品が手にはいるという、 非常に良い相互関係が企業と市民の間で生まれます。
このように、 すべての面でいい状態が生まれると言うことが分かってきました。
これが21世紀に必要な考え方ではないかと言うことで、 アメリカではずいぶん評価されました。 その結果、 ユニバーサルデザイン、 ユニバーサルデザインと言われるようになったのです。
市民―行政―企業の
WIN-WIN-WINな関係
市民―企業の関係
バリアフリーの商品開発はそれまでもあったわけです。 例えば企業が脳梗塞の方のために歩きやすい靴を考えようとしたときに、 どんなものができたかです。 皆さんはご存じでしょうか。 病院のリハビリテーションの売店で売っている靴を思い出していただきたいのですが、 バレエシューズみたいなのにマジックテープが張ってあって、 お世辞にもデザインされたというものではありません。 見方を変えると、 企業からそういう靴を開発しなさいと言われると、 企業のデザイナーは、 日陰の身というか、 自分のデザイン能力を認められなくなったんだというような感覚があったのです。
市民―行政の関係
次に市民と行政という関係では、 先ほどのADAの話もそうなのですが、 市民は社会参加の機会の増大を得ることができるわけです。 その結果、 障害があることに対する差別を感じなくてすむ。 雇用機会が得られ、 自立が促進される。 生き甲斐がある社会が実現してくる。 一方、 彼らは給料をもらうわけですから、 それを行政に税金として納めるわけです。 ここでも市民と行政の間で非常に良い相互関係が生まれてくるわけです。
行政―企業の関係
今度は行政と企業の関係を見ると、 行政は補助施策とか規制緩和をせざるを得ないわけです。 いろんな企業が巨大なマーケットに向けて商品開発をして行くわけですから、 どんどん規制緩和をして、 企業が市民に向けての開発がしやすいように、 商品を提供しやすいようにしてゆくわけです。 そうしますと、 企業は国に税金も納めます。 国の国際水準が高まっていく。
WIN-WIN-WINの思想
これはユニバーサルデザインのWIN-WIN-WINの思想と呼ばれています。 いろんな企業の競争の場合は、 誰かが勝って誰かが負けると言うような企業間競争があるわけですが、 ユニバーサルデザインに関しては、 すべてが勝つ。 企業も市民も行政も勝つということです。
このページへのご意見は前田裕資へ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai