建設省がユニバーサルデザインのガイドブックを三年前から作っているのですが、 まだ成果は出てこないようです。 しかし、 それができたらできたで、 各市町村がみんなそれをもとに公園を造って、 浅野さんがおっしゃるような金太郎飴の公共空間しか出来ないでしょう。 そうならないように「思想を入れよう」と提案したのですが、 エライさんの中に理解できない人がいるようで、 ガイドブックはまだ世に出ていません。 そういうことが、 往々にしてあります。
例えば児童公園を使う人は誰か。 極端な言い方をすると、 近所に車イスの人や目の不自由な人がいなければ、 スロープや点字ブロックはいらないのではないか。 結局、 誰がどういう風にして使うかを考えないから、 ガイドブックに頼ろうとするのです。 スロープを造りたくても立派な大木があればそれを優先し、 車イスの人には別の手段で我慢してもらうといったことも考える必要があるのではないでしょうか。
今は、 ユニバーサルデザインさえあれば全て解決みたいな風潮が出てきているように思えます。 日本人はひとつのことにワッと走る傾向がありますから、 最初に何が必要とされるのかをちゃんと考えないと変なことになります。
たとえば防災公園と言えば備蓄倉庫だと言われていますが、 いったい誰がそれを管理するのか。 備蓄倉庫ならローソンを備蓄倉庫がわりになるように指定すればいいことです。 備蓄倉庫のために公園に穴を掘る以前にすべきことがいっぱいある。 あんまりひとつのことをやりすぎたらイカンのです。 やるべきことをきちんと消化しながら考えていくのが、 ユニバーサルデザインです。 それが結局は「みんなのための」ということになっていくと思います。
しかし、 こういうことが言えるのも、 ウチが府営公園でキャパシティが大きく何でもできるからだというのも事実です。 市町村の人は大変だろうとは思います。
浅野:
微修正をした例をひとつ紹介します。
「ふれあいの庭」の展示案内図を作った時のことです。 入ってすぐの所にあるのですが、 最初は黒御影石に白のラインを入れて現在地を赤で示しました。 その際、 点字ドットをUVインクという特殊なインクで作りました。 りんくう公園ではセラミックタイルを使ったのですが、 それだと点字ドットが鋭角に出ず中途障害で目が不自由になった人には読みにくいものだったので、 ここではもっと読みやすいものにしたかったからです。 また、 黒御影石を選んだのも、 白御影石に黒を入れると墓石みたいになってしまうので、 黒御影石にした方が綺麗だとおもったからです。 1つの案内図で障害者も健常者も利用できるものにしたいと、 けっこう高かったのですが勇断してもらって作り上げました。
ところが、 UVインクを屋外に置くと、 一夏越えるとボロボロとれてしまったのです。 しかも、 これは考えだにしなかったのですが、 黒御影石は炎天下ではかなり熱くなってしまうのです。 幸い、 メーカーさんからは「何かあったら取り替えます」との申し出を頂いていたので、 今はステンレスにUVインクという組合せに替えました。 それだととれないのです。 グレーに白地と黒地の案内図になっています。
そういう修正の例もあります。
亀山:
ついでに言うと、 夏にステンレスが熱すぎて触れなくなるという問題も出てきました。 「案内図は日陰に作りましょう」とどっかの本に書いてあるはずなのですが。 そのうち、 利用者を集めてどこが悪いのかを聞いていくことも必要だと思っています。
ユニバーサルデザインの規格をつくるな
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