色彩の仕事をしている澤です。 お話を聞いていて、 いくつか疑問がありましたので伺いたいと思います。
例えばりんくう公園ではアスファルトではなくコンクリートを多用していますよね。 そうすると、 光の反射が強く、 お年寄りにとってはつらいのではないでしょうか。
それから誘導タイルについて。 通常、 黄色を使うのはコントラストをつけるためですが、 事例では黄色が使われていません。
このへんの問題はどのようにクリアされているのでしょうか。
三宅:
コンクリートについてですが、 「ふれあいの庭」では花壇で一部使用していますが、 床面については出来るだけ使用しないようにしました。 車イスの方に話を聞くと「アスファルトで全く凹凸がないのが一番いい」ということですが、 それだと高速道路みたいになってしまってつまらないので、 タイルでしかも貼り方を工夫した床面にしました。
普通のやり方でタイルを貼ってしまうと車イスがひっかかってしまうので、 目地の凹凸がないよう工事をお願いしたんです。 かなり大変だったようです。 それ以外にも石を使ってベンチを作ったりとか、 いろんな材料を使うようにしました。
りんくう公園については、 確かにコンクリートの反射の問題があります。 しかし、 あの白とブルーの舗装はまだ仮設の段階で最終的な舗装ではありません。 余談ですが、 カラーアスファルトはどんな色を使っても夏場はとても熱くなりますから、 広いところではそれに替わるものか緑で覆った方がいいと思います。
誘導タイルを黄色ではなく、 ステンレスの色にしたことについてお答えします。 公園という性格を考えると、 みなさんが景色を楽しむために来られるわけですから、 まずは景色を優先させたかった。 景色の中に黄色い線が入り込んでしまうのは、 問題だと思ったのです。 誘導効果が少しは落ちますが、 景観の方をとったわけです。
実を言うと、 もう少し工夫してステンレスの誘導もなくせたらよかったのですが、 あの時点では勉強が足らなかった。 まだまだ課題の残る分野です。 ただ黄色だけは使いたくなかったということです。
亀山:
あのステンレスは、 「らくらくワンルート」という公園のおすすめコースを示すサインです。 私は基本的には、 公園の中には誘導サインは必要ないと考えています。 園路の縁石や手すりをたどって自由に移動してもらえたらと思います。 駅などではサインは黄色でないと危ないでしょうが、 公園では必要ないでしょう。
澤:
黄色でなくてもいいんですが、 色にコントラストをつけてほしいんです。
亀山:
そうですね、 弱視の方用にコントラストは必要で、 危ない所はそうしたサインが必要です。 しかし、 公園の中でひっくり返ってもそう危険はないはずです。
それよりも便所のサインを工夫した方が良い。 男用、 女用の区別がつかない場合が多いのです。 右が女用、 左が男用というように全国統一した方がいい。 そうしたことの方が大事だと思います。
また、 サイン自体が普及しておらず分かってもらえない場合もあります。 駐車場の真ん中のスペースに車イスマークがついているのは、 車イス使用者のための駐車スペースです。 大きくとっているのは、 車から降りる際の車イスのスペースのためです。 ところが、 それがわからない。 普通の人が止めた時に、 隣も普通の人の感覚ですぐ横に止めてしまう。
サイドに車がピッタリと止まってしまうともう乗れなくなるのですね。 そのために空間をあけておくというサインだということがわかっていない。
浅野:
弱視対応の話は公園に限らず設計の時は必ず言われることです。 しかし歩行に問題のあるほどの弱視の人は白杖を持たねばならないのです。 誘導ブロックのタイプは通常、 幅2.3cm厚さ7mmの高さのかまぼこ型ですが、 ビニールだと上を歩くと摩擦が大きすぎてつまづいてしまうのです。 白杖を持つ訓練を受けている人は誘導ブロックの上は決して歩かず、 杖をそれに沿わせて歩くのですが、 訓練を受けてなくて高齢で視力が弱った方などは上を歩いてつまづくことがあります。
しかし、 杖を使うか、 使わないかは本人が決めればいいと思うのです。 そんなところまで行政が関知する必要はありません。 基本的には、 障害を持っている人も自己責任を持つべきだと思うのです。 最大公約数的に何もかも一律に手すりやスロープ、 誘導ブロックをつけて福祉公園の出来上がりというのでは、 あまりに安直すぎます。 先ほどの亀山さんのご意見にあったように、 ユニバーサルデザインはもっと考えて作るべきだと思います。
もちろん「誘導サインが黄色じゃない」と目くじらたてて言う人はいます。 ついこの間も、 カナダの国立公園の人と話をした時、 ボードデッキの写真を見せてもらって愕然としたのですが、 国立公園の中にあるボードデッキのすぐ横に2インチの丸太で車イス脱輪防護柵がつくられ、 その上が全部黄色に塗ってあるのです。 安全=黄色という思考で押し通してしまうと、 せっかくの自然の緑や複雑な色合いの美しさを壊していくことになると思います。 必要でない色は、 出来るだけ入れないということも大切だと思います。
もうひとつ、 やりすぎで困るデザインの例をお話しします。 数年前に建設省が2×2m幅の「ゆったりトイレ」の基準を出しました。 りんくう公園の中にもあるのですが、 視覚障害者が入るとトイレットペーパーやフラッシュボタンがどこにあるのか分からず必死に探さなくてはならないのです。 「ゆったりトイレ」はストレッチャー型の車イスの人には必要かもしれませんが、 普通の車イスで自力で動かせる人ならそんな大きなトイレはいらないし、 むしろ90×120cm幅の空間の方が車イスから移れるし、 いろんな人にとって便利なんです。
頸椎損傷の車イス利用者は、 ひどいときには排便に40分以上かかることがあります。 そういう人たちが数人でトイレに行こうとすると、 トイレは幅が狭くとも車椅子対応の数が多くなければ機能しなくなります。 それが私の言いたい「費用対効果」ということです。
亀山:
ゆったりトイレの扉はしょっちゅう壊れます。 大泉緑地には十数個あるのですが、 扉の修理代が20万円もするのです。 昔は、 「使われるときは申し出てくださると開けます」といって普段はチェーンをかけていたものでした。 それで問題となったこともありました。 今では自由に使ってもらっているのですが、 それがよく壊されるわけです。 また、 信じられないことも起こります。 便器を盗まれたことがありました。 ゆったり空間だから盗みやすかったんでしょうか。
僕は大阪府で福祉のまちづくりの基準が出来たとき、 公園のトイレは全部ゆったりトイレにしろと言った張本人です。 しかし今は、 管理費のかなりの部分がその修理に費やされているのは問題だと思っています。
ただ、 公園について回る要素として、 必ず「壊される」「落書きされる」ということがあります。 落書きぐらいでストレスが発散できたら、 毒ガスや砒素をばらまかれるよりはずっといいわけですから、 その要素もまた公園利用の一部だと割り切って考えることも必要かもしれないと考えています。
誘導ブロックは
黄色でなければならないのか
このページへのご意見は前田裕資へ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai