前に 目次へ 次へJOGLO考(2)
上野泰
(ウエノデザイン)
次に、 JOGLOのDalemが米の女神Dewi Seriに関わる空間であることである。 穀物倉であった屋根裏には、 Semangat Padi(稲魂)が住むとしている所もある。 BaliではDewi SeriはLumbung(米倉)の上に祭られる。 JOGLOでは、 屋根裏が穀物倉として利用されなくなって、 神が下におりてきたのではないだろうか。 布野はJOGLOの屋根の突出がヒンドゥーのメール山に由来するという説を紹介し注1、 この空間の象徴化がイスラム以前からあったという示唆をしている。
The Living House注2の著者Roxana Watersonは、 JOGLOのDalemは男性の空間としてのPendopoに対する女性の領域であったと述べている。 古くからアジアに限らず穀物倉、 台所は女性の領域とされてきた。 我が国にも「男子厨房に入るべからず」という言葉があった。 このこともDalemが穀物倉と強い関係を持った空間であったことを物語る。
以上のようなことからJOGLOのDalemは古くは屋根裏に穀物倉を持つ住居形式から発達したものであって、 あの特徴的な屋根の形は穀物倉の「下屋」であったという推論が成り立たないであろうか。 限られた時間で、 限られた資料からの推論であるので、 あるいは間違いがあるかもしれない。 いま我が国で刊行されている本の中にもJOGLOについて触れているものが幾つかある注3、5が、 その成立過程、 あるいは他の形式との関係を論じたものは見当たらない。 そこで車の中での議論の続きとしてここに提起してみたい。
注1:布野修司『カンポンの世界』PARCO出版、 1991
注2:ROXANA WATERSON “The Living House”, Thaes and Hudson, 1997
(布野修司監訳『生きている住まい』学芸出版社)
注3:鳴海邦碩/アルディ・P・パミリン/田原直樹他『神々と生きる村 王宮の都市』学芸出版社、 1993