続いて、 社会に対して問題が移っていきます。
ここで、 そうした社会的問題に対する都市計画の目標として、 次のようなことがあげられています。
また都市観光の魅力は、 「建物と建物の間のオープンスペースの質によって決定される」と具体的に指摘されていますが、 ヨーロッパの町並みを思い浮かべると確かにその通りだという気がします。
そして「遺産資源の保護、 保存と解釈」との記述がありますが、 「解釈」の意味はまわりの街並みのコンテクストを読みながら新しいものを作っていこうということだと思います。 保存と新しいものを作っていくときの解釈を重要視している箇所がいくつか見られます。 明日の都市の幸福は空間の質を維持しようとする努力にかかってくるとし、 そのために面白いことに「教育」にポイントを置いています。 「読み書き、 算数だけでなく、 都市を教えよう」と提案しています。 教育は長期的なことになりますが、 それに価値を置いているのです。
都市間で仕事を取り合うことがヨーロッパでも起きることを認識した上で、 次のようなことが書かれています。
第1部
都市と都市環境のための現在の協議事項
人口構成と住宅
人口構造が変化して世帯は増え、 地球環境を考えながら新しい人口構成をしていかなければならないということが認識されています。 また、 労働市場の開放によるグローバルな人口動向、 そして特に重要視されているのが大衆旅行で、 これらが都市のあり方に影響を及ぼすことが指摘されています。 そういう状況の中、 住宅困窮者に対する課題もまだたくさん残っているととらえています。
社会的問題
世代・民族・貧富の差が生み出す混合性、 多様性が生活のエネルギーに相関するという認識を持ちながら、 しかし同時にそういう街では問題が集中しているとも考えられています。
いい表現だと思うのが「(都市計画は…)引き続く世代の文化的そして社会的ニーズに関する都市活動の新しいパターンを創出する」というところです。 対象としているのは「今」ではないのですね。 いろんな問題が将来起こりうると予見されれば、 そのための新しいパターンを前もって作っておかねばならない。 その役割を都市計画が担っているというのです。 ひとつの役割認識です。
文化と教育
ここでは、 自由な時間を仕事ではなく余暇として過ごすようになり、 それにつれてレジャーと都市観光が急速に発展するだろうと述べられています。
ここで注目したいことは、 都市観光が強調されていることです。 「レジャーと都市観光は、 EU(ヨーロッパ連合)で急速に発展しつつある活動であり、 都市の歴史的遺産はこの現象には必須の構成要素となる」と指摘されているように、 都市の歴史的遺産が都市観光の対象であり、 都市観光資源と認識されています。 その一方、 レジャー・観光活動が盛んになるにつれて市街地の歴史的遺産やオープンスペースが負の影響を受けるとも予測されています。
情報社会
ここは文脈がわかりにくいのですが、 あとで触れる機会もあると思います。
環境
ここは、 みなさんよくご存じのことですから、 簡単に紹介します。
環境問題と言えば地球環境のことばかり取りざたされて身近な問題はどこに行ったのかと思うことがよくあるのですが、 ここでは地球環境と共に身近な問題に取り組むことが「同時に」必要だと繰り返し指摘しています。 また、 これは都市だけではなく田園地域にも当てはまる問題だとしています。 「田園=自然が豊か」のイメージではもはや認識が甘いということです。
経済
今回の新アテネ憲章で、 とりわけ重要視されていると感じたのは、 経済についてです。
新アテネ憲章の中でヨーロッパ以外のことに具体的にふれているのは、 ここの「環太平洋諸国」という部分だけですが、 これは韓国、 台湾、 日本、 シンガポールなど太平洋西側の国々を意識しているようです。
一方、 ミクロ経済のレベルでは、 持続可能な社会、 仕事と活動のアクティビティが関係してくることが指摘され、 都市計画が重要な役割を果たすと言及しています。
移動
これは交通の問題と言い換えてもいいでしょう。 西側の水準に追いつきたい中央・東ヨーロッパの願望によって、 ヨーロッパでも自動車利用はさらに拍車がかかると予測されています。
選択と多様性
これをどう読むかですが、 土地利用や都市形態のひとつのイメージとして論じられているところです。
ここで言う「社会で力のあるセクターの人びと」というのは、 簡単に言えば金持ちのことです。 金持ちがどういう生活を望むかによって、 未来が見える。 彼らは、 新しい時代の生活パターンを先取りしていると見る必要がある。 そういう文脈だと思います。
「混合土地利用地域の優位性」はあちこちに出てくる言葉ですが、 なぜかと言うことには言及していません。 しかし、 そこにひとつのヒントがあるということだと思います。
総合
ここで、 第1部の現状認識のとりまとめが述べられています。
これはやはり、 ヨーロッパの都市計画家による考え方の着地点で、 日本だと現状の問題点を議論してもこういう結論にはならないでしょう。 日本だと、 結論に「都市の形態」を持ってくると「違う!」と言う人が圧倒的に多いと思います。
サステイナブルな都市構造、 都市の運営は形に関係があるという認識です。
取り組むべき方向としてまず「ヨーロッパの環境」があり、 問題は都市ごとに違うけれど、 それぞれの都市が取り組むことによって問題が解決するという認識を改めてここで述べています。
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