ルーフスケープ(屋根並み)について
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屋根の類型とそのイメージ

類型モデルの作成

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図27 屋根形状のタイポロジー
ミレーナ

改行マーク図27ではヨーロッパや日本、 中国や韓国の写真を集めてどんな形の屋根があるのかを整理し、 モデルをつくりました。 図の左側は屋根をモデル化した図で、 右の表はそれらがどの地域に存在するかを示したものです。

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図28 アンケート用紙(一部)
ミレーナ

改行マークそして、 30タイプのモデルを選んで、 それを見てアジア的かヨーロッパ的か、 伝統的か近代的か、 安らぐか緊張するか、 強いか弱いかについて、 図28のようなアンケート用紙をつくり、 日本人と外国人100人ずつにお願いしました。


アジア人とヨーロッパ人の捉え方の違い

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図29 屋根形状のイメージからみたアイデンティティの認識1
ミレーナ

改行マーク図29はアジア的と答えられたものです。 右側が西洋人が答えたもので、 真ん中が日本人、 左側がアジアからの留学生が答えたものです。 上の段がとてもアジア的と答えられたもので、 下の段はアジア的と答えられたものです。 韓国の反りをもった入母屋の屋根の形は共通してアジア的と捉えられています。

鳴海

改行マーク韓国の特殊な屋根は、 どの国から来ている人も「アジアだ」と答えています。 韓国の家屋にあったり、 あるいは韓国の宗教建築にあったりする屋根です。 このタイプと、 あとは日本風の入母屋が、 日本人も外国人も、 そして特にアジアの人が、 日本的だと答えています。 また、 民族的な建築は、 大体アジアっぽいと判断されています。

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図30 屋根形状のイメージからみたアイデンティティの認識2
ミレーナ

改行マーク図30は、 ヨーロッパ的と答えられたものです。 ヨーロッパ的とされる屋根は、 屋根に窓が取り付けられているスタイルでした。

鳴海

改行マーク一番上の窓のあるスタイルが、 アジアの人にも日本人にもヨーロッパの人にも、 ヨーロッパの屋根として頭の中に刻み込まれているスタイルです。 とはいえ、 いろんなスタイルの屋根がヨーロッパにはありますから、 ヨーロッパの人たちは特殊な民族建築の屋根だけを「ヨーロッパじゃない」と判断してしまうという傾向がみられました。 実は、 階段状のギザギザが付いている屋根は、 中国の屋根ですが、 同じスタイルがヨーロッパにもあります。 ですから、 ヨーロッパの人はこの屋根をヨーロッパの屋根と認識してしまうことが分かりました。

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図31 屋根形状のイメージからみたアイデンティティの認識3
ミレーナ

改行マークあとは、 こういったベーシックな屋根です。 シンプルな屋根は、 アジア人はアジアっぽいと思うと答え、 西洋人の場合はヨーロッパっぽいと答えています。


柔らかい、 安らぐ屋根とは

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図32 「弱い」印象
ミレーナ

改行マークそれから、 デザインガイドラインには、 柔らかい屋根を付けましょうなどと書いてあることが良くあるので、 どんな形を柔らかいと感じるのかを聞きました。

鳴海

改行マーク柔らかいという日本語は意味が多すぎ、 英語になんて訳すかが問題になりました。 weakは弱いになりますし、 softといったら「屋根がsoftってどんな屋根や」ということになります。 なかなか難しいんですが、 ここではweakで聞いてみました。

ミレーナ

改行マークこのグラフの右側、 100%がもっともweakな印象というわけですが、 グラフのように、 ほとんどの屋根は強いとイメージされています。 weakな屋根とされたのは、 シンプルな屋根とか、 ちょっと曲がっている屋根とか、 ちょっと変な屋根です。 そういった屋根のモデルを図の右側に示しています。

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図33a 「安らぐ」印象―「緊張する」印象
ミレーナ

改行マーク次に「安らぐ」と「緊張する」も聞きました。 グラフの右、 100%がもっとも安らぐというものです。 答えは安らぐの方が多いのですが、 棟のない屋根には緊張するとされる傾向にありました。

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図33b 「安らぐ」印象―「緊張する」印象
鳴海

改行マーク図33bに示した屋根は緊張する屋根です。 14と18がいちばん緊張すると答えられた屋根です。


住宅らしいか、 商店らしいか

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図34a 「安らぐ」印象と「住宅らしい」イメージ
ミレーナ

改行マークそれから、 モデルを見せて「住宅らしいか」「商店らしいか」を聞きました。 大体、 安らぐ屋根は、 住宅のイメージとつながっていました。 図34aのグラフで、 左側がお店らしいで、 真ん中がどちらとも言えない、 右側が住宅らしいという印象を示しています。

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図34b 「住宅らしい」イメージの屋根

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図34c 「お店らしい」イメージの屋根
鳴海

改行マーク図34bが住宅向きの屋根と感じられ、 図34cはお店の屋根みたいに見える屋根だということです。


日本人はヨーロッパ風の屋根が好き

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図35a 屋根形状のイメージに対する日本人の好み
ミレーナ

改行マーク最後に、 好きか嫌いかについて日本人に聞きました(図35)。 モデルの中で嫌われるのは、 フラットルーフとか、 ちょっと変わっている屋根とか、 見たことのない形です。 しかし、 日本人はヨーロッパ的な屋根は好きです。

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図35b 屋根形状のイメージに対する日本人の好み
鳴海

改行マーク図35bの下の両端のタイプはヨーロッパの屋根です。 これは日本人はヨーロッパ的と捉えていますが、 同時にこの二つがとても人気が高いのです。

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図36 屋根形状のイメージに対する日本人の好み1
ミレーナ

改行マークこれは今、 日本で発売されている住宅です。 アメリカではありません。 確か三井ホームのパンフレットからとった写真です。 この形は、 日本人にいちばん人気が高かった屋根です。 実際、 歩いてみると、 この形の家がよく建っています。

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図37 屋根形状のイメージに対する日本人の好み2

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図38 屋根形状のイメージに対する日本人の好み3
鳴海

改行マーク図37、 38は、 阪大の北側にある箕面の小野原というところです。 最近住宅がだんだん建ちだしてる地区ですが、 同じように日本的とは言えないスタイルの建物が沢山見られます。


モデルと写真での答え方の違い

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図39a 認識の要素1
ミレーナ

改行マークこれは、 簡略化した屋根のモデルと写真の両方を見せ、 同じ質問をしてみたものです。 結果は全く違ったものです。 図39aは、 モデルだけをみたら日本人はアジア的と答えていましたが、 写真でディテールとか材料を見るとヨーロッパとわかるんです。

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図39b 認識の要素2
改行マーク図39bは、 モデルだけ見たら、 日本人はヨーロッパっぽいと答えました。 しかし写真で屋根の材料とか、 ベランダとかをみるとアジア的という答えになりました。

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図40a 認識の要素3

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図40b 認識の要素4
ミレーナ

改行マークこれも同じです。 木造を見たら、 アジア的というふうに答えました。

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