ルーフスケープ(屋根並み)について
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屋根に時代のアイデンティティを

上野泰

改行マーク今日は屋根が地域のシンボルとしての働きを失って、 個人のレベルに分解していったというお話でした。 群としてのアイデンティティから個人のアイデンティティへと分解していったわけで、 一番象徴的なのが丸茂先生がおっしゃった「黒髪から茶髪になった」という指摘です。 地域的・民族的イデオロギーからの解放が屋根にも起きているということなのでしょう。


「多層階+屋根」は一つのあり方

改行マークここでなぜ、 日本で多層階建築に屋根を乗せるようになったのかを考えてみたいと思います。 鳴海先生がインターナショナルスタイルはイデオロギーとしてあったと指摘されましたが、 一方ボックスの上に屋根を乗せるということもひとつのイデオロギーです。 この2つのイデオロギーがぶつかり合って出てきたのが多層階建築+屋根という「ひとつのあり方」だろうと理解しました。

改行マークなぜ「ひとつのあり方」なのかと言うと、 ヨーロッパのシャトーなどの多層階の建物では、 石造の壁の上に木造の小屋組を乗せることが伝統的なやり方だからです。 それも、 ヨーロッパ中部の木造の屋根と、 地中海沿岸の石造の構造が合体して出来た方法なのかもしれません。

改行マークそういった屋根と帝冠様式の屋根とはルーツが違うと考えるべきではないでしょうか。 帝冠様式は明治以降、 西洋スタイルがどっと入ってくる中で、 どうしたら日本らしさが打ち出せるかというイデオロギーとして出てきたものです。 その流れの中で出てきたのが、 愛知県庁のスタイルだと思います。

改行マークこの帝冠様式の特徴は最上階のあり方です。 愛知県庁も、 最上階だけは表現が違っています。 しかし、 元東京帝室博物館や九段会館は、 石造構造の上に一層の軸組構造の建物を乗せたという表現で、 これをたどっていくとチベットのポタラ宮殿(石造の上に木造の寺院を乗せた構造)や天安門などの中国の城郭建築に行き着きます。 こうしたマッシブな構造の上に木造の建物を乗せる方法と、 「多層階+屋根」スタイルでは最上階の表現が違ってくるのです。

改行マークつまり、 中層あるいは高層の上に軽い構造の屋根がポンと乗っているのではなく、 屋根を支えている階とその階を支えている下の階では構造が同じであるにも拘わらず表現が違うところが、 帝冠様式のデザイン上のポイントだと僕は思いました。

改行マークまた、 先ほどの事例で紹介されたインドネシアの民家は、 かなりオランダ建築の勾配屋根の影響を受けているので、 中国やベトナムのスタイルとは違う、 むしろヨーロッパに近いと思いました。


いま求めるべきアイデンティティとは

改行マーク再び本題のアイデンティティの話に戻りますが、 地域や場合によっては国としてのアイデンティティが問われなくなって、 今はバラバラになっている状況です。 ですから、 地域のアイデンティティを再構築するために屋根のガイドラインを作ろうとしているのでしょう。 しかし、 それを地域のみんなが共有しているかどうかが大きな問題だと思います。

改行マーク今、 全員が共有できるとすれば、 先ほど千葉さんがおっしゃったように屋上緑化やソーラーシステムなど環境面として屋根はどうあるべきかを考えることではないでしょうか。 場のアイデンティティではなく、 時代のアイデンティティをを作っていくことが、 みんなが共有できる屋根のあり方ではないかと考えました。

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