住宅時事往来NO.8
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福島みち子(ボンランティアグループ「留学生相談室」代表)に聞く

相談活動の基本姿勢は
留学生の自立を助けることだと思う

 福島さんはフリーの展示映像プロデューサー、 1986年に設立した「留学生相談室」でボランティア仲間とともに日本で学ぶ外国人学生のための相談活動を続けてきた。

   

 昨今の住宅事情の変化や現在学生たちが抱えている問題を中心にお話を伺った。

   


外国人学生の住宅事情は大きく変化した

 「留学生相談室」の活動内容は、 毎日行っている相談業務と月間情報誌『交流ネットワーク』の発行や宿舎案内等の出版業務です。

相談は就学生・留学生の別を問いません。

総件数は年間約 5,000〜6,000 件です。

80年代後半は特に中国人の就学生が急増した時期で、 相談室は学生で溢れていました。

当時は約50%が住宅相談でしたが、 今は減少し15%くらい。

住宅問題は、 ここ2〜3年急激な変化があります。

東京では貸室が余り、 礼金・敷金・家賃も下がりました。

かつては90%以上が外国人はダメという不動産屋でしたが、 日本語が話せて本人がきちんとしていれば、 以前よりずっと探しやすくなりました。

だからといって日本人の意識が変わったと錯覚してはいけません。

単に需要と供給の関係が変わっただけ。

けれども、 学生がきちんと生活していれば、 大家さんの意識もいつか変わるかもしれないと期待しています。

   

 住宅問題で最も苦労するのは来日したばかりの就学生ですが、 現在日本語学校もかなり淘汰され、 学校側が宿舎としてアパートを借り上げ学生を入れてます。

以前のように言葉も何もわからない学生がうろうろしている状況はなくなりました。

学校側も大家さんや近隣から苦情を言われないよう、 分別ゴミなど現実の問題に気付き指導するようになってきています。

   

単に情報を提供するだけでは相談とはいえない

 また東京の住宅事情を理解していないが故の住宅難もあります。

「通学1時間は当たり前」「山の手線内で風呂付き家賃3万円の部屋はあり得ない」など、 学生には納得するまで懇々と話をするので時間がかかります。

部屋探しと一言でいっても、 情報を渡せば終わりではなく丹念にやっています。

例えば学生が希望しても、 何故その立地のその住宅なのか、 何か勘違いしていたり間違っているようなら、 きちんと話をします。

相手が希望するままに住宅を世話すれば、 それがトラブルの元になるのです。

「留学生相談室」は、 大家さんとのコミュニケーションもとっており、 問題があれば対応します。

大家さんの側も、 私たちの紹介なので安心という面があるようです。

しかし部屋を貸すというのはひとつのビジネス、 大家さんも自分で判断してイエスかノーか決めて欲しいのです。

もちろん学生にも嫌なら断ってよいと言ってあります。

お互いにそれをハッキリさせないと、 必ずトラブルになります。

   

今後は留学生へのカウンセリングの充実が必要

 最近の傾向は、 相談内容が多岐にわたり、 相談というよりはカウンセリングに近くなってきていることです。

   

 家族の問題も増えています。

子供を連れて日本に来ている留学生は、 学校の問題や子供が母国語を忘れるといった悩みを抱えています。

留学生の滞在期間は数年から10年にも及び、 学生たちは日本で大人になるのです。

帰国しても母国には小学校・中学校の友人しかいません。

滞在が長期化すればするほど、 地元に根がなくなり、 帰りにくくなってしまうなど、 いろいろな問題が生まれてきます。

各受入れ大学は、 日本人学生も含めてもっとカウンセリング機能を充実すべきです。

留学生を受け入れるならば、 当然のことでしょう。

   

 「留学生相談室」の活動は留学生の自立を助けることが大前提、 親切になりすぎてはいけないと考えています。

人間は自立しなければダメ、 その自立をちょっと助ける、 日本語が十分でなければ、 大家さんに電話を掛ける時だけちょっと手伝う。

行くのは本人、 本人が自分で開拓していかなければ生きられません。

   

 私たちは民間組織という立場から、 YWCA等他の組織や東京都と連携しながら、 国や世の中に、 気が付いた問題を絶えず投げかけていこうとしています。

   

(インタビュー:稲葉佳子・小菅寿美子、 文責:稲葉佳子)

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