住宅時事往来No.10
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大久保の
外国人居住最新事情

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 エスニック料理をつまみにビールが美味しい季節がやって来た。

東京の中には様々なエスニック・エリアが生まれつつあるが、 大久保界隈は、 その中でも特筆するに値するだろう。

 

   大久保には、 1980年代後半、 就学生・留学生をはじめ、 新宿や歌舞伎町など繁華街で働く外国人などアジア出身のニューカマーズが押し寄せてきた。

木造賃貸アパートからマンションまで、 住まいを求める外国人で溢れ、 至る所で「入居差別」と「トラブル」が多発した。

当時、 日本人住民は急激な地域の変化に困惑したが、 それから約10年が経過した現在、 外国人の存在を抜きにして大久保をを語ることは、 もはやできなくなっている。

 

   バブル経済崩壊にもかかわらず、 大久保の外国人人口は減少していない。

むしろ少しずつ増えてきている。

この10年で外国人居住者をとりまく状況は大きく変わった。

この街に住む外国人の属性や生活も変化してきている。

 

   まず住宅問題について言えば、 今では「外国人歓迎」の立看板が不動産屋の店先に並んでいる。

その理由としては、 住宅の供給が需要を上回り空き室が埋まらないといった社会状況が背景にある。

さらにこの何年かの試行錯誤で、 日本人も外国人も、 トラブルを回避して共に暮らすにはどうしたらよいのか少しずつ理解してきた。

大久保の日本人たちが外国人という隣人に慣れてきたというふうにも言えるかもしれない。

 

   大久保に住む外国人の属性も変化してきている。

以前は留学生や出稼ぎの単身者がほとんどだったが、 今では家族で暮らす外国人も少なくない。

大久 保界隈の保育園 や幼稚園では、 園児の1/4か ら1/3は片親 もしくは両親が 外国人の子どもたちである。

小学校にも外国籍の子どもたちが数多く通っている。

なにしろ大久保1丁目では、 住民の5人に1人が外国人なのだから当然だろう。

 

   生活者として大久保で暮らす外国人が増えるに連れて、 外国人自身が経営する店舗が急増している。

食材店・飲食店はもちろんのこと、 ビデオ屋、 美容院、 エステサロン、 クリーニング・修繕、 漢方治療院など、 そのバラエティの豊かさ、 店の多さには目を見張る。

特にエスニック料理店は、 一歩店内に入れば「ここは日本なの?」と戸惑うほど、 母国の雰囲気が充満している。

さらに新しい変化としてあげられるのは、 これまでマンションの一室を利用していた宗教施設や外国人向け旅行代理店・宿泊施設などが、 通りに面して進出してきたことであろう。

驚くことに、 既に成田と大久保を結ぶシャトルバスが運行されているのである。

 

   10年前には地域のお客様だった外国人は、 今や自らの存在をパワフルに主張しはじめた。

さて、 大久保の日本人住民は、 このような大きな変化のうねりの中で、 どこに向かって行こうとしているのだろうか。

「日本人」「外国人」という枠をはずして、 どちらも単なる「地域住民」と呼べる大久保へ向けて、 さまざまな模索がはじまっている。

 

   夏です。

読者の皆さんも、 大久保でエスニック料理などいかがですか。

(文責:稲葉佳子)

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