住宅時事往来No.10
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共生型まちづくりを立ち上げるのは
地域コミュニティから

渡戸一郎さん(明星大学人文学部助教授)に聞く

都市社会学をご専門とし、 地域者快調さを中心にフィールドワークを展開して来られた渡戸先生に、 新宿区大久保地区との関りや、 今後の外国人居住問題の展望について語っていただいた。

 

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*大久保シンポ--地域に活動を還元する難しさ

 大久保地域との関わりは、 新宿区が1992・93年に主催したコミュニティ講座「外国人とともにつくるまち」の講師を引き受けたのが始まりです。

その後、 受講者が中心となり「外国人とともに住む新宿区まちづくり懇談会」(略称:共住懇)を結成し、 当初から参加しています。

最初の3年間は、 外国人関係の研究者や町内関係者を講師としてお招きして学習会を開いていました。

その締め括りとなったのが昨年11月に大久保で開催した「本音で語ろう!大久保のまちと人」のミニ・シンポジウムでした。

ある面では、 地域へのフィードバックがテーマでしたが、 フィードバックがいかに難しいかということが同時に分かった会でもありました。

 

   大久保の場合、 定住している高齢者が地域活動を担っていますが、 これまで外国人居住者との個別経験はあっても、 全体としてどう受け止めていいのかというコンセンサスづくりはしてこなかったようです。

その点を含めて問題提起をしようと試みたのですが、 十分にコミュニケートできずに、 単発で終わってしまいました。

今後共住懇も新しい段階に入りますが、 どういう方向に行くのか模索しながらの活動になるでしょう。

*外国人自身が発言できる「場」づくりが重要

 最近ある研究会でも議論しましたが、 日本政府には外国人政策のコンセンサスや基本的な枠組みがありません。

しかし、 外国人住民の多い地域では、 多文化化、 複合文化化が既に進行しています。

大久保通り、 地区内の保育園・小学校、 マンションの共用部分でも始まっています。

それゆえ、 政府がその見解を示さないまま、 部分的に自治体がやらざるを得ないのが現状です。

しかし、 その自治体に政策理念があるかと言えば、 まだできているとは言い難い。

結局、 この問題を考えていくのは地域です。

地域から立ち上げ、 地域社会の変容が自治体に理念形成をさせていくということです。

 

   そのためには、 外国人自身の「声」が大事にされなければと思います。

東京では短期滞在が比較的多いのですが、 市民として扱って欲しいと感じている外国人は多勢いるはずです。

しかし、 現状では日本社会に対して発言する機会は非常に少ないのです。

エスニック団体も、 韓国・北朝鮮を除いてまだ非常に弱いのが現状です。

エスニックプレスは育ってきていますが、 彼らの声を同国人だけでなく日本社会に発信していかなければ、 日本人が外国人の声を代弁している現状から抜け出せないでしょう。

留学生新聞が開設しているホームページも面白いと思いますし、 地域のエスニック団体が顕在化するようなイベントも有効かと思います。

このような「場」を提供することが、 まず大切です。

 

   川崎市では、 外国人市民代表者会議が発足し、 先日市長に報告書が提出されました。

東京都でも今秋同様の会議が立ち上がりますが、 新旧の外国人の意識の差、 市議会との関係をどうするか等の問題は残っています。

今アメリカでは、 「普遍的なシチズンシップ」ではなく、 「差異化されたシチズンシップ」を形成していく必要性が説かれていますが、 日本も参政権の問題も含めて議論しなければならないでしょう。

そのためにも、 地域コミュニティと外国人自身の声が重要なのです。

*自治体とNPOの緩やかなネットワークを

 地域の人に外国人との共生を理解してもらうためには、 相互理解のための多文化教育を、 生涯学習やコミュニティイベントに盛り込んでいくことが必要だと思います。

また、 例えば、 外国人居住者向けパンフレットは既に作られていますが、 日本人向けのハンドブックを自治体がつくってもいいと思います。

その際に、 差別は良くないとか人権意識の普及ばかりでなく、 もっと日常場面で起きている事象にはこういう意味があると解説して、 必要ならこういう組織に連絡をというリスト等も付けるといいでしょう。

区や市レベルの自治体と、 NPO、 コミュニティ団体や住民が緩やかにネットワークを組んでやっていく、 その中でもう一度地域を考えていくことが必要なのではないでしょうか。

(インタビュー:稲葉・塩路・小菅、 文責:小菅寿美子)

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