まち居住通信1
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

フランス人の目からみた韓国のチョンセ制度

シブラ−ピュセル ドロテー

韓国の独特な制度「チョンセ」

改行マークお話を伺って、 まずチョンセ制度にびっくりした。 そんな大金をどうやって準備するのだろうか。 けれども、 説明を聞いてみると、 それなりに理屈が通っている面もあることがわかった。 住宅を投資用に購入する大家は、 借家人にもらった資金(チョンセ)を使って別の住宅を買うことができる。 一方、 借家人は月払いと異なり、 引っ越しで家を退去する際、 以前支払ったチョンセ金は全て返還される。 このような点で、 チョンセ制度はお互いの利益となる。

改行マークこの制度はおそらく、 次の借家人が容易に見つかる場合や、 景気のいい時期だとうまくいくかもしれない。 しかし、 経済危機の今日、 この制度の問題がいろいろと浮かび上がってきているようだ。 契約期間が終わって家を退居する時に次の借家人が来なかったり、 チョンセ金が下がってきた場合、 あるいは大家が破産した場合には、 チョンセを返還できなくなってしまう。 そうなったらどうなるのだろう。 数十%まで戻る賃借保険制度もあるとのお話だったが、 数十%ではなかなか厳しい。 さらに、 大金のチョンセを預ける大家が破産しては困るので、 家を借りる前に、 家主の登録や貯金を調べたり、 あるいは戸建住宅の場合には同居となる大家の家族構成を聞いたりすることもあるという。 他人の銀行口座を調べることなど、 フランスや日本では、 考えられないことであるように思われる。

改行マークまた、 仮に景気がよくても、 人気のある地域では、 チョンセは周辺地域の価格に応じて例えば2倍になる可能性もある。 このような場合、 契約期間の2年が経っても住みつづけようとしている借家人は、 新たにチョンセを払えなければ、 立ち退かざるを得ない。 この制度は、 借家人にとっては厳しいと思った。


チョンセを払えず月払いに“落ちる”

改行マークチョンセは賃貸住宅全体のうち、 ソウルでは約70%を占め、 残る30%が月払いとのことだ。 韓国では、 借家人は月払いよりチョンセを好むという。 なぜなら、 月払いだと、 お金は戻ってこない。 また、 月払い住宅の多くは、 廃れた地域に立地し水準が低い(賃貸世帯の平均使用面積は13坪が、 月払いの世帯は7ー9坪である)。 経済危機により、 チョンセ金を払えなくなった世帯がそういう地域に集住すればするほど、 水準はますます低くなるのではないだろうか。 しかも、 低所得層世帯の住居安定のために1980年代初期から公的な賃貸住宅が建てられてはいるが、 その数は相対的に少ない。 こういったことは、 特定の地域がゲットー化してしまう最初のステップにならないだろうか、 危惧してしまう。


一つの住宅に複数世帯、 我慢できるの?

改行マークまた、 住宅ストックの不足に起因するのか、 あるいは伝統的建築がそうであるのか、 その原因は不明確であるが、 韓国の賃貸世帯のうち、 戸建住宅でもアパートでも80%は2ー3世帯が一つの住宅に同居しているということには驚いた。 韓国の住宅形態は、 戸建住宅が47%を占めているが、 一戸建て全体を借りるのが難しい世帯は、 1部屋を借り、 大きい一戸建ての場合は10世帯が住むこともあるという。 フランス人の私にとっては、 同じ家族や親族世帯であればまだ考えられるが、 全く見知らぬ方々と同じ住宅に住むのはちょっと困ると思った。 また、 複数の世帯が一緒に住むと、 当然音の問題などがあるはずだ。 韓国人は、 生活騒音に慣れたのだろうか、 それとももともとあまり気にしないのだろうか。 韓国社会では、 フランスとは違って、 人間関係が随分親密だとうらやましく思う一面もある。

改行マーク韓国人のほとんどは、 アパート・マンションの購入を目指しているという。 韓国は寒い国なので、 一戸建てより暖かく、 または防犯の面から考えればより安全なアパートの方が人気ある。 それだけでなく、 ケーズによって違うかもしれないが、 一戸建ての多くは大家と同居し高密度なので、 近代的なプライバシーを許すアパートの方がむしろ望ましいと考えられてきたのだろうか。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


お申し込みはまち居住研究会


(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

まち居住研究会ホームページへ

学芸出版社ホームページへ