また、 自分の住む街を奇麗に見せたい気持ちは理解できるものの、 ドイツの都市では特に建物の外観に関する規制が厳しいのが印象的である。 そして街によっては、 窓に花を飾るのが義務づけられている所もあるという事実には驚かされる。 街全体の統一された美的外観を守るために、 共同体の構成員のやるべきことを法規、 即ち社会的な合意で規定していることに、 ただ感心するのみだ。 しかし、 何故パラボラアンテナが問題になるのか理解できない。 ドイツの街並みでは、 パラボラアンテナが見苦しく見える様だが、 日本や韓国ではまったく問題にならないのは何故なのか?
韓国人の目からみたドイツの賃貸借事情
李 昶淑
あまりにも細かい!住まい方のルール
韓国人の私から見れば、 ドイツにおける住まいの話で最も印象に残ったのは、 住まい方のルールの厳しさである。 特に音や臭い、 美観に関する規制が厳しいようにみえる。 例えばカーペット叩きの時間帯まで文章で細かく決められていることには驚いた。 また、 この厳しいルールを皆きちんと守っていて、 トラブルがあった場合には、 すぐ警察が呼ばれるというのも面白い。 韓国では、 こういう問題は、 大体共同生活の人々の常識に頼ることはあっても、 わざわざ文書で明文化されたりはしない。 伝統社会から近代、 及び現代社会に移行した歴史が浅い韓国では、 昔からの共同社会の名残が残っているので、 近所付き合いや人間関係には(形のない)道義と徳が重視される。 むろん、 マンションで夜間に子供が部屋の中を走り回ったり、 床を叩いたりすると、 警備室を通して文句を言われたりもするが、 マンションに住む人々が守るべき(明文化された)規制は殆どないと言ってよい。 ドイツで、 この様に生活ルールが細かい所まで決められているのは、 長い都市化の歴史の中で積み重ねられてきた生活文化によるものであると思われる。
借家人と家主の力関係は平等
ドイツでは賃借人と家主間のトラブル等がたびたび訴訟に持ち込まれるため、 年間120マルクの会費を払うことによって弁護士保険に加入できる賃借人のための組織として「ドイチャー・ミーター・ブント(店子協会)」や、 細かく裁判の判例が紹介されている「ミーター・ツァイト」という雑誌が出版されている。 また敷金の管理を、 賃借人と家主が共同名義でつくる特別口座(両者のサインがないと出し入れできない)で行うのも非常に印象的だ。 金銭のトラブルを防ぐ為には、 合理的な制度ではないかと考えられると同時に、 賃借人と家主の間に完全と言えるほどの平等関係が伺える。 これらのことから、 賃貸住宅での暮しが一つの文化として確実に定着している様子が伺える。 しかしドイツでは、 法や規則があまりに細かく決められているため、 そのルール以外に問題が起きた場合は、 また新たな規則が必要になり、 規則は益々増えるのではないかとも思われる。
笑うに笑えない文化の差
世界中で国際化が進められ、 外国人と隣り合わせで暮らす機会が多くなりつつあるが、 それぞれ異なる文化的背景が原因となって、 トラブルが起こる事が少なくない。 文化的な差異がやっていい事といけない事を区別する基準となることもあるらしい。 例えば、 魚を焼くことがドイツで問題とされるのは、 ドイツ人が魚をあまり食べないからであろう。 日本人ならば、 お隣さんが魚の匂いを出しても、 自分も魚を焼く事があるので文句を言えないだろう。 韓国人のキムチの臭いが、 世界中の都市で問題となっているのも同じでことである。 (もちろん食文化の差もあるが、 その文化への慣れや好き嫌いによる部分もある)。
日本ではマンションのバルコニーに布団を干している光景をよく見かけるが、 ドイツ人の目には、 それがどのように映るのか知りたい気持ちになる。 同じヨーロッパでもイタリアでは、 マンションのバルコニーで布団を干すのが普通であるように記憶しているが、 これもやはり文化の差と言うしかないようである。
共存というのは何処に……
最後に、 アパートに外国人が多くなり、 騒音や食べ物の臭いがひどくなると、 ドイツ人が引っ越してしまうという事実にも注目したい。 アメリカ、 特にニューヨークでも白人居住地に黒人が移住して来て、 周辺に黒人の数が多くなると、 白人が引っ越してしまうと聞いている。 ロサンゼレスでも、 世界中からの様々な人種がそれぞれの地域を分け合って居住しているらしい。 今まで白人だけの社会であったヨーロッパも、 今後のますます活発化される国際交流によって、 いずれは多様な人種による社会に変わらざるを得ないと思われるが、 ドイツの都市もニューヨークやロサンゼレスと同じ道を歩む様になるのか、 今後に注目したいと思う。
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