昨年夏、 金沢祐吉さんの発案によりマンション調査班(チーフ:金沢祐吉 補佐:太田多圭子・山本重幸)が組織され、 マンション管理組合という立場から、 大久保の分譲マンションにおける外国人居住問題への取り組みを調査しようということになりました。 炎天下の8月、 まさに汗のにじむ調査を実施した金沢さんの報告を基に、 調査結果の概要を紹介します。
なお近年大久保では、 外国人にも日本の生活習慣がだいぶ周知され、 トラブルは以前に比べれば減少傾向にあるようです。
国籍別/ 韓国 122戸
その他に、 1/3以上のマンションで問題として指摘したのは「夜友人と騒ぐ(17棟)」「友人と同居(17棟)」「ゴミ・タバコのポイ捨て(16棟)」、 「共用部分の使い方(15棟)」「他人に又貸し(15棟)」「無断退居(13棟)」「無断入居(12棟)」「その他の騒音(11棟)」「ペット飼育(11棟)」であった。 また「特になし」というマンションは2棟だった。
外国人の中には、 日本語による会話はできても読み書きは苦手という人もあり、 生活ルールの伝達・周知が困難な場合もある。 管理組合として、 これまでにとられた対応を、 以下に列挙する。
外国人といってもいろいろな人がいますが、 大久保は職安通りを挟んで歌舞伎町に接していることもあり、 飲食サービス業などに従事する外国人の寮としてマンションの一室が使われることもあります。 外国人居住者によるトラブルがたびたび起こるのは、 日本の生活習慣をよく知らず、 言葉も不自由であることに起因していることが多いのではと推察されます。
外国人が日本の生活習慣を理解することで、 トラブルがなくなれば、 相互のより価値ある異文化の交流が、 さらに容易になるのではないでしょうか。
管理組合としての今後の対応方策として、 次のような提言をしたいと思います。
また生活ルールや使用細則事項の各国語版の整備や、 新しい外国人入居者が疑問点を相談できるよう、 窓口や助言者を設けておくとよい。
分譲マンションにおける外国人居住に関する調査結果の概要
過酷な調査に挑んだ三人組(左から太田さん、金沢さん、山本さんです)
調査の背景
大久保のように都心部にある分譲マンションでは、 区分所有者が自分では住まずに他人に貸している(転貸)事例がたくさんあります。 アパートや賃貸マンションの場合は、 家主さんが一人なので自分の考えに基づいて入居者を選んだり管理をすることができます。 しかし分譲マンションの場合は、 例えば50世帯のマンションで転貸している区分所有者が30人いれば、 ひとつのマンションの中に30人の家主さんが存在することになります。 それぞれの家主さんが、 別々に仲介業者を通じて人に貸すので、 マンション全体として同じ基準で入居者を選ぶことができません。 中には、 無責任な区分所有者や仲介業者もいるので、 集合住宅での共同生活のルールを知らない人や守れない人が入居することもあります。 「分別ゴミを守らない」「夜間の生活騒音がひどい」「いつのまにか居住者が入れ替わっている」「住宅として貸したはずなのに店舗として使っている」などなど‥‥これらのトラブルは、 もちろん日本人・外国人の別なく起こり得ることです。 とはいえ来日したばかりの外国人の場合は、 日本人にとっては常識でも、 やはり教えてもらわないと理解できないこともあります。 それをきちんと伝達する義務は、 本来仲介業者や転貸している家主さんにありますが、 そこのところが不徹底なためにトラブルが発生し問題となるマンションが出てくるのです。
調査結果の概要
1。 調査の目的
分譲マンションにおける外国人居住に関し、 分譲マンション管理組合としての考え方、 対応状況等その実態を把握し、 グローバル化が進む今日において、 外国人とよりよい関係を築きながら、 良好な住環境を確保するための方策の資とする。
2。 調査の方法
外国登録者数が多い新宿区大久保およびその周辺地域で、 分譲マンション外国人居住研究会が1994年12月から1995年3月までに行った調査資料*を参考に、 管理員がいる分譲マンションを対象とした。 管理組合役員を対象に調査票への記入を依頼しヒアリングも行ったが、 実際には、 管理員や管理会社が調査票に記入した例が過半数を占めた。
内訳 大久保1〜2丁目 27棟
百人町1〜2丁目 3棟
北新宿1丁目 2棟
管理員 12棟
管理会社 4棟
3。 調査結果
3-1。 外国人の居住状況
外国人入居戸数 272戸(全30棟1695戸の16%に該当)
中国・台湾 71戸
その他 18戸
不明 61戸
3-2。 外国人入居に対する考え方
外国人の入居を無条件に認めているマンションは5棟、 条件を付きのマンションが13棟、 入居させないという回答は1棟であった。3-3。 外国人入居者への管理内容・遵守事項の伝達
3-4。 外国人居住者に関する管理組合としての問題
3-5。 外国人居住者による問題発生の頻度
問題発生の度合いを日本人入居者との比較で聞いた設問では、 「日本人より多い」(18棟)、 「日本人と同等」」(4棟)、 「日本人より少ない」(2棟)という回答だった。 日本人より外国人によるトラブルが多いと回答したマンションが半数以上あり、 外国人入居者に対する生活ルールの伝達・周知がなかなかうまくいかない状況が推察される。3-6。 これまでにとられた対応
(生活の指導・援助)
(管理規約に対する義務違反者への対応)
(入居の条件・入居時の対応)
3-6 今後の対応
上記以外に考えられる今後の対応として、 他に以下のような回答があった。
調査を担当した金沢さんからの感想と提言
区分所有者の積極的参加
区分所有者によるマンション管理に対する意識を高める必要がある。 管理組合として広報を発行することは効果があると考えられる。問題点の把握
居住者の苦情・要望などが管理員等を通じて管理組合へ伝達されるしくみをつくり、 管理組合として問題点を把握できるようにしておくことが必要である。外国人居住者へ生活の指導・援助
入居時には、 住まい方のルールを管理員や管理組合役員からよく説明し、 その後も理解してもらえるまで根気よく説明する努力が必要である。入居管理システムの整備
マンション全体の入居者選定基準が統一できるように、 良識ある不動産仲介業者を管理組合が選定し、 賃貸をしている区分所有者に協力を求めることが考えられる。管理規約違反者への対応
規則違反者には、 繰り返し根気よく注意するが、 それでも改善されない場合には、 管理規約の義務違反条項を整備し、 最終的には規約で対応する。改善事項の歯止め
新たな改善を行う場合には、 関連する管理規約、 使用細則、 業務要領、 管理会社との契約書等も併せて改定し、 明文化しておくことが必要である。管理会社への委託業務の明確化
管理組合は管理会社に対し、 管理を委託したい業務内容について契約書に明記し、 管理の徹底をはかる。
注
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*「大久保の分譲マンションにおける外国人居住と地域社会の変容に関する研究」1996 分譲マンション外国人居住研究会・まち居住研究会。
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