まち居住通信6
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まち居住研究会・定例研究会報告

 

 

ひとつ屋根の下で外国人と暮らす「J & Fハウス」の試み

 
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荻野さん
 
 まち居住研究会メンバーの荻野さん(写真右/イチイ産業専務)が、 今春から「J & F (Japanese & Foreigner)ハウス」という新たな事業展開をはじめました。 これはいわば“国際版コミュニティハウス”。 リビング、 キッチン、 シャワールームを共用する短期滞在型賃貸住宅です。 入居募集早々から満室御礼の人気商品となり、 荻野さんは連日、 新聞やTVの取材攻勢でひっぱりだこの多忙な日々を送っています。 さっそく、 このユニークな賃貸住宅を、 荻野さんのお話も交えながらご紹介します(報告=稲葉佳子)。


◆閑古鳥の老朽アパートが、 一転して超人気商品に

 イチイ産業という不動産会社で外国人へのアパートあっせんに取り組んできた荻野さんは、 仲介だけではなく、 もっと積極的に外国人が住めるアパートを提供しようと思いたち、 「J & Fハウス」という新商品を企画した。 現在、 埼京線の十条、 新宿3丁目の繁華街の一角、 東武東上線の志木で供給されている。

 

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十条の「J & Fハウス」平面図
 
 いずれも新築ではなく、 古い設備共同の木賃アパートや開店休業状態だった簡易ビジネスホテルなどをリニューアルした物件である。 借り手や宿泊客がいなくなり営業不振に陥っていた物件が、 外国人向けの滞在型住宅として衣替えしたとたんに、 引く手あまたの人気商品に生まれ変わったのだから、 これはスゴイ!。

 「J & Fハウス」の特徴は、 各室には専用設備はなく、 代わりに共用のリビング・キッチンやトイレ、 シャワールーム、 コインランドリーがあるという点だ。 この共用スペースが、 入居者同士のコミュニケーションの場として重要な意味を持つ。 だから設備共同のアパートや、 玄関ひとつで共同風呂の簡易ビジネスホテルは、 むしろうってつけの物件だったといえる。


◆リビングでは深夜まで楽しいおしゃべりが続く

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新宿「J & Fハウス」の内部。 共用のリビングキッチン
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個室
 「J & Fハウス」に入居するのに、 礼金や更新料は必要ない。 入居時の保証金2万円と賃料のみでOK。 滞在は原則として2週間以上で、 十条のハウスの家賃は5.5万円(1ヶ月、 水光熱費込み)、 新宿のハウスは7.5万円(1ヶ月、 水光熱費込み、 個室に冷蔵庫・TV・エアコン付き)。 個室の広さは4畳半〜6畳くらいだが、 部屋には布団もあるので家具を買いそろえる必要はない。 共用リビングには、 TV・大型冷蔵庫・電子レンジ・調理器具・食器類が備わっているので、 食事は自分で作って食べることになる。 夕方になると、 昼間は出かけていた入居者たちが戻ってきてリビングに集まり、 各国の料理をつくったり、 深夜までおしゃべりをして情報交換をしたり、 なんだかとても楽しそう。 この住宅にはホテルのようなルームサービスはないが、 住み込みの管理人がいて、 共用部分の清掃や全体のマネージメントもちゃんとやってくれる。


◆国籍も職業も多彩な入居者たち

 さて、 この「J & Fハウス」の住民たちはどんな人たちだろうか? 荻野さんいわく「予想外だったのは日本人の若者、 特に20代後半の女性の入居希望者が多かったこと! 外国人と日常的に接しながら英語を学びたいということで、 反響の6、 7割が日本人でした」というわけで、 「J & Fハウス」には外国人と日本人が、 ほぼ半数ずつ住んでいる。 外国人の方はというと、 十条の方はアメリカ人の大道芸人、 ホームページのデザインをしているウクライナ人など多彩だ。 一方、 新宿の方は家賃が少し高いこともあり、 英語の先生などビジネス中心の人が多いという。 5ヶ国語を話すフィリピン人の商社マンも住んでいるらしい。 学生は少なく、 年齢的には20代〜40代の仕事を持っている外国人が中心という。


◆交流やふれあいを求めている若者たちもいる

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十条にある「J & Fハウス」の共用リビング
 「J & Fハウス」の共通語は英語。 入居者の国籍は問わないが、 英語を話せることが前提条件となる。 日本人は国内留学的な発想で、 英語をマスターするまでここで暮らすという長期滞在者が多い。 実は、 住み込みの管理人も一風変わった人が志願してくるという。 例えば十条の管理人は、 スキューバダイビングの先生を目指してオーストラリアに行くにあたり、 もっと英語を勉強したいと思って応募してきたそうだ。

 荻野さんによると、 英語が勉強できるうえに部屋代はタダ、 経営までは無理でもマネージメントをしてみたい、 管理報酬は安くてもやりたい、 という奇特な人は結構いるらしい。 「住宅を提供する側は、 どんどん設備を専用化して、 きれいで設備がよくてオートロックがあり、 床がフローリングといった物件こそユーザーに求めれていると考えてきました。 しかしプライバシーを守ってあげると助け合い、 挨拶をする必要性もなくなってしまいます。 今の若い人たちの中にも、 お互いにふれあえる場所を求めている人がいるのではないか、 日本人にも異なるニーズがいろいろあるということに今回改めて気づきました」という荻野さんの話が印象的だった。


コラム
外国人ハウス、 マスコミに取り上げられる!!

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「外国人ハウス」を報じる新聞(2000.10.31朝日新聞夕刊)
 今回、 当社で扱う〈外国人と日本人のコミュニティーハウス〉がマスコミに取り上げられ、 多くの方よりお問合せをいただき、 その反響の多さに驚いてます。 大半の方は中古のアパート、 貸家もしくは寮などをお持ちで、 ほとんどの物件が空家状態の方でした。 このような方にとって〈古アパート・民家「借り手なし」一転、 不便でも格安・大歓迎 外国人ハウス 満室状態〉〈人気殺到なぞの中古アパート〉なるキャッチコピーは相当インパクトがあったみたいです。

 ついこの間まで入居者確保にさほど苦労したわけでもなかったアパートが、 あっという間に空家状態、 でもただ壊してしまうだけでなく何か“ちょっと”手を加えることで再生できないものか? こんな思いの人の目に飛び込んだのが今回の記事でした。

 使わなくなった自宅、 寮生がいなくなった会社の社宅、 バリアフリーに改装できなかった我が家、 福岡に建ててしまった民芸風の木造一戸建て(以前は外国人3人がシェアーしていた)、 誰も住んでない古アパートなど色々なケースがありました。 また多くの方が何らかの形で外国もしくは外国人に関わりがある人であったのも、 今回の特徴だと思います。 何か忘れかけた、 もしくは捨ててきた“人と人とのふれあい”“昔の長屋”が懐かしくなったのかもしれません。

(文=荻野政男)

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