まち居住通信7
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韓国人ニューカマー親睦団体「韓人会」組織化へ

 

 

 

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韓人会幹部の話に聞き入る研究会メンバー 左から安事務局長、金会長、趙副会長
 
 2001年5月20日、 「在日本韓国人連合会(韓人会)」が正式にスタートしました。 ここ数年、 新宿では韓国人ニューカマーによる活発な店舗の展開やニューカマーの増加がみられ、 地域は変わりつつあります。 こういった動きのなかで、 韓人会の今後が注目されています。 この秋、 まち居住研究会では、 韓人会の役員である金熙錫会長、 趙玉済副会長、 安昌徳事務局長を招待し、 会が作られた背景やこれからの意気込みを伺いました。 また韓人会の事情に詳しい中村憲一氏((株)ニュークリエィティブ編集長)にもゲストとして参加していただきました。


■「韓人会」がつくられた背景

 現在、 日本には第二次世界大戦前に徴用などで連れて来られた人をはじめ、 その他いろんな目的で日本に渡ってきたオールドカマーとその子孫でつくられた組織である在日本大韓民国民団(民団)と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)があります。 一方、 1980年代後半以降、 ビジネス、 留学、 就学、 国際結婚などさまざまな目的で来日しているニューカマーが急激に増加しました。

 韓人会創立の理由は「韓国人ニューカマーは、 オールドカマーに比べ、 ものをみる視点や価値観が異なることと、 また民団と総連は政治的な背景を理由にできた組織で、 なかなかニューカマーの一般僑民の生活までには手がまわらないのが実情である。 急激に増えてきたニューカマーがすでに18万人にのぼり、 それによる社会的な諸問題を解決し、 望ましい地域社会にしていくため」ということでした。


■組織化されるまで

 2000年9月に6人の有志が集まり、 その場で考え出されたのが「在日韓国人を考える会」でした。 実際には何年も前から韓人会の必要性を考えていたそうですが、 それが具体化したのは、 ここ数年、 職安通りを中心に韓国系の店が増えてきたからです。

 その後、 今年(2001年)1月17日、 韓人会の準備委員会が結成され、 5月20日に「在日本韓国人連合会」が正式に誕生。 発足当時は約400名の会員が加入していましたが、 8月27日には会員数が約4倍に増え1800人を超えたそうです。 会員は駐在員や経営者が多く、 ほとんどが日本に生活基盤を置いている永住者もしくは定住者で、 構成比は自営業が約30%、 教育や法律関係が約5%、 残りは会社員となっています。

 全国組織を銘打っていますが、 まだ地方支部はなく、 地方からの自発的な動きを期待しているそうです。 実際、 少しずつですがそうした動きがあるので、 いずれは新宿発の全国組織にしていきたいとのことでした。


■日韓両国の子供が未来の友達になれる教育を

 韓人会の会長らは、 これからの会の活動について以下のように話しました。 「これからは我々が生きてきたこの社会に還元し、 恵まれていない人、 苦しんでいる人、 この社会から疎外されている人達に、 未来への夢や希望を与えられる新鮮な組織にしたい。 決して利益団体ではなく、 社会の秩序を守っていきたい。 日韓両国は歴史的な問題を抱えながらも、 私達はそういう壁を破って、 ともに手を結ばないといけない。 我々は日本社会における持続的な活動を行っていきたい。 まちづくりのみならず、 人間社会の自由、 愛、 平和と活気づくりのために努力していきたい。 こういう人間社会を考える基本的な活動が我々韓人会の目的である」。

 会の最大の目的は会員相互の親睦と教育です。 「日本で生きていくために、 いい環境で生活するためには、 お互いに協力し、 そのためには我々が住んでいる地域住民との関わりを大切にして、 お互いに発展しながら向上させたい。 次に大切なのが、 子供たちの教育問題である。 新宿区若松町には、 韓国人学校があるので近くに住む人はいいが、 全国に韓国系の学校は4校しかない。 朝鮮総連系の学校は結構あるが、 韓国系の学校は少なく、 母国語を教える場所が少ない」と母国語教育の必要性を強調されました。


■「韓人会」は「商店会」的なもの?

 韓人会は新宿を中心にした韓国人の商店会的なものではなく、 日本全国の組織です。 会員は埼玉や千葉をはじめ、 山梨、 秋田にもいますが、 韓国人ニューカマーの居住者が多い東京圏(なかでも新宿がもっとも多い)に集中しています。 韓人会はまさに、 韓国人ニューカマーを代表する組織として結成されたのでした。

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今年も昨年に引き続き、大久保まつりで韓国の民族芸能が披露された
 というわけで、 具体的な活動については「新大久保商店街振興組合と接触する機会をつくって、 日本人とともに地域社会に貢献していきたい。 新宿の東口辺りは一日の乗客が340万人を超えているので、 格好の商圏になりうる。 職安通りや大久保通りは、 山手線、 西武新宿線と大江戸線も通っていて、 交通の大変便利な所でもある。 将来的には、 新宿に横浜のチャイナタウンのようなものができればと思う。 コリアタウン計画の目的は、 韓国人だけでなく日本人を含めて大きな商圏をつくることにある」とのことです。

 その上で「韓人会をつくったのは、 日本で住んでいるからには日本人と同じく日本の法律を守り、 ともに生きる方法を考えたいからだ。 会を通していろんな問題を解決し、 一緒に明るい社会をつくっていきたい。 コリアタウンは韓国人だけでなく、 日本人と手を組んでやっていきたい」と、 丁寧な日本語を使って話されたのが印象的でした。


■地域活性化の促進剤として「コリアタウン」化

 職安通りに韓国人の店が増えていくのを、 もっとも敏感に感じているのは地元商店街です。 大久保通りや職安通りにはいくつかの商店街がありますが、 韓人会と地元商店街との関係づくりに対して、 以下のような応答があったそうです。 「コリアタウン化は地域を活性化させ、 現在起きているさまざまな社会問題に貢献できることが予想される。 地域の商圏化により経済的な効果が得られ、 そういった面でもきちんと観光化して知名度を高め、 文化摩擦なども組織を通して解決することが可能になるだろう」。

 さらに中村氏からは「地元商店街はコリアタウン化に不安と懸念を持っている。 この街が韓国人の街になるのではないかという強い不安感を抱く人もいる。 だが、 現実には外国人顧客が8割という商店もあり、 日本人商店主の心中は非常に複雑である。 こういう状況の中で、 ようやくお隣同士ということで、 韓人会と商店街が挨拶を交わす機会を持てる運びとなった」という解説がありました。 韓人会の会長・副会長をはじめ事務局長も新宿区内の在住者であり、 コリアタウンの計画には日本人の協力が欠かせないと強調されましたが、 コリアタウンを作ることが最大の目的ではないと話されました。 (文責:朴賢珠)

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