県では県民部国際課が中心になって、 このような問題を解決するために平成12年度に宅建協会などの不動産業界団体や民団などの民族団体および外国人支援のNGO、 NPOと協力して「外国人住居支援システム」構築に向けて検討を開始しました。 こうして生まれたのが、 この4月に運営を開始した「かながわ外国人すまいサポートセンター」(以後、 サポートセンター)です。 ボランティア団体から生まれたのではなく、 このように行政官庁と業界団体の指導のもとに生まれた、 という恵まれた環境でスタートしました。
サポート店は外国人にアパートを仲介しますが、 トラブルが起きたときには中核店が間に入って解決していく仕組みになっています。 また、 地域の中で何か問題が発生すれば中核店が問題の解決にあたります。 実際やってみて、 非常にうまく機能していると思います。
サポートセンターの事務所は今年4月、 横浜のYMCAの2階にオープンしました。 相談窓口の対応時間は月〜土曜日の午後3時から6時半までですが、 作業を終えると7時ごろになります。 YMCAという民間施設の中にあるので役所のように時間の制約も少なく、 自由に場所を使えるのでセンターの拠点としては正解だと思っています。
スタッフは日本語をはじめ、 外国語(現時点ではスペイン語、 ポルトガル語、 中国語、 英語、 ハングル語)で相談に対応します。 電話での相談が多いのですが、 なかには直接訪ねてくる外国人もいます。 相談者の内訳は、 中南米出身者による電話相談が60%以上と圧倒的に多く、 県外からもかなりありました。 また、 東南アジアの留学生の来所も多数あります。
(1) 住居を探している。 どうすればよいか?
(1) については、 希望する居住地域、 部屋数、 同居人数、 家賃、 支払能力などを聞いた上で、 その地域のサポート店(不動産業者)を紹介したり、 経済的に困難な人には市町村や県の公営住宅への入居申請を勧めます。 その場合、 申請用紙の翻訳を作って記入方法も説明します。
(2) については、 通常の賃貸契約時には敷金、 礼金、 前家賃、 業者への手数料、 保険料などで、 家賃の5倍ほどの資金が必要です。 このときに礼金や保証金の説明をしますが、 なかなか理解していただけない場合も多いです。 書類としては、 パスポートなどの身分証明書以外に収入証明書や保証人の印鑑証明なども必要だと伝えています。
(3) の保証人の件は一番相談が多く、 切実な問題です。 当初はN社という保証会社とサポートセンターが契約をして、 登録しているサポート店に代理店になってもらうようにしていました。 保証会社は家賃(1ヶ月分)の30%の金額と引き替えに2年間保証するということでしたが、 だんだん審査基準が厳しくなってきました。 別のO社にもあたってみても、 以前は外国人にも寛容でしたが今ではほとんど審査が通らなくなりました。
そんなとき、 私たちは世田谷区が高齢者を保証する制度として福岡のS社という保証会社を使っていることを知り、 調査をした結果、 この会社との契約を11月よりスタートすることになりました。 この会社は身元引受け人がいなくてもビザがあれば1か月分の家賃100%で保証してくれますが、 併せてサポートセンターの紹介証明書がほしいということでした。 中南米からの人たちは案外お金で解決したいという部分があって、 身元引受け人に頼むよりも1か月分の家賃を払ったほうがいいと考える人が多いようです。 そういう民族性もあり、 この制度はうまく機能すると思います。
また、 開設当初はスタッフが業務に慣れないせいもあり、 保証人の有無や負担できる契約金の額を把握せずにサポート店に紹介して迷惑をかけましたが、 最近では業界団体などから講師を呼んで研修を行っていますので、 業務がスムーズになりました。
行政が運営している住居相談窓口などは、 相談に対して問い合わせ先は伝えられても、 問題の解決方法を伝えることはできません。 この点、 サポートセンターは「問題を解決していこう」というスタンスをとっています。 例えば、 退室時に部屋の使い方が悪いということで、 敷金のほぼ倍額を要求された人がいました。 この場合は実際に物件を見にいって「自然消耗ではないか」と訴えると、 敷金の範囲内で納まることがよくあります。 場合によっては小額訴訟をした場合もあり、 そうすると業者のほうが判例的に弱い立場にあることが多いので、 途中で折れることが多いです。 行政にはできない業者とのやり取りも我々の場合は自由にできるので、 行政サイドもNPO組織に仕事を移したいという気持ちがあるのではないかと思います。 サポートセンターが、 そんなNPOのよいモデルとなるような運営をしていきたいと思います。
住まいに対する問題を解決しながら、 それに付随する保険についても詳しく外国人の居住者に伝えていきたいと思います。 通常、 入居時に入る住宅総合保険は家財に対する保険、 自分が原因で火災を起こした場合を保証する借家人賠償保険、 そのほか個人の賠償保険がセットになっているケースが多いです。 その保険について南米人のためにスペイン語やポルトガル語の翻訳を作って、 保証される内容を詳しく説明しています。 例えば、 階上の部屋より水漏れがあったケースでも個人賠償保険などが役に立ったことがありました。 またブラジルの2世の人で、 自転車で帰宅途中に歩行者に衝突してケガを負わせたケースがありましたが、 入居時に入った個人賠償保険が使えることを教えて100万円以上の保険求償をしました。
こういうことは、 日本人でもあまり知らないことですが、 サポートセンターではこのように入居時に入る保険についても詳しく説明しています。 そのようなことをしていると、 私のところにも交通事故や労災関係のことでも相談があります。 今後、 入居の問題が解決すれば、 このような保険がらみの問題で困っている人を助けていく活動もしていきたいと思っています。
次は運営資金の確保の問題です。 日本財団の助成金、 神奈川ボランタリー活動推進基金21、 などに申請する予定です。 同時に賛助会員を増やす活動もしています。 私のいたヤクルト本社や商社など、 ブラジル関連で顔のきく企業にも働きかけています。
将来的には住まいをキーポイントとした医療、 教育などの他分野と連携した外国人サポートセンターとしてのNPO法人を立ち上げたいと思います。 大きな夢ですが、 「かながわ外国人すまいサポートセンター」が在住外国人サポートセンターのモデルとなって全国に広がっていけばいいな、 と願いつつ活動しています。 (文責=宮崎計実)
注目される「かながわ外国人すまいサポートセンター」の活動
南米仕込みのスピリットで外国人に対応する高橋さん
2001年4月に横浜にオープンした「かながわ外国人すまいサポートセンター」副代表の高橋修氏にお話をお伺いしました。 高橋さんはヤクルト本社勤務時代の長い駐在期間中、 特にブラジルやメキシコなど中南米の人々と深く関わってこられました。 その語学力と経験を生かして不動産業を営むかたわら、 南米仕込みのスピリットで外国人からの入居に対する問い合わせに対応されています。
■サポートセンター設立の経緯
神奈川県では日本在住の外国籍の人が中心になって「外国籍県民かながわ会議」という組織を作っています。 自分たちが実際に家を借りるときや、 子供たちが独立して家を借りる際の保証人になるとき、 外国籍のために大変な苦労を強いられたことがあったため、 最初この会議でも住宅問題が取り上げられました。 平成12(2000)年10月に知事に提出した最終報告で、 外国籍県民の居住支援について提言しています。
■居住支援とセンターの運営法
外国人居住支援のしくみですが、 まず宅建協会が中心になって、 外国人の住まい探しに協力する「外国人すまいサポート店」(以降、 サポート店)を募りました。 そのなかから宅建協会や全日連に「この店ならば問題ないだろう」と推薦を受けた業者181社に登録してもらっています。 サポート店は圧倒的に横浜に多いのですが、 外国語がわかるスタッフがいるとか、 地域で実績のある不動産業者11社が中核店として活動をしてもらっています(高橋さんも藤沢で中核店の活動をされている)。
■相談内容とその対応法
外国人からの相談内容は、 次の3点に集約されます。
(2) 契約時に必要な資金と書類は?
(3) 入居保証人がいないが、 どうすればいいか?
■NPOだからできること
サポートセンターの4月から9月まで半年間の実績としては、 355件の問い合わせがありました。 しかし、 なかなか追いきれず、 成約率は約30%です。 条件にあう物件があっても入居する本人が気に入らなかったりするために難しい状況です。 先にもふれましたが、 とにかく保証人の問題を解決しないことには、 外国人の住居の問題も解決しません。 半年間やってみて保証人の問題が解決すれば、 成約率も60%を超えることがわかりました。 この問題はたいへん重要なので、 今後もいろいろな方法で解決していきたいと思います。 しかし、 個人の貸主の場合はまだまだ保証会社を受け入れないケースが多く、 大きなネックになっています。
■将来構想と夢
今後はよりスタッフや通訳ボランティアの教育に力を入れていく予定です。 登録ボランティアは現在38名ですが、 この人たちに保険や不動産の知識を身につけてもらって、 クレームに対応できるような体制を整えたい。 この点については宅建協会から研修担当理事にきてもらって、 年3回ほど勉強会を行っていきます。 併せて、 多言語での資料提供や通訳による対応だけではなく、 ある程度業界で信用される事前審査や徹底した入居前の指導など、 トラブルや誤解を事前に阻止できるような体制を作りたいと思います。
*本稿は平成13(2001)年11月20日のまち居住研究会・定例会をまとめたものです。
■かながわ外国人すまいサポートセンターの業務内容
◎外国人にすまいを仲介してくれる不動産店の紹介
■相談の受付け=月〜土曜日(祝日は除く)15:00〜18:30
◎入居後、 言葉や習慣の違いから起こる、 外国人と大家さん・不動産店とのトラブルに関する相談
◎通訳ボランティアの派遣(スタッフの多言語対応=ポルトガル語、 スペイン語、 ハングル、 中国語、 英語)
◎9か国語(英語、 ハングル、 中国語、 スペイン語、 ポルトガル語、 ベトナム語、 ラオス語、 カンボジア語、 タイ語)による住宅関連書類(住宅を借りるときの言葉/住宅の借り方マニュアル/住まい方のルール/住宅の引っ越しルール/入居申込書/重要事項説明書/契約書)の提供
TEL. 045-228-1752 FAX. 045-228-1768
〒231-8458 横浜市中区常盤町1-7 横浜YMCAビル 2階
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