まち居住通信8
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まち居住研究会は何処へ行く?

 
 

 外国人入居支援の動きが活発化しはじめ、 外国人との共住に係わる問題やテーマに対して、 研究会メンバー自身が個々に係わる場蔓が生まれてきた現在、 まち居住研究会は、 「外国人の抱える住宅問題を知ってもらい、 ひとびとの関心を高め、 ともに考えてもらう」という初期の役割を終え、 次のステップに進む段階に入ったと考えます。

 ここで、 これまでのまち居住研究会の歩みを、 振り返ってみます。


『住宅時事往来』時代

 私たちの活動は、 1990年、 建築・まちづくり関係の研究や仕事に携わる仲間が集まって、 大久保を中心に外国人の住宅問題に関する調査(*1)に着手したことからはじまりました。 調査の動機は、 そもそも外国人は、 どんな住宅に住んで、 どんな生活をしているのだろう? 住宅に関して彼らはどんな問題を抱えているのだろう? そして彼らを迎え入れた日本人の側は、 この新たな居住者に対してどのような対応をしているのだろう? という素朴な疑問と好奇心からです。 このときの有志が残り、 1992年に「まち居住研究会」が生まれました。 以来1999年まで、 4〜5名のメンバーで『住宅時事往来?外国人の居住問題を考える?』という冊子を12号まで発行しました。 第1号から第6号では、 1980年代後半から急増したニューカマーズ外国人の住宅問題を中心に報告していますが、 第7号から第12号では、 外国人の定住が現実化するなかで、 取材の視点も、 住宅問題から居住問題・コミュニティ問題へと移行しています。

*1 『東京における外国人居住者の住まいと住環境に関する研究(1)(2)』(財)住宅総合研究財団 1991/1992 「研究年報 No18,No19」
  『外国人居住と変貌する街』学芸出版社 1994

大久保での地域活動時代

 取材や調査研究活動を長年続けてきた私たちは、 その間にたくさんの方と出会い、 地域のなかで孤軍奮闘しているひとびとを結びつけ、 私たちがそれまでに知り得た情報や研究成旺を地域に還元できないかと考えるようになりました。 こうして1998年から、 新宿区大久保地域をフィールドとし、 集合住宅での生活をひとつのモデルに、 日本人と外国人がともに暮らしていくためのルールやシステムづくりを考える勉強会を立ち上げました。 このとき、 地元のマンション管理組合役員、 不動産業関係者、 市民活動グループの人、 自治体職員、 社会学者、 留学生などに声を掛け、 研究会のメンバー構成は大きく広がり現在に至っています。

 この勉強会で見えてきたことは、 居住に関わる問題は、 外国人の問題と言うよりは、 むしろ外国人と日本人の別考えねばならない問題であること、 国際化に向けて改善すべき日本の制度やしくみがあること、 一方、 住まい方に関する問題は、 各国固有の文化や伝統・生活様式の中から生まれてきた部分もあり、 相互理解を深めていく中で議論していくことが大切である、 ということでした。 こうして2冊の報告書(*2)と、 日本人と外国人がともに住まうことをテーマにしたガイドブック『きょうから大久保』を作りました。

*2 『日本の住宅賃貸借システムの改善に関する提案』まち居住研究会 2000
  『海外の賃貸借事情』まち居住研究会 2000

 
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外国人居住をとりまく意識と現場の変化

 まち居住研究会の有志が、 1990/91年に実施した大久保調査をベースに10年後を比較した調査(*3)を実施しました。 この調査結旺から、 大久保では10年間で大きな変化が起きていることが明らかになりました。 10年前は9割の不動産業者が「外国人お断り」だったのですが、 現在では賃貸物件を探しに来る客の7〜8割が外国人ということで「外国人歓迎!」に様変わりし、 家主さんも外国人の受け入れに柔軟に対応していることがわかりました。 実際、 研究会メンバーの金沢さん(元管理組合役員)のマンションでも、 以前よりもトラブルが減少し、 大きな問題は起こらなくなっています。

 さらに、 かつては国際化によりネガティブなイメージで捉えられていた大久保の街も、 エスニック・レストランの進出、 サッカーW杯を経て、 最近では、 "多文化共生の街"というポジティブなイメージで捉えられるようになってきました。

*3 『東京における外国人居住者の住まいと住環境に関する比較研究』(財)住宅総合研究財団 2001  「研究年報 No28」


私たち自らの居住について考えるときがきた

 研究会活動がはじまってから約10年、 外国人の住宅問題の実状を多くの方に伝え、 日本の賃貸借システムの問題点の改善を訴え、 ともに暮らすためのルールを一緒に考えるというこれまでの活動は、 ひとつの節目を迎えたように思います。

 私たちは、 もともと「〈外国人お断り〉は、 〈高齢者お断り〉〈子どものいる人お断り〉と問題の根っこは同じ。 外国人の居住問題を考えることは、 すなわち、 私たち自身の居住問題を考えること」という基本姿勢のもとに活動してきました。 研究会の名称を「外国人居住研究会」ではなく、 「まち居住研究会」としたのも、 このような思いがあったからでした。 外国人居住をとりまく状況とひとびとの意識が変わりはじめているなかで、 研究会は、 本来めざしていた方向・・外国人も含めて多様な文化・価値観・ライフスタイルの人々によって構成される私たち自らの居住の問題について考える・・ということを、 あらためて活動目標に据えようということになりました。

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