阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク
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最後に

行政としての責任

中山

 行政の立場でここに座っているのはつらいのですが、 では最後にひとことだけ。

 宮西さんのお話の中でもちらっと触れておられましたが、 「どこまで関われるか」、 つまりまちづくりでの責任の取り方をどう考えるかが問われることになると思います。 NPOがリスクを背負っているというのは、 つまり責任体制が出来ているということです。 これがまちづくりの重要なポイントだと思います。 その点、 まちづくり協議会は集団指導ですから、 責任に関しては自覚が薄いのです。 だからやはり行政が出て一緒にやっていかねばならないでしょう。

 市民社会とは本来市民が責任を持つということだと思いますので、 市民が責任を持ってやってくれれば本当は行政がしゃしゃり出る必要はないと考えています。 我々はあくまで市民活動を側から支援する立場です。 ただ、 行政の権限でやるべきことについてはしゃしゃり出てでもやっていかねばならない。 その辺がまちづくりにおける難しい問題で、 NPOが単独でできるまちづくりと、 そうではないまちづくりがあることはぜひご理解いただきたいと思います。


住民が主権を握るべき

中村

 いよいよ地方分権の時代だということはみなさんも認識があると思います。 地方分権を私達の立場から見ると、 住民がどれだけ主権を握れるのかということになります。 そしてこれからは、 権限と責任、 財源の受け皿がきちんと整っている地区とそうでない地区で差が出てくると考えています。 それを組織に求めたり、 宮西さんの言う「お節介もの」に求めることもあるのでしょう。 「お節介ものが必要だ」というのはその通りだと思います。 しかし、 私達がやっていることはあくまでお手伝いなのであって、 目標は早く私達がいなくなって住民の方たちが主体的に物事を行うことです。 私達が提案するのはそうしたプログラムです。

 私達のNPO活動は、 そうした取り組みに参加した1人1人が「生まれてきてよかった」「住んでよかった」と思えるようにまちづくりを手助けすることです。 ですから、 幅広く地域も越えるし分野も越えて活動しています。 やればやるほど面白い世界があります。

 ただ一つ問題なのは、 このNPOを仕事として生活していくのは非常に厳しいことです。 厳しいながらもこれで生活している人もいますので、 これからはNPOの活動のパイ自体を大きくしながら、 社会の公共性を民間の手に取り戻す作業をしていこうと思っている次第です。


何のためにまちづくりをしてきたのか

森崎

 ここに参加しているみなさんはまちづくりに関係のある仕事をしている方がほとんどだろうと思いますが、 その仕事は何のために誰のためにしてきたかをぜひ問い直してみてはどうでしょうか。 それを真剣に問い直さないと、 将来のまちづくり像は出てこないと思います。

 また、 先ほどの私の話で下町の風情について触れましたが、 下町は何もいいことづくめだったわけではありません。 地震は下町がもろかったという防災上の恥部もさらけ出してしまいました。 まちのいいこと、 悪いことをどう考えるかを問い直さないと、 市民まちづくりから離れていってしまうと思います。


住民と行政の付き合いかた

野崎隆一

 みなさんどうもありがとうございました。

 私と森崎さんは昨日、 赤穂市にまちづくりの話をしに行ってきました。 赤穂市が行っているお城を中心にした景観形成型のまちづくりと坂越のまちづくりを案内してもらいながら、 その地区でまちづくりに携わっている方々といろんな話をしてきました。

 まちづくりの会長さんから立派なお話をうかがったんですが、 話の最後に「我々がやっていることは住民主体のまちづくりとよく言われるんですが、 実は違うんです」という発言が飛び出しました。 「行政が主体で、 それに住民が参加しただけなんです」とおっしゃっていました。 全国でいろんなまちづくりが行なわれていますが、 おそらく大半はこのように行政が発意してそれに住民が参加するスタイルなのでしょう。 住民主体のまちづくりはなかなか生まれないものだと思います。

 私は行政主体で成功したまちづくりは、 どうも腑に落ちないと思っています。 一つ成功するとそれがモデルになって、 新しい制度を作っていくという流れがあります。 しかし、 その事業で成功した地区は幸せでしょうが、 そこに隣接する地区はどうなるのか。 モデルであるからには、 それを展開しなければならない。 同じようなことをやってもらいたいと思ったとき、 してもらえるのかどうかが気になります。 住民主体のまちづくりと言うからには、 住民側がまとまって企画やアイデアを出していくプロセスが必要じゃないでしょうか。

 また、 この7月に兵庫県が主催している「ふるさと創生塾」と、 神戸新聞・コープ神戸が共催した「兵庫地域づくり会議」に出席しました。 どちらの会議でも大きな課題として出てきたのが、 「住民と行政はどうすればうまくつき合えるのか」ということでした。 参加していた行政の人からは「もう少し行政のことを理解して欲しい。 いいことをしたら気軽にほめてくれないと、 我々もやる気が出ないよ」という発言も出ていました。

 もう一つ課題としてあげられていたのが、 従来の地縁系組織と、 NPOのように新しく出てきたテーマを持って活動している組織の関係がうまくいかないということです。 地縁系の立場からすると、 自分たちが何十年とやってきた地域運営を新参者に渡すものかということです。

 この二つの問題は全国的にまちづくりの現場で常に出てくることで、 これから乗り越えていくべきものなのでしょう。

 小林郁雄さんはまちづくりの定義として「ある地域での、 市民による自律的・継続的環境改善運動」とおっしゃいましたが、 運動という点では私も同感です。 ただ、 環境だけでなく地域社会そのものを変えていく運動だという気もします。 そういう意味でも、 まちづくりとは人づくりでもあるんです。

 この場は「神戸市民まちづくり支援ネットワーク」という専門家の集まりですが、 やはり専門性を語るだけでは意味がない。 悪い言い方をしますと、 専門性の檻の中から外を見てるだけではまちづくりは出来ないと思います。 専門性を持ちながらも一人の市民であるという意識がこれから必要とされるし、 市民の目でまちづくりを見ていかないとダメでしょう。 市民も行政の担当者も、 地域に住む住民の一人だという認識でつき合っていかないといい展開をしていかないだろうと思います。

 みなさんのお話をうかがいながら、 こういうことを考えました。 まちづくりはずっと続いていきますが、 いい関係をどう築くかがキーワードになりそうです。 我々のネットワークは今後も頑張っていきます。 今日はどうもありがとうございました。

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