そこで、 新しい住まいや暮らしに対する不安や夢をみんなで語り合いながら、 入居前に、 入居者同士が知り合い、 入居後のコミュニティづくりのきっかけをつくる集まりを持つことになりました。 その集まりが「暮らしのワークショップ」です。
まずは、 住まい博士の延藤安弘先生による幻灯会から始まりました。
スヌーピーの絵本を読み解いたり、 ユニークな共同住宅の事例から、 共に暮らす楽しさについていろいろなお話を聞きました。 その後10人ほどのグループに分かれ、 新しい住まいに対する夢や期待、 不安などを話し合いました。 以下その記録をお知らせします。 』
第1回ワークショップの中で行った「自己紹介カード」の中から『新しい暮らしにこんな事を期待しています』という項目で書いてもらった内容を拾ってみよう。 この中には、 その時点の参加者の不安と期待が正直に現れている(図9-5、 9-6)
この中にはまだ入居できるかどうか分からない住宅に対する『不安』(どんな場所だろうか? 高層住宅は気が進まない。 新しい近所関係がうまくいくだろうか?)と同時に前向きの『期待』(花や畑を作りたい。 気楽に話し合いのできる場が欲しい。 子供や若い人と交流したい。 )が表明されている。 ここには、 お互いの意見を知り合うことが『励み』につながっていくプロセスがあるのではないだろうか?
そのいくつかの紙芝居を紹介しよう(図9-9)。 ここに見られるストーリーは、 いずれも人間関係の再構築がテーマであり、 『かくしてわたしは宮殿にうつった』というタイトルにみんなの気持ちがせつなく写し出されているように感じたのはぼくだけだろうか(図9-10)。
第1回のワークショップが終わった直後、 当日参加していた神戸復興塾の上田耕蔵先生からこんな感想をいただいた。
・まずワークショップ自体の質の高さである。 確かに全体を司会していた伊藤さんはまるでアナウンサーのように的確でかっこよかった。 見かけない人だな、 雰囲気から関西人ではないな、 と思っていたが、 彼があの夢紙芝居を企画していた。 ワークショップの方法を勉強するために広島など遠方から来ていたコンサルタントもいたという。
・公営住宅の当選者が長田とはかなり違う点である。 出席の1割ぐらいの方を除いて大半の人は中所得以上という印象だった。 場所が違うと暮らしも違う?
上田先生からこうしたコメントをもらってワークショップの内容を理解してもらっていることが分かりとても勇気づけられた。 そして、 ぼくにこうしたワークショップの多くのチャンスを与えてくれたのが全国の医療生活協同組合の施設づくりの現場であったことを神戸協同病院の上田先生に伝えたいと思ったのである。
時代に先駆けて参加によるデザイン、 参加による施設づくり、 参加による医療構想づくりに取り組んできた医療生協の実績は高く評価されるべきであろう。 その成果がこうして南芦屋浜で少しでも役立つことができ、 その現場を上田先生に見てもらうことができたのはぼくにとって予期せぬ喜びだった。
2 夢の宮殿づくり――第1回ワークショップ
『1997年5月25日、 第1回暮らしのワークショップが芦屋市立美術博物館で開催されました。 当日は、 南芦屋浜団地の入居予定者・入居希望者を始め、 関係者約70人が参加しました。
さらにワークショップでは、 お互いのイメージを出し合い共通の話し合いの枠組みを作るために「ビジョンゲーム」を行った(図9-7、 9-8)。
『このワークショップで驚かされたことは3つある。
・最後に洗練された会場である。 長田と違う。 あんなしゃれた博物館が長田にも欲しいな。 長田の夢芝居?』
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