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4 星空の映画会――『瀬戸内ムーンライトセレナーデ』

改行マーク第1回ワークショップ後の打合会の帰り道、 私たちは何か参加者の人たちが元気になるようなイベントを企画したいと話し合った。 誰かが映画会の提案をした時、 ぼくの頭の中に何かがひらめいた。 「そうだ!あの映画を仮設住宅で屋外上映したらきっと素敵なことになる」。 何か確信めいたものがぼくを突き動かし、 篠田正浩監督の「表現社」に上映の相談を持ちかけたことからこの企画は始まった。

 

『瀬戸内ムーンライトセレナーデ』応急仮設住宅屋外上映会のお願い
1997.5.7.

 私どもは、 南芦屋浜に住都公団復興本部が建設を進めている震災復興公営住宅に入居予定の被災者の方を対象に協同の暮らしづくりのトレーニングを進める実行委員会のものです。

 このたび、 暮らしづくりのワークショップを10月までに6回ほど予定していますが、 その流れの中の適当な時期に入居予定者および応急仮設住宅にお住まいの方を対象にして親睦をはかり映画で皆さんを元気づけることを目的として簡単な屋外イベントを行いたいと考えていました。

 そうしたおり、 篠田監督より「瀬戸内ムーンライトセレナーデ」のレイトショーの招待券を頂きました。 その映画を見て、 この映画を応急仮設住宅の敷地内で屋外上映するアイデアに思い至った次第です。

 芦屋市高浜町応急仮設住宅において約100〜200名の入居者を対象に、 同じ運命の船に乗り合わせた隣人達を再確認する意味を込め瀬戸内の夕べの一時を過ごすことができたら、 この映画にとっても素敵なできごとになるに違いないと思います。

 是非上映の許可を頂くようお願いする次第です。

南芦屋浜コミュニティ・アート実行委員会

コミュニティデザイン担当 伊藤雅春

 

改行マークそして、 本当に夢のような屋外映画会が実現した。 台風一過の少し肌寒い夕暮れ時に、 松竹の尽力により本格的な映写機と立派なスクリーンが設置された会場で『瀬戸内ムーンライトセレナーデ』の上映が、 震災のシーンから始まった。 すでに半分ほどの人が移転していってしまった仮設住宅では少し寂しい観客数だったとはいえ、 映画にこんなすばらしい力がひそんでいることを改めて発見することができた素敵な体験だった。

改行マーク時間と空間を超え今この現実が映画の中で流れ出し、 結果としてつらい現実の中にある心を癒し、 そして励ましてくれる夢のような時間を共有することができたのである(図9-15)。

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