公営住宅において、 今回のような入居予定者を対象とした見学会が実施されたのは初めての試みであるが、 これは「暮らしのワークショップ」で入居予定者との話し合いの中で実現に至った。
第3回暮らしのワークショップ(8月3日)の中でも、 現場見学会は実施したのだが、 当時は建設中でまさに建設現場を訪れたというにすぎず、 住戸内部はもちろん、 どんなまちになるのか思い浮かべるには時期尚早といった感じだった。
その後、 暮らしのワークショップは回を重ねていき、 11月9日に第6回ワークショップが「居住者の活動グループを育もう」というテーマで開かれた。
このなかで、 次の六つの課題別に今後の活動計画について話し合いがされた。
(1)現場見学会企画調整グループ
そこで、 12月と2月の2回に分けて実施し、 集合場所は後日調整、 見学条件は、 一人で歩けること、 見学しやすい服装で、 長靴持参、 申し込みは1世帯につき二人まで、 という内容が決められた。
その後、 住宅・都市整備公団が現場施工業者、 県、 市の担当者と日程等の調整をし、 コミュニティ・アート実行委員会事務局が窓口となって参加者を募集した。
芦屋市役所と芦屋市立図書館に集合して、 現地まで住宅・都市整備公団のマイクロバスで送迎するというスケジュールで参加者を募集し、 希望者の多かった日はバスを3便に増便したり、 観光バスを手配して対応した。
「お店はダイエーさんだけなの」「風がきつそうやね」「物入れが少ないから、 荷物が全部入るかなぁ」と多少の不安や不満の声は聞こえたが、 入居を間近に控え、 春から始まる自分の部屋での生活を思い浮かべ、 みんな希望や期待を口にしながら、 賑やかに見学している姿を見て、 見学会をしてよかったと思った。
8月の暮らしのワークショップで見学に行ったときには、 見渡す限りの荒野の中の砂ぼこりの舞う建設現場でしかなく、 参加者のなかにはショックを受け、 その後のワークショップにお誘いしても、 「もういいわ」「行けたら行く」と参加されなくなった人もいた。
しかし、 「今はほとんどできて、 きれいになっているから、 もう1回見に行ったらどうですか」と今回の見学会にお誘いした人たちのなかで、 「正直言って、 8月の見学会の後、 希望もなくなって、 南芦屋浜に行きたくなくなってたけど、 また希望がわいてきたわ」「一体どうなることかと不安だったけど安心した」「(8月の時点で)あんなだったのが、 こんな素晴らしい町になるもんやねえ。 みんな頑張ってくれはったんやね。 ありがとう」などの声を聞いたときには、 ほんとうにうれしかった。
案内をしてくれた担当者の一人の声を紹介したい。
この見学会につきましては、 もう少し時間を取って見ていただきたかったという点はありましたが、 私を含め、 見学に来られた方々にとっても良い経験であったと思います。 これから、 この南芦屋浜がより一層発展し、 住み良い町になることを期待しております」。
工事のスケジュールのきついなか、 しかも追い込みの忙しい時期に、 日曜日も返上で快く現場の案内をしてくれた現場の方々に、 この場を借りてお礼を言いたい。
10 建設現場見学会――ワークショップ番外編
(1)見学会開催に至った経緯
今回、 仮設で暮らしていた入居予定者の「新しく住むことになる部屋を見たい」という一番大きな声に答えることができたのも、 施工会社、 住宅・都市整備公団、 県・市の担当者をはじめ、 コミュニティ・アート実行委員会のメンバー全員の理解と協力があったからである。
(2)入居者顔合わせ会準備グループ
(3)自治会組織構成検討グループ
(4)園芸活動呼びかけグループ
(5)コミュニティテラス・プラザ利用検討グループ
(6)その他
この日の参加者の大半が、 現場見学会企画調整グループに集まったことからも、 希望の声の大きさがうかがえる。
(2)見学会の実施状況
12月、 2月実施分に関しては、 12月上旬の時点で入居が決まっていた方に芦屋市が案内状を郵送し、 図9-32のとおり申し込みがあった。 県営の第4次一元募集の入居者は、 2月の上旬に入居が決定したため、 2月の見学会に間に合わなかった。 そこで、 県営の第4次一元募集の入居者を対象とした見学会を急きょ3月中旬に開催した。
(3)見学会に参加した入居者の声
「わぁ、 きれいやなぁ」「広いなぁ」「きれいな家具を買わんといかんなぁ」「ベッドはここで、 テレビはこっちかな」と、 ある人は写真を撮り、 ある人は寸法をメジャーで測りメモしたりと、 みんな思い思いに部屋を見て回った。
(4)現場で案内をした担当者の声
何といっても、 この見学会は現場の建設会社の協力なしでは実現することはできなかった。 特に、 3月の見学会については、 見学会を計画してから実施日までほとんど日がなく、 また、 現場も竣工検査等で慌しい時期で、 実現できるかかなり危うい状況だった。
「『こんないいとこに住めるなんて、 嬉しいわぁ』。 私はこの言葉を聞いた瞬間、 現場の一職員という立場が頭の中から消え去っていました。 毎日見慣れた現場で作業し、 その物の良さというものが分からなくなっていたのです。 その時、 私も震災に会った方々のために少しは役立っているという実感が湧きました。
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