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4 既存不適格

 既存不適格とは、 建築基準法など建物に関する法律が改正されたことで、 以前は合法であった現在建っている建物が、 改正後の現行の基準・法制度に合わなくなっている状態をいう。

 建物を建築するときには、 建築基準法に決められているルールに従わなくてはならない。 例えば、 建物を建てようとする敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないし、 住居系の用途地域が指定されているところでは、 通常、 建物の1階の建築面積は敷地面積の60%(建ぺい率)以内でなければならない。

 しかし、 建築基準法は、 時代ごとの安全性や居住環境の考え方によって、 これまでに何度か変更されてきた。 現在の建築基準法は、 昭和45年(1970年)の改正が基本になっている。 このとき、 それまでは建物の大きさは、 高さの規制によって制限していたのが、 容積率による制限に変わった。 それまでは、 住宅地であれば、 20m(7階建てが可)まで建てることができたので、 建ぺい率が60%とすると、 500m2の土地では、 500×0.6×7=2100m2が建っていた。 この場合、 容積率だと420%になる。 これが容積率の制限に変わって、 住宅地では100〜200%の指定になると、 容積率がオーバーしていることになる。

 これは容積率だけでなく、 昭和51年(1976年)の日影規制の新設や斜線制限の変更、 高度地区指定などによる建物の高さの制限が変わることによって、 既存建物の高さが制限を越えてしまったりすることも発生している。

 また、 戦前長屋など古い建物については、 建物を建てるときの道路の条件が現在とは異なっており(接道不良参照)、 その結果、 被災の大きかったインナーエリアでは、 被災時に住んでいた住宅が現在の接道条件に合わない建物になってしまっているものが多い。


既存不適格建物の再建困難

 このような「既存不適格」の建物は、 現在の建築基準法にあわないため、 同じ敷地内で再建しようとしても、 被災前と全く同じ建物は建てることができない。

 今回の震災では、 古い市街地の高密度な長屋建ての地区や、 建築基準法改正以前に確認申請がだされたマンションの建て替えで、 この既存不適格が大きな問題となっている。

 マンション再建への救済処置としては、 震災復興型総合設計制度の運用により、 容積緩和等が行われ、 ある程度まで被災前の規模での再建が可能となったが、 次の建て替えでは同じ建物を建てることはできないのであるから、 既存不適格建築物の問題を先送りしただけとなった。 生活再建という点では意味があるが、 周辺の市街地環境への影響など問題を残している。

 マンションにくらべ、 長屋の再建など個々の敷地での自力再建については救済措置はない。 共同建て替えや地区でまとまって地区計画を決める等、 近隣の人々との協働がない限り、 公的支援や救済処置は用意されていない。

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