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震災前の第一勧業銀行神戸支店 |
震災直後の第一勧業銀行神戸支店 |
その中には、 元町の旧居留地・15番館のように重要文化財の指定を受けている建物や神戸の北野・山本地区のように、 法に基づき「伝統的建造物群保存地区」(伝建地区)の指定が行われ、 歴史的建造物として位置づけられているものだけではなく、 地域のシンボルとなっていた寺社、 阪神間モダニズムを今に伝える和館、 洋館、 灘の酒蔵地区の木造酒蔵、 元町の旧居留地の石づくりの近代建築物など、 全く指定を受けていないものも多い。
このような地域の歴史と文化を伝える建物でも、 個人住宅であったり、 民間企業が所有しているものは、 重要文化財指定や伝建地区内で重要建築物の指定を受けている建物と異なり、 自力再建しか道がなく、 同じものを再建、 修復するためには、 多大な資金が必要である。 これらの地域資源の再建は、 被災者の努力にたのむだけでは、 かなり困難な状況である。
北野・山本地区においてさえ、 異人館保全は困難な事業であった。 地区内約80棟の異人館のうち、 伝建による指定建物(法的に重要な伝統的建造物として指定されているもの)は、 異人館28棟、 和風住宅4棟であった。 これらについては、 修復にかかわる費用に対して助成率9割という手厚い支援があったが、 これも外装に関わる費用に対してのみであり、 内装や家具類については、 全く自力の再建となる。 また、 指定外の建物については、 自力復元しかない。
このため、 震災前から地区の落ち着いたまちなみを守る活動をしてきた。 「北野・山本地区をまもり、 そだてる会」では、 「異人館基金」の創設を進め、 異人館の保存と一般公開へむけて活動を行っている。
伝建地区内の建物についてもこのような状況であり、 その他の地区での歴史的建築物の保全は、 技術的にも、 また材料の調達などでも、 多くの面でコストが高く、 ほとんど不可能である。 修復には、 再建より費用が大きくなる場合も多い。 その結果、 酒倉地区で旧来の木造酒蔵が復元されるのは、 1〜2件程度、 阪神館の和館、 洋館については、 全く展望がない。 芦屋では、 洋館の保存運動が住民の中からでてきているが、 市行政に余力のない中で苦戦している。
すでに震災前からも、 建物の建て替え更新により、 神戸・阪神間の文化を特徴づけていた和館・洋館は減ってきていた。 その中で地域のまちなみや景観への関心の高まりから、 まちなみ保全への動きが進められてきたところであった。 しかし、 この震災で一挙に地域の生活文化資源を失うことになってしまった。
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