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震災直後のガレキと化した家々は、 半年後にはほぼ撤去され、 被災地に空地が広がり、 これまでのまちの姿が見えなくなってしまった。 神戸・阪神間には、 地域ごとに異なる生活文化があり、 長屋が並ぶ下町の風景から、 庭の木々が道に緑を提供するような大きな住宅がならぶ閑静な住宅街まで、 それぞれの生活文化に根ざした特徴あるまちなみが形成されていた。
ガレキの撤去に伴って、 まず目立ったことは、 これまであった生垣や庭の木など多くの敷地内の緑が、 倒壊した家屋の撤去のために、 一緒に捨てられてしまったことである。 間口が狭く、 宅地も狭い場合は、 残された緑を残して、 倒壊家屋を撤去することはできなかった。
生活の場から目に見える形で緑が消えていきつつある中で、 震災直後の調査により、 玄関脇の木や庭木が、 家屋の倒壊や延焼を防いだことがわかり、 安全な暮らしにとっての緑の重要性が指摘されたこともあり、 まず、 緑を手がかりとした復興まちづくりの支援の動きが現れた。
兵庫県立人と自然の博物館が中心になって、 垣根づくりから始める安全環境づくりのための生垣づくりパンフレットが作成され、 また、 阪神グリーンネットの活動として、 生垣づくりの出前が行われた。 香川県のどんぐり銀行にヒントを得たドングリネットの活動や、 その他多くのグリーンネットワークが立ちあがった。 1996年10月、 このようなネットワークが集まり、 住民参加の公園づくり、 自力再建の中での緑の確保、 生活レベルでの緑づくりへの支援と時間をかける景観デザインなど、 緑からの復興まちづくりが議論された。
これまで、 まちなみというと、 三宮や駅前の景観形成地区や旧居留地や北野など、 歴史的まちなみのような特別なまちなみが意識されてきた。 しかし、 まちなみは、 それだけではない。 日常の生活の場のまちなみが、 地域性を形成してきたのである。
被災地では、 これまでの生活風景であった身近なまちなみを失った。 住宅再建が進むにしたがい、 ようやくまちの風景が少しずつ見えてきている。 被災地での住宅再建には、 住宅メーカーによるいわゆるプレハブ住宅によるもの多い。 外装は塗装パネルに覆われ、 寄せ棟屋根がのる箱形の建物が多い。 これまであった、 木造瓦屋根はほとんど見られない。 1つ1つの住宅を見ると、 地域性がほとんど消失してしまっている。
このような中で、 これからの生活の場のまちなみは、 そこで生活する人々が、 1つ1つの家に生活を取り戻し、 それをお互いにつないでいくことによる地域の復興にかかっているともいえる。 これからの生活の蓄積が、 新たな生活風景をつくっていくことになる。
11 まちなみ
〈事例13)〉
工業化住宅ばかりが目立つ町並みが出現した1
工業化住宅ばかりが目立つ町並みが出現した2
工業化住宅ばかりが目立つ町並みが出現した3
工業化住宅ばかりが目立つ町並みが出現した4
工業化住宅ばかりが目立つ町並みが出現した5
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