神戸・阪神間には、 様々な生活文化の蓄積のある住宅市街地がある。 大阪の郊外住宅地として成熟した住環境が形成されたいた被災市街地東部の阪神間住宅地、 防災性には問題を残しつつも、 下町の風情とコミュニティに支えられた密集市街地、 地場産業と地域商店街が生活の基盤となっていた被災地西部の混在市街地などである。
大都市直下型の阪神大震災は、 このような既成市街地を直撃し、 兵庫県のデータによると、 約13万7千戸の住宅が滅失したと推定されている。 その後、 兵庫県下の被災地での97年3月までの累積新設住宅着工戸数は、 20万2千戸になる。 数字の上では、 住宅再建が順調に進んでいるように見える。 しかし、 これは必ずしも被災住宅の再建だけではないことが推定されているし、 住宅のタイプや建設場所の偏在もみられる。 東部市街地では、 新設住宅戸数は減失戸数を上回っているが、 西部市街地では、 再建は停滞している。
住宅再建については、 1)公営住宅等の大量供給による低家賃住宅の供給、 2)戸建て住宅再建・分譲住宅購入等の自力再建への優遇融資と利子補給が、 大きな枠組みとなっている。
被災地東部の住宅市街地は、 ほとんどが白地区域であり、 自力再建が基本となっている。 災害復興公営住宅は、 埋め立て地や工場跡地、 ニュータウンなど、 用地が確保できるところでの建設が進んでいる。 しかし、 これまで低家賃の住宅を供給していたインナーエリアでは、 公営住宅用地の確保が困難なため、 低家賃の民間賃貸住宅居住者が、 これまで住んでいた地区にもどることはかなり難しいのが実態である。
西宮のように共同住宅戸数(新築マンション)が大きく増大しているところもある。 特に東部市街地では、 新築マンションの建設が進んでおり、 被災市街地外からの人口流入がみられる。 インナーエリアでの低家賃居住者の公営住宅への移動とその後の土地利用の動向によっても、 これまでの住宅市街地の人口構成は変化していくことになる。
しかし、 まだまだ被災市街地には再建停滞空地が多く点在している。 また、 西部市街地では、 土地区画整理事業や再開発事業地区が多くのエリアを占め、 再建はこれからである。 市街地復興は、 住宅戸数の回復によるものではなく、 住宅市街地での生活再建の視点からみていく必要がある。
住宅市街地の再建は、 住宅戸数の回復だけでははかれないところがあり、 生活再建とあわせた長期的なまちづくりの中で、 もう一度、 地域ごとの生活文化を生成していくプロセスが続く。