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5 地区計画

 地区計画は1980年の都市計画法ならびに建築基準法の改正により制度化されたもので、 地区レベルで、 地区の整備目標を決め、 それに応じて、 地区施設の配置、 土地利用や建築物等についての方針・整備計画や制限を示し、 地区の実情に応じた計画を作っていくことにより、 生活環境の整備や保全ははかろうとするものである。 地区整備計画の内容は、 建築基準法に基づいて条例化することにより、 法的拘束力をもつ。

 例えば、 新たに土地区画整理事業や大規模な開発などによって、 道路や公園といった公共施設が整備された地区では、 地区計画によって、 街区ごとに建物用途の制限を決めて、 住宅の隣にスーパーや倉庫等が建設されることを規制したり、 また敷地の細分化を防止するために敷地面積の最低限度を決めたり、 さらには、 建物の壁面の位置や、 垣や柵を生け垣にすることを定めて、 快適な街並みの形成を図ることができる。

 また、 スプロール化が進みつつある地区においては、 公共施設の未整備や、 建物の建て詰まり等による環境の悪化を防止するため、 地区計画を定めて、 道路位置指定を行ったり、 計画内容に応じた開発行為や建築行為を誘導することにより、 計画的なまちづくりを進めることが可能となる。

 このように地区計画は、 市街化が進行していく地区、 市街地環境形成の計画化を積極的に図るべき地区、 現在の環境を保全していく地区等、 様々な地区で、 おのおのの目標に応じて、 計画内容を決めていくものである。


地区計画の構成

 地区計画は、 「地区計画の方針」と「地区整備計画」からなる。 「地区計画の方針」は、 地区計画の目標や、 その他の区域の整備・開発保全の方針を定めるものである。

 「地区整備計画」は、 地区計画区域の全部または一部について、 地区計画の方針に従い、 詳細な計画を定めたものである。 「地区整備計画」は大きくは3つの事項のうち、 必要なものを決めることとなっている。


震災復興と地区計画

 今回の震災からの復興にあたっては、 三宮地区の計画的都心再生を目的に、 平成7年4月28日に地区計画が都市計画決定された。 その後、 特に土地区画整理事業地区において、 事業とあわせた復興まちづくりを進めるため、 建物再建に関する地区独自のルールを決める手法として、 地区計画の検討・適用が行われてきている。

 地区計画では、 その目的や手法に応じて、 さまざまなルールを定めることとなる。 被災地では、 このルールは、 良好な住環境の誘導という側面とともに、 住宅再建を促進することにもつながっている。 例えば、 野田北部地区では、 街並み誘導型地区計画を策定することにより容積率と斜線制限を適応除外とし、 敷地が狭小なため再建が困難な宅地でも、 この地区計画の適用によって計画的に再建を誘導することが可能となる。


街並み誘導型地区計画

 現在、 地区計画には、 その適用の目的に応じて多様なタイプが創設されており、 街並み誘導型地区計画は、 良好な街並みを形成しつつ市街地の更新を図るため、 1996年に制定された。 計画の特徴としては、
といった3点をあげることができる。

 被災市街地においては、 野田北部地区が全国に先駆け、 この地区計画の適用を決めた。


神戸市インナー長屋街区改善誘導制度
(インナー長屋制度)

 この制度は、 密集市街地の建て替え促進を図るため、 神戸市がつくった制度である。 低層密集住宅地においては、 狭小宅地に建つ老朽化した既存不適格建物が多く、 建て替えを行うと、 現行の建築基準法の適用により、 道路中心後退、 建ぺい率、 斜線制限などによって、 従前と同じ規模の建物が建てられないことが多い。 これに対し、 地区計画等によって街区で建て替えのルールを作ることにより、 基準法上の規制のいくつかを緩和することで、 建て替え促進を図るものである。 被災地の密集市街地で、 再建促進を支援するしくみとして活用されている。

 まず建物の高さ、 壁面の位置、 敷地内通路等を、 建築協定(インナー長屋制度適用の場合は、 区域面積はおよそ500m2以上)もしくは地区計画(区域面積はおよそ2000m2以上)で決めることが、 制度適用の条件である。 インナー長屋制度を用いることによって、 以下の制限の緩和が可能である。

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