阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク
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3)震災後2年を経た「支援ネットワーク」−暮らしと住まいの復興へまちづくり専門家への期待

(株)計画技術研究所・所長 林 泰義

「きんもくせい」46号

 「阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク」(略称・支援ネット)の活動は、 「まちづくり専門家」の歴史の新しいバージョンを開いた。 とりわけ「市民まちづくり」の視点からは、 貴重な実績を残してきた。 「きんもくせい」はこの間の「支援ネットワーク活動」を次々に発信する貴重なメディアとして重要な役割を担ってきた。


震災後のネットワーク活動が開いた意味

 今でもはっきり覚えているのは、小林郁雄さんからのFAX。 震災後10日も経たない内に、 早くもコンサルタントや建築家の「復興市民まちづくり支援ネットワーク」が立ち上がりだしていた。

 「まちづくりの専門家」が、 何人も各被災地に迅速に飛び込んでいけたのは、 やはり震災前から様々な地域との関わりがあったのに加えて、 被災者の力にならねばと言う強い気持ちから止むに止められなかったからだと思う。

 この専門家達が、 バラバラなままでなくネットワークを作り、 お互いに支え合い、 自治体とのパートナーシップのもとで活動したことが、 今日の復興に大きな力となったことは、 既に広く知られている。 「まちづくりの専門家」の社会貢献として、 全く新しい方式を開拓し、 従来にない大きな成果を上げてきたと思う。


新しい専門家の登場

 従来の災害復興では区画整理、 再開発そして土木や建築設計と言う専門領域が重要な役割を担ってきた。 今回は、 これらの専門家に加えて「住民とともに復興まちづくり」を考える「まちづくりの専門家」が重要な役割を担った。 その専門的特質は「制度手法の眼鏡」を通して見るのではなく、 「住民の暮らしと住まいの再建そしてコミュニティの再生」と言う、 「生活の視点」からどうしたらニーズに応えられるかを考える所にあると思う。 「まちづくりの専門家」は、 住民と一緒に考えることを専門とするという意味で新しい専門家である。


「ハード」から「ソフト」まで一体のまちづくり

 この場合、 「まちづくり」は、 役所の縦割りで切り分けられた「ハード」領域のみの「街づくり」ではなく、 高齢者問題や、 失業者の再就職などを含む「ソフト」と一体になった「総合的なまちづくり」を意味している。 アメリカで言えばCommunity Developmentとほぼ一致すると思う。

 行政の縦割りの施策を住民の努力で横につなぎ、 多様なニーズに対応する「まちづくり」の意義が社会的に認められてきた。 松本地区で考えている高齢者の住まいと福祉サービスの拠点が一体になったプロジェクトはその一例で、 言うまでもなく、 真野地区や野田北部地区の住民活動は、 まさに「総合的まちづくり」である。

 住民サイドの復興まちづくり組織は、 より多様に発達し、 それとともに「まちづくり専門家」の役割も重要になっていくことと予想される。 近く成立が期待されている「市民活動促進法」は、 こうした動きを支える一つの力になると期待している。

(97年4月29日 記)

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