阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク
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14)都心(三宮地区)
地域問題研究所 山本俊貞
「きんもくせい」39号 |
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三宮地区計画(三宮南地区)の概要1
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三宮地区計画(三宮南地区)の概要2
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震災後、 地区計画が指定された「三宮地区」内では、 約560棟のビルのうち、 3割にあたる160棟余りが崩壊もしくは解体を余儀なくされるという被害を受けた。 そして、 1年9か月が経過した平成8年10月現在、 建物が撤去された敷地の内、 再建済み31棟、 工事中26棟、 計画・建設中約50棟である。 仮設建物・駐車場・資材置場等として暫定的に利用されているものをも含めると、 残る50余りの敷地では土地の活用方策が未確定である。
半数以上が現在(96.11)も更地のままである。 道路をはじめとする基盤施設の現状復旧が着実に進むなかで、 大規模な敷地では、 ビルを再建しても果たしてテナントが埋まるのかという不透明感により、 また、 小規模な敷地では、 もともと借地の上に自社ビルを建設していたケースも多く、 資金繰りとともに権利関係の複雑さが、 早期再建を困難にしている。 その背景には、 業務中枢機能の流出という神戸の従前からの傾向に加え、 近年の全国的な景気低迷がある。
一方、 行政では三宮地区における都心機能と市街地の復興を目指して、 震災後、 地区計画を指定するとともに、 小規模敷地の共同化を積極的に推奨してきた。
しかし、 現在までに三宮地区70haのなかで、 共同化について地権者間での検討が進められているのは10数件と少ない。 この要因としては、
(1)地権者は権利関係が複雑になることを忌避する。 とりわけ戦後の混乱期に苦労して入手した経験をもつ地主は土地に対する執着が強く、 自分の土地に自分の建物を建てたいとする意向が強い。 さらに、 借地権の問題が複雑に絡む。
(2)共同化によって生まれる増床部分の処分先が不透明である。
(3)共同化によって建築規模が大きくなり、 その結果、 駐車場の附置義務が新たに生じ、 レンタブル面積の大幅増加につながらない。
(4)行政による支援策として総合設計制度や優良建築物等整備促進事業が用意されているが、 これらによって得られる増床や補助金の額よりも、 駐車場の確保による経済的デメリットの方が大きいという認識が強い。
被災地の復興においても、 平時のまちづくりや景観形成と同様、 まちづくりの方向性を共有したうえで、 各々のビルがどのような役割を担いうるかという認識に基づく再建が、 重要である。 これを可能とするためには、 各々のまちなみあった市街地形成の指針を検討・調整・合意することの意味は大きい。
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