新甲南市場は震災により全壊した。 再建にむけては、 3月に従前の事業者による初めての総会が開催され、 震災後早い時期から取り組みを始めている。 コーディネーターとして専門家の参加を得て、 事業手法や事業の組立についての議論を進めた。 7月には仮設店舗が開設され、 10店舗が営業を始めた。 このころには、 ほぼ再建事業の枠組みを決めることができている。
再建事業は、 優良建築物等整備事業(建設省)を活用した等価交換による建物再建と、 高度化資金(通産省)の導入による小売店舗の共同化事業が基本になっている。 高度化資金の受入れのため、 新甲南協同組合を設立し、 セルフ方式の導入による共同化事業を進めることになった。 1階店舗、 2〜8階住宅(73戸)の建物を再建し、 従前権利者の店舗営業と居住を確保する。 余剰住戸は神戸市住宅供給公社が買い取り、 一般分譲する。 この市公社への住戸の処分金が、 再建資金調達の中で大きな役割を占めている。
この事業でユニークなところは、 市場の復興事業主体として、 会社(新甲南市場復興株式会社)を設立し、 権利者だけでなく、 広く一般に1株株主を募ったことである。 46名から出資を得ることができた。 この会社設立に参加した1株株主のうち、 住宅(公社分譲分)を希望する株主へは、 住宅分譲を優先的に行った。 市場は、 地域産業である。 再建にむけて、 地域の人々の参加を求めたのであった。
新甲南市場は、 「食彩館」として、 平成9年11月に再オープンした。 震災を期に、 廃業する人もあった。 また、 市場に必要な商品を充足するために新たな業種の店舗も増やす必要もあった。 その結果、 新たなセルフ方式の店舗となり、 かつての市場の店主は、 新しい店の共同事業者となった。
これまでは、 1つ1つの店舗が並ぶ市場形式であったが、 これからは、 これまでの事業者が共同して経営する新しい商業施設となる。 市場の時とは異なる商売の方法によって、 もう一度、 地域産業としての店舗のあり方を作っていくことが求められる。