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六甲道駅南地区では、 市街地再開発地区としての都市計画決定に伴い、 意見書の提出や住民による計画づくりを行ってきた。 特に地区の中央部に計画されていた1haの公園は、 様々な議論を呼んだ。
その後平成7年6月以降、 地区全体を4つに分けたまちづくり協議会が作られ、 7月には、 各協議会で選ばれた理事からなるまちづくり連合協議会が結成された。
29)六甲道駅南地区
環境開発研究所 有光 友興
「きんもくせい」13号、 27号、 47号
六甲駅南地区まちづくり連合協議会区域図
六甲駅南地区まちづくり連合協議会組織図
六甲駅南地区まちづくり連合協議会活動記録
住民が決めた公園・道路配置案 |
基本計画会議−環境デザイン部会での検討案 |
(2)「考える会案(公園分散配置案)」の果たした役割
まちづくり協議会が発足する前、 神戸大学児玉の先生と研究室の学生が支援して住民50人程度による「六甲南地区の新しいまちづくりを考える会」の計画案がまとめられてきた。 まちづくり協議会で、 公園の大きさ・配置を中心とした5.9haのまちづくり案を議論していこうとするとき、 この案は代替案の1つであると住民(各ブロック役員会には考える会のメンバーがリーダー的役割で数名づつ参加されている)も、 コンサルも考えていた。 この案自体が役員会で俎上に乗ることはなかったが、 街区ごとに小規模な広場を分散配置する案として議論した。 結果的には、 街区内広場を公園と同じ公共施設と見ることは難しく広場部分の土地費は再開発施設建築物の床価額に含まれるという点で、 自己負担額を限りなく小さくしたい住民の総意と異なり、 採択されるに至らなかった。 けだし、 この案は、 都市計画決定案と対比する時、 そのやさしさ、 人間らしさ、 手作りの街らしさ、 暖かさが感じられるものであった。 住民の望む街のイメージとして大切にし、 まちづくり案に反映させたいと思っている。
(3)公園の大きさについての論点
地域防災拠点整備を事業の目的の1つとしている施行者は、 近隣公園の最小規模の1 haを必要としているのに対し、 公園は必要だが、 当該地区の住民を対象とした規模でよいのではないかという住民の意見の中で、 昨年末まで約半年間公園の規模について議論された。 役員会での主な論点は以下のようなものであった。 a。 市の考えている地域防災の考え方、 b。 公園の規模と再開発ビルの床価額の関係、 c。 公園の平常時の使い方、 d。 公園の地下利用、 e。 公園の規模と再開発ビルの高さの関係、 f。 残存マンションの取り扱い
一方、 超高層住宅は望まない、 低・中層のみの街がよいという意見も度々出ていた。 そこで、 公園の規模単位で決めるのでなく建物の高さも合わせて街全体としてどの案を選択するかということになり、 次の6つの代替案(模型)をつくることになった。
公園の大きさと建物タイプの組合わせ |
その結果、 回収率40〜50%で1haの公園が防災上必要ならやむを得ないを含めて56〜85%となり、 深備5と桜備4は本年1月最初の役員会で1ha公園案を役員会の結論とし、 2月11日に全体集会に諮ることとなった。 桜5では、 建設省が1haに対して柔軟に対応することになったらしいという「概ね1ha論」が浮上したことと今後の施設配置に関する議論もあり、 少し遅れて3月17日に全体集会を行うこととなった。 それを受けて、 同日晩、 連合協議会が開かれ、 住民合意によるまちづくり案が決定されたのである。
(5)街区2(旧メイン六甲B・C棟+日本生命)の事業計画決定
街区2事業計画決定 |
(2)「基本計画会議」の設置とまちづくり協議会との関係
街区2の事業計画決定がされ、 本年中に管理処分計画が決まれば、 来春には六甲道駅南地区で最初の復興の槌音が聞かれる。 が、 この建物は33階建ての超高層であるため工期3年を要し、 入居開始は平成12年予定である。 少し時間がかかり過ぎではないか、 もう少し小規模で工期の短い低・中層住宅を建設し、 一部の方々にでももっと早く再開発住宅に入居してもらう方法がないかを施行者・コンサルで検討をし始めている。 今後も現実的課題を次々に解決していかなければならない。
(1)合意形式(案の絞り込み)の方法
2)これからの事業展開
(1)現在の協議会活動
公園・道路の配置計画が決まり、 5.9ha全体計画についてまちづくり協議会で議論すべき内容は、 主要施設(公共公益施設、 核となる商業・業務施設等)をどの街区に配置するかということと住宅棟の配置(高さと方位、 賃貸と区分所有等)が主なものとなってきた。 当面、 住宅権利者、 商業権利者にアンケート調査を行い、 住民意向を把握することになっている。 同時に役員会では、 超高層住宅の視察も行う。 6月末を目途に地区全体計画について連合協議会で一定の結論を出し、 その後、 各ブロック協議会でそれぞれの街区の基本計画を練っていくことになり、 年度末には事業計画決定するのが目標である。
基本計画会議は、 地元(まちづくり協議会)が地区全体計画を議論しているなかで、 4つのブロックの計画案が矛盾しないように施行者として全体計画の基本的な考え方を固めておくためのものである。 特に地区全体の環境デザインの考え方、 住宅供給の方針、 商業計画の方針等について議論を深めるものである。 基本計画会議のメンバーは、 学識経験者4名、 行政担当者11名、 コンサルタント7名で構成されている。 基本計画会議と環境デザイン部会の座長は安田丑作神戸大学工学部教授、 商業部会の座長は加藤恵正神戸商科大学商経学部教授、 住宅部会は平山洋介神戸大学発達科学部講師、 委員に児玉善郎産業技術短期大学構造学科助教授)の諸先生があたられ、 4月下旬に中間まとめがされることになっている。
3)まちづくり提案−街区別施設配置計画
公園・道路の配置案が連合協議会で決定したとき、 公園の規模は概ね1haということであった。 各街区の施設配置計画と残存マンション住民意向により最終形を決めようとするものである。 3つのブロック協議会は、 これを念頭に役員会、 住民集会を繰り返し合意形式をはかっていった。
3つの協議会でそれぞれ方法は異なるが可能な限り住民の総意が表れる努力がされた。
・役員会で施設配置計画案を一つに絞った後、 住民集会、 ニュースで周知をはかり、 アンケート調査を行い、 その結果を住民集会で承認し決定した。 (桜備4ブロック)
(2)合意形成過程での論点
・ブロック内現況街区別集会で4案について説明の後住民集会で2案に絞り、 最後は郵送による投票により多数案に決定した。 (桜口5ブック)
・住民集会(3回)、 ブロック内現況街区別集会(3回)、 ニュース(4回)を繰り返し、 計画案の周知と住民の不安・疑問に応え、 4回目の住民集会で投票により決定した。 (深備5ブロック)
・高層住宅への不安、 低層・南面住宅が住民の願望―床価額との関連で指定容積率一杯まで使うと高層にならざるを得ないことは理解されたが南面住宅を増やすこととなる。
・住宅床価格について増床負担金が極力小さくなるように権利者メリット
(市場価額より大幅低額)を要求―施行者(神戸市)が今後努力する。
・店舗共益費負担ができない―権利者向けに路面型店舗配置により共用部分を最小限にし共益費発生を押さえる計画にする。
・2つの協議会にまたがる街区6の計画―街区6調整会議の結果、 互いの住環境が同等になるような案を現行の2つの協議会が夫々決めることになる。
・公園の規模―南面住戸を増やすために街区6、 街区3の敷地を公園側に夫々5m, 3.6m拡げることになり公園面積は概ね1haの限界値9300m2となる。
・残存マンション―区分所有者に施行者(神戸市)が概略条件提示することにより基本的には再開発事業に参画することとなる。
・公共公益施設として灘区役所の誘致―昨年8月4日連合協議会で桜備4ブロックの街区4(国道2号線、 八幡線、 公園に囲まれた街区)に誘致と決定。
・駅から最も遠い街区5(国道2号線、 六甲新道、 公園に囲まれた街区)の目玉施設―スポーツ系の健康増進施設を低層部に誘致する方針。
4)まちづくり協議会のコンサルタントを担当しての所感
各協議会のまちづくり案の概要 |
模型 |
(1)地元住民の思考の変化
・第1期:まちづくり協議会が設立されるまで―突然の都市計画決定への反発、 行政への不信から聞く耳持たずの感情的対立が市の何回かの説明会により行政との話し合いに応じようという市民の良識が甦った。
・第2期:1ha公園を認めるまで―自分達のコミュニティだけでは必要の無い規模の公園を都市計画の名の下に受け入れざるを得ないことへの葛藤、 見返りを何に求めるか、 落とし所をさぐった時期。 公園の形をサイコロから羽子板に変えたこと、 規模を概ね1haとし縮小の可能性を残したこと、 この間まちづくり計画の参画経験を得たこと等を一応の成果とした。
・第3期:まちづくり提案まで―このままでは施行者の思うままになる。 自分達の不安はいっこうに解決されていない。 早期復興ばかりを優先していては自分達の要求、 願いの保証はないと復興へのあせりを一時棚上げしねばり(根気比べ)戦に向かった。 その結果、 南面住戸を増やすため公園を1haから9300m2に減らし、 住宅の権利床価額については原価積み上げ方式に街区間のバランスも加味し、 早期に発表するとの発言を得た。
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