阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク
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3 コレクティブハウジング
事業推進応援団

石東直子+吉川健一郎

コレクティブハウジング交流会

石東

 現在、 災害公営住宅に「ふれあい住宅」と呼ばれるコレクティブハウジングが、 10地区に341戸できています。 市営住宅としては神戸市営の真野と久二塚西の二つのほか、 尼崎市営の久々知があります。

 県営は、 宝塚市の福井、 尼崎市の金楽寺と神戸市内の5地区の計七つです。 合計341戸ですから、 4万8千戸の震災復興公営住宅の1%にもなりませんが、 新しい住まい方として居住者の方たちは悲喜こもごも頑張っておられます。

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『コレクティブハウジングただいま奮闘中』学芸出版社、 2000年
 私ども応援団は、 災害公営住宅の中でコレクティブ住宅をつくってほしいという提案から始まり、 様々な形で5年間活動してきました。 その詳しい報告は『コレクティブハウジングただいま奮闘中』という本にまとめましたのでご覧下さい。 現在はこの10地区を2ヶ月に1回ずつ巡回し、 各ふれあい住宅の協同室をお借りして10地区の居住者の有志が参加する交流会を応援団が開催しています。

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ふれあいネットレター6号
 その様子を「ふれあいネットレター」にまとめて、 全居住者に配布し伝えております。 先日9回目が終わり、 あと1回となりました。 交流会は、 全居住者500名弱くらいのうちの50人程、 約10%の方が参加しています。 ここでは「うちはこんな問題があるんや」「こんな横暴な会長さんがおるんや」とか、 また逆に「こんないいことしてるんよ」というようなことを報告し合います。 いろいろな問題についてお互いに意見を出し合い、 交換する場として、 良い評価をいただいております。

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神戸市のフルーツフラワー・パークのバーベキュー大会
 また去年の秋には、 普段交流会に出て来られない方と一度一緒にリクリエーションをしようということで、 110人ちょっとの参加者と神戸のフルーツフラワー・パークへバーベキューに出かけました。

 コレクティブというと、 高齢者の方ばかりのように思われますが、 子供さんのいる家族も参加してくださいました。 実際、 10地区のうち5地区は多世代共住型のコレクティブです。


各コレクティブの様子

久仁塚西ふれあい住宅

 久仁塚西ふれあい住宅は、 神戸市営で、 再開発の受け皿住宅の中にできたコレクティブです。 設計監理は森崎輝行さんで、 住宅自体は普通の災害公営住宅ですが、 各戸からそれぞれ面積を10%ずつくらい出していただいて協同の食堂、 厨房、 談話室をつくりました。 基本的にはどんな住まい方をしてもらってもいいのですが、 一人で部屋に閉じ篭ってしまう方が多いという災害公営住宅の現実を考えると、 コレクティブには「いつでも誰かと会えるし、 いつでも一人になれる住宅」という良い点があります。

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久仁塚西ふれあい住宅 路地広場 路地広場に花を植えた
 

 再開発ですので、 1階にはもともとこの地区で営業されていた店舗が入っています。 コレクティブは2棟で58戸です。 真ん中の路地空間に協同広場ができております。 ここは受け皿住宅ですので、 入居者が早くから決まっていました。 そこで入居待ちの皆さんと完成前からコレクティブ住宅について考えたり、 一緒にお花を植えたりして、 協同生活の準備をしてきました。 このようなことを「協同居住のトレーニング」と言います。

 路地広場も、 皆で自分たちの庭のように設えようと花を植え、 ドレスアップしています。

 98年の12月の入居から丸1年ちょっとたちましたが、 近くの二葉小学校の児童と一緒に七夕祭りを楽しんだり、 花祭りやひな祭り食事会などを開き、 2、 3ヶ月に1回は盛大な食事会をしております。

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黙祷 新年会 4人で合計333歳
 

 合計63人がお住まいですが、 72%が女性、 65歳以上の方が74%です。 下町はこんなに高齢化しているんです。 手芸クラブにはおばあちゃん達が居間のような雰囲気で集まっておられます。

 今年の1月16日には、 自治会総会を開いて震災でなくなった方々に黙祷を捧げ、 そのあと新年会を開きました。 そこで仲良しの4人の方の記念撮影をさせていただいたら、 合計333歳とのことでした。

 

真野ふれあい住宅

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真野ふれあい住宅外観 協同室 続きバルコニー
 

 ここは3階建てで29戸、 1階に協同スペースがあります。 バルコニーが続き廊下になっていて、 昔の路地を立体的に再現しています。 南隣には三星ベルトの工場が高くそびえるという住工混合の町です。

 1階の協同室では昨年まで月に5回、 地域の方もお呼びして昼食会など定例の集いが催されていました。 これは鷹取教会のシスターや地域の民生委員さんの協力で続けておりました。 神戸協同病院の訪問看護の方もひと月に1回ずつ映画会をやってくださいました。 いずれも過去形です。

片山ふれあい住宅

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片山ふれあい住宅
協同室でくつろぐ 地域の溜り場になっている
 

 県営で6戸の小さなコレクティブハウジングです。 1階に協同室があり、 一人亡くなって今は5人ですが、 とても快適にお住まいです。 強くまとまっておられるので、 次に入ってこられる方が馴染めるかどうか心配なくらいです。

 この地域も高齢者の一人暮らしが多い地域ですので、 この住宅が地域の方々の楽しみの場になっており、 カラオケ教室を開くなど、 自ら地域に手を広げておられます。

南本町ふれあい住宅

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南本町ふれあい住宅 アットホームに設えられた廊下 バルコニーのミニガーデン
 

 ここも県営コレクティブで、 22戸です。 ここでは1階にある共同の入り口で靴を脱ぎ、 中は上履きで歩きますので、 少し施設的な感じを与えますが、 規模としてはよくまとまっています。

 入居直後には、 協同室の備品の購入について、 応援団も加わり相談をしました。 こういう備品は、 復興基金でできた被災者向けコレクティブハウジング等建設補助制度の助成金で購入することができました。

 中の廊下に、 皆さんがそれぞれ趣味の飾りものを出してアットホームな感じにしておられます。

 ここは去年のお正月すぎに鏡開きをしましたが、 定期的ではなくても、 何かの折に集まれるのはとても良いことだと思います。 大体作るのは女性、 掃除は男性ということですが、 ここではジェンダーの問題がかなり解決されております。

大倉山ふれあい住宅

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大倉山ふれあい住宅
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大倉山ふれあい住宅のプラン
 震災時に建設中だった民間のマンションを県が買い取り、 県営の災害公営住宅にしました。 1階から4階までがコレクティブです。 もともとは1フロアに5戸の住戸がありましたが、 そのうち真ん中の一つを協同室にあて、 残りの四つはそれぞれ半分に割って8戸にしました。 単身者8人のコレクティブで、 バルコニーは各戸で仕切らずに続けております。 これが全部で4階分ありますが、 各階が一つずつのコレクティブという考え方です。

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初めての説明会に応援団が押し掛け支援 続きバルコニーに置かれた緑 菜園のようす
 

 県による初めての説明会に、 応援団は「おせっかいの支援ですが、 みんなでこれからの住まい方を考えるお手伝いをします」と押し掛けて提案しますと、 緊張されている方々のほっとされる笑顔に出会いました。 その後、 入居前の見学会にもご一緒しました。

 ここは特に3階の方々が積極的で、 誕生会などさまざまな行事を催され、 さらにボランティア活動までされています。 続きバルコニーや協同部分にも沢山の花々を置かれたり、 菜園を造ったりされています。

脇の浜ふれあい住宅

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脇の浜ふれあい住宅の庭と外観 脇の浜ふれあい住宅 大きな吹き抜けのある協同室。 暖房費が大変
 

 脇の浜には建物設計上に協同居住としての大きな課題があるようです。

十回目の交流会を迎えて

 さて、 交流会はもうすぐ10回目が終わりますが、 これから私たち応援団としては、 居住者が主体的にネットワークを作れるように支援をしていくつもりです。 居住者自身が協同住宅を育むための、 自律したネットワークづくりをもってほしいと考えています。 応援団は後方支援にまわります。


二つのガーデンクラブ

南芦屋浜の園芸クラブ

吉川

 ふれあい住宅とは異なりますが、 芦屋市の南芦屋浜と神戸市のHAT・神戸灘の浜に建てられた公営住宅で、 緑を介してできた二つのグループを応援してきました。

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南芦屋浜公営住宅の段々畑
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えんどう豆とさつまいもの二毛作を始める
 南芦屋浜公営住宅は県営、 市営の両方があり、 それぞれの中庭に段々畑が一つずつできました。 そこで入居前から県と市が共同で準備会を開き、 緑や花、 野菜の好きな人たちを集めて、 園芸クラブをつくってきておりました。

 その流れで、 98年の入居後すぐに、 土がやせていても育つさつまいもを皆で植えましたので、 その秋にはぎっしりと茂りました。 収穫の日は天気も良く、 メンバー以外にも小さいお子さんが出てきて手伝ったり、 お年寄りの方もまわりのベンチに腰掛けてふかした芋を一緒に食べたりしました。

 最初は単に有志の集まりとして始まりましたが、 入居して半年後に市営で、 1年後には県営でそれぞれ自治会ができ、 今では自治会の園芸部という位置付けで活動しています。 またこれからはさつまいもにえんどう豆を加え、 二毛作を続けていく予定です。

 メンバーは入れ代わりもありましたが、 県営、 市営それぞれ少しずつ増えて、 現在30名から40名です。 自分たちで年間計画を立てはじめ、 一人暮らしのお年寄りに切り花を送るなど、 色々な交流を深めていますので、 僕らもでしゃばり過ぎ応援団という時期は終えて、 後方支援に回る時期に来ているかと思います。

灘の浜ガーデンクラブ

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HAT神戸灘の浜ガーデンクラブ
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育てた苗を路地花壇に植える
 こちらは住宅設計の時点で路地花壇やプランターが各種用意されていましたので、 純粋なお花づくりのサークルとして「ガーデンクラブ」ができました。 県営、 市営、 公団住宅に横断的な組織で、 各自治会との関係はあまりありません。 その代わり、 ガーデンクラブの方々は、 ふれあいのまちづくり協議会が管理する地域福祉センターに参加されていますので、 地元では「お花を育てる人たち」として認知されています。

 花の苗は年に2回植えますが、 有志で集まったメンバー自身が楽しむと同時に、 地域のお母さんや子供たちにも参加を呼び掛けています。 地域の交流を深める意味ではまだ暗中模索の状態ですので、 僕たちももう少し支援していこうと思っています。

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