阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク
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2 六甲道駅北地区、 神前地区
―土地区画整理事業

UR都市・計画・設計研究所 岩崎俊延

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六甲道駅北地区位置図
 まずは事業地域の位置について説明します。 JR六甲道駅の北側に私たちが担当した六甲道駅北地区、 その北に後ほど説明する神前地区があります。

 六甲道駅北地区は神戸市施行による震災復興の土地区画整理事業です。 都市調査計画事務所の長島弘之さん、 コー・プランの細野彰さん、 そして私の3人がコンサルチームを組んで仕事を進めていますが、 代表して私が報告を行うことになりました。

 神前地区は組合施行による震災復興土地区画整理事業で、 こちらはチームでなく、 都市・計画・設計研究所が業務代行者として進めています。


六甲道駅北地区の区画整理事業

事業の流れ

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六甲道駅北地区・事業の流れ
 平成7年、 震災が起きた年の8月から11月に八つのまちづくり協議会が順次立ち上がりました。 そして平成8年4月にそれぞれの協議会でまとめた第1次まちづくり提案を神戸市に提出しました。 4月28日には、 八つの協議会が集まって連合協議会を結成しています。

 その年の10月には連合協議会が中心となって地区計画の要望書を神戸市に提出しました。 平成9年は、 各協議会から出された案を市の中でさばいて事業として走っていくための年となりました。 その間、 各協議会は第1次まちづくり提案を詳しく詰めて検討を重ね、 翌年、 平成10年4月に第2次まちづくり提案を市に提出しています。

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六甲道駅北地区の8つの協議会の構成
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都賀地区防災福祉コミュニティの組織概念図
 連合協議会は、 いろんな問題を各協議会が対等に話し合うための場として位置づけられています。 連合協議会の中には、 テーマごとに五つの専門部会があり、 これからの自治会のあり方を考える「自治会問題検討委員会」が後ほどプラスされました。

 99年には、 我々と協議会が呼びかけ人となって都賀地区全体の防災福祉コミュニティを作ろうということになりました。 けっこうややこしい問題を含みつつも、 今活動中です。

各専門部会の活動

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2000年1月〜4月の勉強会スケジュール
 今、 何をしているかですが、 今年の1月から4月までの勉強会のスケジュールを見てみますと、 月のうち半分ぐらいは夜間の勉強会があります。 これでもだいぶ楽になったほうで、 少し前までは毎日スケジュールが詰まっていました。 日曜日はたいていイベントがあります。

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協議会ニュース「六甲北まちだより」

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各町の住宅再建状況(住宅再建部会による)
 また連合協議会ができてから、 月に1回「六甲北まちだより」を発行しています。 今では36号を数えますが、 みなさんが全部の記事を書き、 1回も欠かさず発行しています。

 住宅再建部会では各町の住宅再建状況を調べています。 高校の先生をしている地元の方がコンピュータでグラフ化してくれました。 その調査で、 今年に入ってから急激に住宅再建のスピードが上がっていることが分かりました。

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市民救命士の講習会

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道路広場部会がつくった工事の進捗状況を知らせる掲示板
 また防災部会では市民救命士の講習会を住民主催で行なっています。

 道路広場部会では、 住民がひと目で工事の内容や進捗状況が分かるように、 工事現場の要所に手づくりの掲示板を建てました。

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六甲道駅北地区公園管理会の活動、 稗原町公園の掃除
 公園部会は「六甲道駅北地区公園管理会」を作りました。 いずれ地区の中に8千m²の近隣公園を始めいくつかの公園が出来る予定ですが、 自分たちで共同管理するために先行して管理会を作ったわけです。 公園ニュースを流し、 住民のみなさんに掃除や花壇づくりを呼びかけました。 鷹匠中学校の隣にある寿公園での「出前講義」に15人もの人が出かけ、 砂場の掃除の仕方を教えてあげたこともありました。 また毎週日曜日には公園の掃除をしているのですが、 今年の1月段階では参加者が延べ1千700人という驚異的な数字を達成しています。

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秋祭り

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防災福祉コミュニティによる防災訓練
 六甲道駅北地区では、 秋祭りを毎年行っています。 ほぼ地域の定例行事として定着してきたようです。 消防署も段々力こぶが入ってきて、 ブラスバンド演奏だけでなくハシゴ車まで持ってくるサービスをしてくれました。 防災福祉コミュニティでも防災訓練をかなり真剣にやっています。

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第3回復興まちづくり展
 春には復興まちづくり展が毎年行われ、 今までに3回開かれています。 部会ごとの発表で、 みんなに活動の様子を紹介しています。

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道路部会によるせせらぎの模型づくり

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六甲町線の現況道路
 区画整理事業では六甲町線に17mの都市計画道路を新設しますが、 住民から「せせらぎを作って欲しい」と要望が出ました。 それを実現していくために、 道路部会ではせせらぎの模型を作ってみんなで実験しました。 地元には様々な分野のプロがいますので、 5ミリの勾配で水が均質に流れるという高等技術を使った立派な模型(底には玉砂利を敷き詰めました)ができました。

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受け皿住宅の六甲住宅

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受け皿住宅である六甲住宅での「お帰りなさい会」
 地元自治会では、 受け皿住宅である六甲住宅で、 戻ってこられた住民を迎え「お帰りなさい会」を開きました。 地元自治会は実はそれまでなかったのですが、 受け皿住宅の入居者が先に自治会を作ってしまうと、 町が出来てから作られる自治会と分かれてしまうだろうということから、 先行して地元自治会を作りました。 この「お帰りなさい会」はけっこう好評でした。

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協議会と地元小学校の交流会
 また小学生にもまちづくりを知ってもらおうと、 協議会と地元小学校の交流会も開いています。

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六甲道駅北地区

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東西をつなぐ13mの生活・防災道路
 第1次まちづくり提案として出されたのがこちらの構想図です。 花園線をはさんで東側に8千m²の近隣公園、 西側にも小さな公園を作って、 その横には南北に走る16mの六甲町線が通っています。 しかし、 それではあまり防災効果があがらないということで、 灘小学校と近隣公園をつなぐような形で13mの生活・防災道路を入れることにしました。

 市から返ってきた計画図もほぼ住民の提案が通った形だったので、 第1次まちづくり案がほぼそのまま事業計画になっています。

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4.5m拡幅された道(六甲)

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改良される8m道路(六甲)
 今はだいぶ工事が進んでいるのですが、 たとえば狭い路地を4.5mにひろげた箇所ができあがってきたり、 8m道路に片側だけでも歩道をつけて、 側溝もきちっとした道ができあがってきています。 みなさんが見てもただの工事中の道路でしょうが、 私達は感激しています。

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花園線の拡幅工事
8m道路
6m道路に広げた後
JR沿いの道路
 

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地域開放型のゴミステーション
第1号で建った共同化住宅 共同化住宅の足元
第2号の共同化住宅
 


神前町2丁目北地区のミニ区画整理

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神前地区の震災3年後を写した航空写真

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事業の流れと取り組み
 神前町地区は、 ほとんどの建物が倒壊する大きな被害があいました。 いろいろな経緯があり、 震災の翌年平成8年1月になって神前町まちづくり協議会を設立しました。 そして、 最初の取り組みとして、 2丁目北地区の復興計画の検討を始めました。 検討開始から1年弱で事業計画・組合設立の認可にこぎ着けられました。 平成9年1月14日には「神前町2丁目北震災復興土地区画整理組合」を設立しました。

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計画前の様子

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神前2丁目北震災復興区画整理事業・事業計画
 神前町の中央部を南北に通る花園線という都市計画道路の東側に面する1つの街区の中(約5千m²)のみを対象として、 幅員4.5mの道をつくる計画です。 立ち上がりが早かったので事業もすぐに完成すると、 安易に考えていたのですが、 難しい問題が次々に出てきました。

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道路交差点上に建っていた家(神前)
 仮換地の指定の途中までは比較的早く進みましたが、 行政不服審査請求が1件出されるなど、 工事段階に入って停滞が続きました。 しかし、 できるところから工事をこつこつ進めると共に、 粘り強い工夫を重ねることにより、 昨年末から問題が次々解決し始め、 先の申請も却下されて、 この間まで工事できなかったところも一気に目処がつきました。 今年の夏には工事が完了する予定です。 震災復興の土地区画整理事業としては、 完成第1号になれるのではないかと思っています。

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2軒を一つにした家(神前)
 いろいろな工夫を行いましたが、 足が弱ってられる高齢者の建物移転で、 兄弟の2軒の建物移転を連棟で建てることにし、 移動負担を小さくする工夫をしました。 先にできた家に全員が移り、 「仮住居」にして、 元の家をつぶした後、 残りを建てて、 また移動してもらうという手間のかかることになりましたが、 ご兄弟だったことで円滑に実現しました。

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完成した道

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逆方向から道路を見たところ
 移転補償について、 ご理解得やすいように道路の線形を工夫したところもあります。

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老朽住宅があったところ(神前)
 また、 都(みやこ)会館という神戸市の施設横の道路も大変でした。 道路予定地にものすごい木造老朽住宅が建っていました。 ご病気の借家人がおられ、 家主の協力も得られず、 転出実現に困りましたが、 法律専門家や、 市の各方面の様々なご協力を得て解決できました。

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行政不服審査で争われた道

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建ちはじめた建て売り住宅
 とにかく、 今、 みんなで、 最終段階を頑張っています。 以上で、 六甲道駅北地区と神前町2丁目北地区についての報告を終わります。

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