8番目

《書店人はプロデューサー》

 書店の平台や棚は、 本の舞台である。 平台に積まれる本が主役であり、 棚にある本は脇役である。 どちらかがダイコン役者であるならば舞台は成立しない。 演劇で見られる主役と脇役の関係は、 そのまま書店の出来具合と同じであるといっても差し支えない。 いくら良い俳優を主役にしても脇役がダイコンであるならば、 その劇は決して観客の喝采を浴びない。 その逆もしかりである。 書店人とは、 本という俳優をいかに時代という台本によって演出することが出来るかという鍵を握るプロデューサーなのである。

 しかし現実は、 俳優は現在供給過剰で、 プロデューサーの仕事は多忙をきわめ、 安易なテレビ番組のように、 とりあえず視聴率をあげるために雑多な俳優、 使い捨てのタレントを使い安易な企画でその場しのぎの毎日が続いている。 だがそれを言い逃れにしてはならない。 数多いタレントの中から名優を見付け、 優れた脇役を配し、 時代という台本にコーディネートする、 そんな仕事が書店人の仕事である。 勿論観客の質は問題であるが、 良い仕事を続けることで、 いつの日か喝采の日が訪れる。 そう信じたい。 そう信じることで仕事が生きると思っている。

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