12番目

《お客様は神様か》

 新入社員なら研修会などで社長さんや上役から『お客様は神様だと思いなさい。 あなた達の給料はお客様にお買い上げ頂いたものの利益から支払われているのです。 決して会社から貰ったなどとは思わないように。 』というような主旨のお話しを聞かされたと思う。 全くそのとおりであり、 これを忘れて商売はあり得ない。 「だが」これはすべての真実ではない。 神様でない客はいる。 絶対にいる。 断じている。 100%いる。

 平台の上にある本の上に自分のカバンを置く奴。 読んだけど面白くないから返品したいという奴。 客注を受け、 発注し、 急いでいるからというので出版社に電話して大至急の手配をし、 入荷したからと電話をすると、 別の本屋で買ったからもう要らないと言う奴。 自分の欲しい本がないからと、 店頭で大きな声で店員を説教する奴。 自分の書いた本をセールスに来る著者。 書店を待ち合わせの場所にしているイチャイチャカップル。 書店の店頭では本を買う人だけが神様でありそれ以外は客ではない。 またすべての出版物を一点の品切れなく置ける書店はないのだから、 自分の店に置いていない本を求めにくる客も客ではないのだと思っていい。 客注をとる、 これはサービスの範疇である。 自分の店にある本に自信を持て。 そして自信たっぷりに陳列した本が売れた時、 それを買ったお客こそ、 神様である。 店先まで出て最敬礼をして見送っても余りある。

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