18番目
《店にある本とない本》
店の在庫商品をコンピュータに覚えさせて、 読者に「あります」とか「ありません」とかを案内させるシステムがある。 すこし前まで、 いや、今でもそうかもしれないけど、 この本はないなと判断したら『あいにく切らしております。 よければご注文を』というような案内をしていた。 「ある」「ない」を確認する作業は人間の記憶力が頼りだった。 これをコンピュータにさせる訳だけど、 店頭にない本をコンピュータが確定したところで、 ないものはないのだから、 読者にとってなんのメリットもない。 書店としては「ないのか」と変に安心はできるけど。 これで「ある」とコンピュータが表示したらどうするのだろう。 あればそれはそれなりにハッピーだけど、 あるものがないときこれは困るだろう。 それだったら、 はじめから「ない」と言ったほうが、 いさぎよいというものだ。 あるはずのものがないのは、 日常生活の中ではよくあることである。 このときはかなりストレスを感じるものである。 それが店頭で発生したら、 ちょっと心配してしまう。 「確かにあるはずなんですがねー、 ハハハ」とか言うのだろうか。
人間の記憶力には個人差と限界があるものだけど、 毎日棚を触っていたら、 ある程度は頭に残るものである。 頭の中で在庫の確認をせずに、 すぐにキーボードをたたく。 あるいはまったく棚を触らないで、 店頭に何があるのかをコンピュータに覚えさせてそれで安心、 というのであれば、 それは「書店という仕事」を放棄したことになるのではないかと思う。
今年ももう少しでおしまいです。 11月からスタートした「売れる書店はこうだ」も、何とか励ましのお言葉により、 ここまで継続させていただきました。 おもしろくて為になる話はこれからです。 来年もぜひともアクセスをお願いいたします。
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