20番目
《ガンバル返品マン》
商品を自主的に仕入れてそれを売る、 何を仕入れるのか、 何を売るのか、 すべては売り手にかかっている、 これが商売だ。 本は何にもしなくても、 配本されてくる。 常備という制度もある。 勿論自主仕入れもあるが。
ところで、 書店には大量に納品されてくる箱の陰で頑張る返品マンがいる。 朝から晩まで返品作業に専念する人のことである。 実に非生産的な仕事であるが、 実は書店では実に生産的な意味を持つ仕事なのだ。
本が100万円分入荷してくる。 50万円分売れた。 でも50万円が売れ残ったので返品を返すというのが返品率50%の世界だ。 そのまま返品を放置していると100万円の請求書が届き50万円の売上は全く意味をなさなくなる。 50万円の売上を確保するためには何としても50万円の返品を返さなくてはならない。 つまり返品マンの仕事は、 売上を確保する仕事なのである。 これがこの業界の悲しい仕組みである。 返品作業を一日でも怠ると、 とんでもない量の売れ残りが在庫として存在してしまう。 だから来る日も来る日も返品作業に明け暮れるのである。
返品率減少対策はもう何年も前から言い続けられていることだけど、 特効薬はなく今日を迎えていると言ってもいいだろう。 なんでもかんでも飲み込んで、 いつも消化不良の状態にあるのと同じだ。 食べ物を与えるほうも食べるほうもなにも考えていない、 といっては言い過ぎかもしれないが、 返品することが売上の確保だなんて世界はやっぱり異常としか思えない。 流通のシステムの改善も大きな課題だけど、 売るということ、 商品を供給するということ、 そして商品を作るということ、 そのひとつひとつを真剣に考えないと、 いつまでたっても書店の返品マンはなくならない。
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