30番目

《棲み分けと品揃え》

 棲み分けというのはそれぞれの縄張りのなかで生きるという事である。

 ある地域に2軒の書店が開店したとしよう。 勿論どちらの店も一人でも多くの読者を獲得するために、様々な工夫をこらし販売に力を注ぐことなるが、 多くの読者を獲得するためには「誰にでも」買ってもらえるような商品構成になってしまう。 最初はこれでいい。 これしか方法はないと思う。だって、未知の読者と出会うのだから。 しかし年数がたつと、 おのずと読者は店を選び、それぞれの店にはそれぞれ違った読者がつくようになる。 このときの見極めが大切になる。 どのようなものを買う客が多いのか、 客は店に何を求めているのか、 何が売れているのかを判断する必要がある。 店の客を把握すること、 それによってしか店を生かす道はないのである。 地域の読者をすべて獲得することなど不可能なのだ。 商売相手を倒すよりも自店の客を固定化することで店は生きてくると思う。

 商売相手にはない本を置くことが、 差別化(差別化については「31番目」を読んで下さい)であると勘違いしているところもあるが、 自分の店の商品と客に自信を持つことで他店とは違った商品構成が生まれると思う。 書店においては意図的な差別化は失敗の原因となる。 経験によって生まれる商品構成のみが正しい商品構成の在り方だと思う。 地域で競合する場合、 自店の客と他店の客が店を使い分けられるような発想が大切だ。 棲み分けを大切にしてお互いに発展すればそれはそれでいいと思う。

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